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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

被曝の不安を報道しないメディアの罪
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月17日発行 第341号 ■     ===============================================================       被曝の不安を報道しないメディアの罪  ===============================================================  5月17日の東京新聞に大泉実成(みつなり)というノンフィク ションライターが1999年に茨城県東海村で起きたJOC臨界事故 に巻き込まれた自らの母の被害について書いていた。  事故直後から起きた身体の異常や倦怠感は、いまから思えば心的 外傷後ストレス(PTSD)であったと思われるが、被曝の実態は 本人にはわからず、時間が経てばさらに被曝の因果関係が不明になる、 それが原子力事故の危険性であることを訴えた記事だ。  この記事を読んだ私は、まっさきに昨日(5月16日)に行なわれた 衆院予算委員会で、みんなの党の柿沢未途議員が質問した被曝の危険 性と菅首相のそれに対する答弁を思い起こした。  福島原発事故に関するその日の衆院の集中審議は、メルトダウンが 早々と起きていたことへの情報隠しや、東電の賠償責任、さらには 原発政策の見直しなどが取り上げられていたが、私が一番注目したの は何と言っても柿沢未途議員が質問した被爆の危険性とそれに対する 菅首相のいい加減さである。  柿沢氏の質問はその日の国会審議のほとんど終了直前に行なわれた ので注目されなかったが、きわめて重要な問題提起がなされていた。  柿沢彼は福島原発事故の対応に駆けつけた短期滞在の他所からの 作業員でさえ被曝量の限界を超えている調査数値をあげて、福島住民 の被曝の危険性を指摘し、いまこそ正確な調査が必要ではないか、 そのことを以前から指摘してきたにもかかわらず政府の対応が不明の ままである、これは首相の責任であるので菅首相自らの答弁を聞かせ てもらいたいと詰め寄ったのだ。  これに対し細川厚生労働大臣が要領の得ない答弁に終始し、最後に 菅首相が答弁にたったが、まったく事態を把握していない答弁でごま かして終わった。  みんなの党の柿沢議員は共産党や社民党のような激しい政府追及を するような議員ではない。だからこの深刻なやり取りは追及不足で終 わった。  私は翌日の報道がこのやり取りをどのように報じるかに注目した。  全く報道がない。  わずか読売の「国会論戦の詳報」だけが次のように報じただけだ。 朝日新聞に至っては国会審議の模様すら記事にしていない。  柿沢氏  住民が相当量の被曝にさらされてきた。広範な調査が必要だ。  首相  今までのやり方でいいのか、把握してみたい。  これでは国民は何もわからない。  私のように国会中継を見る時間的余裕のある国民はいい。しかし そのような者の多くは余生が知れている人生の引退者だ。今更被曝 などおそれてもはじまらない。  しかしれからの人生を送る働き盛りの多くの国民は違う。若者 や子供たちは深刻だ。  彼らは国会審議など見ている暇はない。  だからメディアが正しく報道しなければならないのに、被曝の危険 性に関する報道がこの体たらくだ。  今度の原発事故が国民生活に与えた非日常性の問題は、避難であれ 食物汚染であれ、メルトダウンであれ、すべては被曝の恐ろしさに行 き着く。  その肝心の被曝状況について国民がまったく知らされていないとす れば事態は深刻である。  知らない間に何年か先に多くの子供たちに被曝症状が現れてくると したら我々大人の責任ははかりしれない。  この事に警鐘を鳴らすのがメディアの責任であるのに、そのメディア がその役割を放棄しているように見える。  危機感をあおるのはよくないということなのか、菅政権を追い込み たくないのか、あるいは単に無関心なのか、それはわからない。  しかしメディアがこの問題を正しく国民に伝えない限り、禍根を残す ことになるだろう。                            了

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