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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

 オバマ大統領のはじめての拒否権発動  
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年2月23日発行 第130号 ■    ==================================================================   オバマ大統領のはじめての拒否権発動                    ==================================================================  混乱する中東情勢の中で重要な米国の政策が下された。 2月18日、オバマ大統領が国連安保理で始めて拒否権を発動 したのだ。 オバマ大統領が拒否権を発動したのはアラブ諸国が提出したイスラエル のパレスチナ入植非難決議案に対してである。 このことは、とても重要な出来事である。あらためて米国のイスラエル 偏重政策を世界に示したのである。 中東に市民革命が拡がる中で、それに勇気づけられるかのようにアラブ 諸国はイスラエル非難決議の採択をこれまで以上に強く求めた。 パレスチナ占領地にイスラエル人を入植させ、そのイスラエル人を守る という名目でパレスチナ占領を既成事実化するイスラエルの入植政策は 数あるイスラエルの違法、不正義な政策の中でも最も明白な国際法違反 である。  中東民主化の動きの中で、アラブ諸国に同調し共同提案国として名を 連ねた国は約130カ国にのぼった。  安保理常任理事国15カ国のうち14カ国がイスラエル批判決議案に 賛成した。  しかし米国の拒否権発動で、この決議案は廃案となった。                                        もっとも、中東民主化の嵐の中で、アラブ国民の反発を避けるために、 米国もこれまで以上に譲歩案を模索した。  安保理決議より拘束力の弱い議長声明の形で、イスラエルに入植凍結を 求めるところまで軟化した。  従来ならばアラブ諸国は妥協して、形式だけのイスラエル非難に満足 したに違いない。  不毛な安保理の場での対決はパレスチナ問題を先鋭化し、解決をさらに 難しくさせる。それが中東の親米主要国の現実的政策だった。  しかし市民革命が中東を覆う中で、今回はアラブ諸国は強硬姿勢を崩さ なかった。強制力のある安保理決議の採択を迫った。  オバマ大統領は、米国をこのような形で世界から孤立させたくなかった に違いない。  しかし、そのオバマ大統領もまた、イスラエルへの絶対的擁護という 一点では、これまでの米国の大統領を寸分も超えることはできなかった。  国連安保理決議によるイスラエル非難は、どんな事があっても容認する 事はできなかったのである。  棄権ではダメなのだ。イスラエルへの忠誠さを見せるためには拒否権を 発動して非難決議案を葬り去らなければならなかったのである。  それを見たイスラエル首相は「米国の拒否権行使に深く感謝する」との 声明を即座に発表した(2月20日読売)。  今は安保理の非常任理事国ではない日本は今度の決議案の投票には 無関係だったが、130に上るイスラエル非難決議の共同提案国の中に 日本の名はなかった。  中東政策の鼎の軽重を問われるこのように重要な政策決定に、菅首相は おろか前原外相や菅政権の閣僚が関与した形跡は一切無い。  ただでさえ外交に疎い菅民主党政権だ。中東政策に至っては100% 外務官僚の言いなりに違いない。  もはや米国は中東和平の仲介者では有り得ず、それどころか米国という 国が存在する限り平和的なパレスチナ問題の解決は望めない。  そのような米国の中東政策に従属する外務官僚の命じるままに日本の 中東政策が粛々とすすめられていく。  今度の中東民主化の嵐の中で日本の存在感がまったく見えない理由が ここにある。                              了

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