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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

 もう一つの日本をつくる(東北ルネッサンス構想)(5)  
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年4月7日発行 第242号 ■     ================================================================    もう一つの日本をつくる(東北ルネッサンス構想)(5)          ================================================================  4月7日の朝日新聞に歴史家で大阪大学名誉教授の川北稔と いう人のインタビュー時事が大きく掲載されていた。  その要旨はこうだ。  ・・・近代とは経済成長を前提とした時代だ。どうやったら 経済成長ができるか。人々はこれを追い求め、国家が後押しし、 学者が研究してきた。ところが今回それがいっぺんに揺らいだ。 人間がつくりだしたものによって、人間が大きな災厄を受けた。 その意味で今度の原発事故は戦争に似ている。  それでも科学者は原発は安全と考えるかもしれない。しかし 多くの一般の人は違う。原発を新たにつくることは当分無理だ。 そうすると『経済は常に成長するべきだ』という考え方を後退 させないと折り合いがつかない。そもそも田舎で電気を作り都会 でそれを使うという構造でいいのか。  日本の国力は落ちるかもしれない。世界のトップ、アジアの トップではなくなるかもしれない。ただしそれが不幸かというと 話は別です。そのためには我々の価値観、メンタルな部分が変わ る必要がある。以前と同じ考えでは「被災後」をうまくやっていく ことはできないでしょう・・・  実はこのような考え方を立場を超えて最近見かけるようになった。  「・・・いま思う。少ない資源を分かち合い、持続可能な形で、 地球を子孫に残す共生の道、すなわち『より人間らしいくらし』に こそ希望があるのではないか・・・」(4月4日朝日新聞論説)  「・・・重要なことは、この地震を踏まえて、われわれの生活 の形を見直すことではなかろうか。都市化、経済的利益優先、効率 主義、個人主義といった近代的な富の追求が生みだしたこの社会の 枠組みを見直してゆくことではなかろうか・・・」(佐伯啓思京大 教授エルネオス4月号巻頭論評)  しかし、既存の政治家、官僚が支配するいまの権力構造のまま ではそのような発想に基づいた復興計画は決してうまれてこない だろう。  4月7日の各紙は、菅民主党政権は大震災発生から一ヶ月を迎える 4月11日に発足させる復興構想会議の議長に、御用学者の雄である 五百旗頭真防衛大学校長の起用を起用することを内定したと報じた。  目がくらむ思いの失望感で私はこの記事を読んだ。  菅直人がつくるこの復興会議は、たとえそれが大連立やオール ジャパンのいかなる叡知を集めようと、日本を根本的に変える復興は できないだろう。  特別国債発行や復興増税などで集めた巨額な資金をどんなに投じ ようと、これまでのばら撒きに終わってしまうだろう。  なぜなら権力構造が変わらないからである。  既存の支配体制やそれに協力する人々たちは日本の国民のほんの 一部に過ぎないからだ。  私が「もう一つの日本を、もう一つの日本人たちでつくらなけれ ばならない」と唱える理由がそこにある。  それは今の支配体制から権力を一気に取り返すという事ではない。  いまの支配体制が独占している権力と予算の一部でいいからもう 一つの国民に分配して欲しいということだ。  しかもそれは頭を下げて今の支配体制から恵んでもらうのではない。 我々が権利としてそれを要求し、支配体制が義務としてそれを与える のだ。  どちらが震災後のより良い日本をつくれるか。その結果で勝負 しよう、させてくれ、ということである。  その審判を下すのはこの国の国民であるというわけだ。                        了

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