□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月24日発行 第48号 ■ ============================================================= 地方の反乱―その成否の鍵を握るのは住民である ============================================================== 私は地方分権論者の一人である。それは長年の官僚経験から、中央官僚が 分不相応に強大な権限を独占して、この国を支配してきた事を知っている からだ。 だから、地方からこの国を変えていこうとする動きを原則として歓迎する。 最近やたらに見られる地方の反乱も、その手法や人物の是非については ともかくとして、私はそれを歓迎する一人だ。 しかし地方分権に反対する有力な根拠に次のような意見がある事も知って いる。 すなわち地方には立派な人材は少ない。それを選ぶ住民の政治意識も遅れて いる。そんな地方に強大な権限を与える事は危険だ、もっとひどくなる、と。 その意見はあながち外れてはいない。 私は栃木県那須塩原市(旧西那須野町)に移住して6年目になる。 ここは渡辺美智雄の選挙区(栃木3区)である。長男の善美がその地盤を 受け継いでいる。 オヤジの人気は絶大であったが善美はすこぶる評判が悪い。地方に寄り 付かず天下気取りでふるまっているからだ。 それでも世襲の力は絶大である。国政選挙のたびに対抗馬のいない事実上の 無投票で当選し続けている。 自民党を飛び出したときは心配されたが、その後の自民党と民主党の体たらく で、いまやここではみんなの党が第一党のごとくである。 4月の地方統一選挙に向けては候補者が次々とみんなの党から擁立されて いる。しかも渡辺善美の縁戚者が目立つ。 先日も栃木県の地方紙である下野新聞(1月21日)が一面トップで学習塾 講師の渡辺幸子(さちこ28歳)をみんなの党が県議選候補として公認したと 報じた。 渡辺善美の親戚(甥の嫁)である。 しかし世襲を面と向かって非難する声はここでは見られない。 地方の動きだからよほどのことがないと中央のメディアは取り上げない。 だから全国の国民は何も知らない。やり放題だ。 しかし、私は住民税を払って西那須野に住んでいるれっきとした選挙民だ。 渡辺善美に会おうと思えばいつでも面会を申し込める。 面会を拒否されれば抗議ができる。 会うことができれば文句のひとつも言える。 彼の名誉のために言っておくが、彼は多忙なかでも会ってくれた。 国政と違ってやはり地方政治は住民と政治の距離が近いのだ。 権限が国から地方に移譲されればされるほど、住民はその権限の使い方に 嫌でも関心を持たざるを得なくなる。 政治家を選ぶことにより関心を持つ事になる。 地方政治家もまた鍛えられる事になる。 これが地方分権に期待される姿ではないのか。 地方の反乱の成否を決めるのは、つまるところ地方住民の政治的成熟度で あると思う。住民もまた試されているのだ。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)