□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月22日発行 第292号 ■ =============================================================== ブッシュを苦しめたのはイラク戦争よりもカトリーナだった =============================================================== 4月はじめからはじまった日経新聞のブッシュ前米国大統領の 「私の履歴書」について、私はその中に思わぬ発見があるかも しれないから注目したい、とかつてこのメルマガで書いた。 そう書いた以上責任があると思って、私はその履歴書を毎日 丹念に読み続けてきたのだが、これまでのところそれほど面白い 話を見つけることはできなかった。 ブッシュ大統領がテキサス州知事選に立候補し、選挙運動で 走り回っていた時、「この土地で走り回るやつは悪い事をして逃 げている奴しかいない」と相手候補にバカにされたエピソード ぐらいだ。これには思わず、ブッシュさんも選挙では苦労したんだ なと、同情笑いした。 そう思っていたら、今日(4月22日)の第22回目の記事の中 で興味深い事実を発見した。 大量破壊兵器が見つからなかったにもかかわらず「私は自ら下 した決断を今でも強く支持している」(第20回)としてイラク 攻撃に強気なブッシュ大統領も、ハリケーン「カトリーナ」への 対応のまずさを非難されたことを最後まで悔やんでいたのだ。 彼は次のように書いている。 「04年の選挙時には(イラク攻撃にもかかわらず)史上最高 の得票を得て再選された私の『政治的資産』はこの頃(カトリーナ 災害の後)から急速に目減りし始めていた。支持率は急落し、 野党・民主党だけでなく、与党・共和党の一部でも私と距離を置く 空気が強まっていった。05年秋に私の頭上を覆った暗雲は結局、 大統領としての任期を終えるまで晴れることはなかった」 ブッシュ大統領の支持率低下の理由が「カトリーナ」だけのせい だったのかどうか私は知らない。しかしブッシュ大統領は「カト リーナ」の失策をここまで強く気にかけていたということだ。 菅首相の不支持の原因が原発事故だけにあるのかどうか私は知ら ない。任期満了まで首相を続けるかどうかも知らない。しかし 菅首相が原発事故の対応のまずさによる不評から逃れられない事を このブッシュ大統領の「私の履歴書」は教えてくれている。与党の 内部からの批判が致命傷となるところもそっくりだ。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)