□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年5月10日発行 第326号 ■ =============================================================== 原発の最大の危険性は攻撃の標的となることである =============================================================== 原発問題にほかにも書きたいことがあるので最後に一つだけ 指摘しておきたい。 このままでは菅首相は自らの原発発言で追い込まれることになる。 体制側の猛烈な菅たたきが始まるからだ。それに対して今の菅政権の 陣容では正しく対応できそうもないからだ。 菅首相が叩かれても一向に構わない。菅民主党政権がどうなっても かまわない。 しかしそれによって脱原発の気運が挫かれてしまうことだけは なんとしてでも防ぎたい。 脱原発の機運を後戻りさせないようにするにはどうすればいいか。 それは世論を味方につけることだ。世論を脱原発の方向に定着させ ていくことだ。 そしてその事は可能である。 菅首相は地震が起きたときの浜岡原発の危険性を強調して廃止要請 をした。 その意図がどこにあろうとも、浜岡原発の危険性を誰も否定できな いから、誰も反対できなかった。 これである。 今度の福島原発事故で原発の危険性について国民は気づいた。 そしてその原因は地震・津波であった。 地震が襲う可能性はもちろん浜岡だけではない。全国にある原発に等 しく危険性はある。 だからすべての原発をどうするのかという議論まで発展させなければ ならない。 そしてすべての原発に危険性の可能性を拡げるとわが国の原発政策の 見直し議論にまで行き着かざるを得ない。 菅首相はこの国の支配体制の反発をおそれてそこまで議論を拡げる 積もりはないようだが、それを繰り返すと行き詰まる。ここまで来たら 考えを発展させるしかない。 浜岡が特に危険だから浜岡の停止を要請したが、その後さらに考えた 結果、すべての原発の見直しを考えざるを得ないと思うに至ったと早い 機会に宣言するのだ。 そしてここからが今日のメルマガで私が言いたいことだ。 危険性は地震や津波だけではない。地震や津波だけでは技術を駆使 してそれに対抗する措置を講じればいいということになる。そしてそれ は可能だということになる。すなわち地震・津波と原発の両立は技術的 に可能だという事になる。 しかしミサイル攻撃で原発が破壊されたらどうか。 日本のような国はひとたまりもない。そしてその危険性は地震や津波 よりもはるかに現実的である。 この当たり前の事をなぜ皆が口にしないのか。それは日米同盟の根幹を 揺るがすタブーだからだ。 繰り返すように菅首相の浜岡原発停止要請は、脱原発議論に行き着かざ るを得ない。それを避けようとすれば菅首相は行き詰まる。 菅首相は首相にとどまりたいのだろう。歴史に名を残したいのだろう。 ここまで来たのだから、この際日本列島を脱原発の国にしたいと国民の 前で宣言するのだ。そしてタブーを破って、原発がミサイル攻撃の標的に される危険性を指摘して世論を覚醒させるのだ。 脱原発と脱日米同盟は表裏一体なのである。 果たして菅首相は米国から自立する覚悟があるのか。 菅首相の真価が問われるのはまさにこの一点である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)