□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月10日発行第248号 ■ =============================================================== 「日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構」書評(2) =============================================================== この書の冒頭は次のような一つの詩から始まる。真島昌利という詩人の 「青空」からの引用である。 こんなはずじゃ なかっただろう? 歴史が僕を問いつめる まぶしいほど 青い空の下で 民主党による政権交代に期待した国民は多かったに違いない。私もその 一人だった。 しかし今その民主党が、そんな人たちの目の前で、そのマニフェストの ほとんどすべてを捨て去って行き詰まっている。 期待を裏切られた人達の関心事は人によって異なるだろう。 私の場合は民主党の対米外交である。 自民党政権下のそれよりも明らかに従属的だ。戦争米国との軍事協力を かつてないほど加速させている。 その事がいかに間違いであるか。 取り返しのつかない、引き返す事のできない、誤りであるか。 書評の第二回目は、その事についての中野氏の指摘について書く。その指摘 はそのまま私の民主党政権批判でもある。 中野氏は、菅内閣の司令塔である仙谷官房長官が、かつて野党の民主党議員 であった時、小泉・ブッシュ政権の「世界の中の日米同盟」宣言を、勝ち誇った ように痛烈に批判した事を、次のように我々に引用してみせてくれる(60- 61頁)。 「思い起こしてみますと、日米同盟の法律形式というのはなんでしょうか。 日米安保条約ということになるはずであります。しかし、同条約の適用される 地理的な範囲は、日本の施政下にある領域ないしは極東に限られることは明ら かであります。つまりファーイーストはミドルイーストとは全く違うという ことを法律上は覆せないわけです。従いましてこの派遣(自衛隊のイラク派遣) は安保条約にすら反していると言っても過言ではないと私は考えております・・ 日本国憲法をいくら拡大解釈しても、国連憲章に基づいて国連の枠組みで活動 する場合を除いては専守防衛に限定さるべき自衛隊が、日本の施政下にない地域 でその軍事的な力を持って行動し、プレゼンスをとるということは、憲法の 予定する範囲を大きく超えているというふうに私は考えます。 小泉内閣や自民党の方々が・・・憲法違反であり、国際法違反であり、安保 条約にすら反しているこの(自衛隊の)イラク派遣・・・を行なうということは、 私は、法の支配という観点からあってはならない・・・どうしてもイラク派遣が 必要だとおっしゃるのであれば、国連憲章を変える、日米安保条約の中身を 変更する、日本国憲法を改定する、すべてこういう法的な手続きを行なってから やっていただかなければ、法の支配を貫徹することにならないんではないか ・・・(2004年1月22日憲法調査会全体会) そして中野氏は言う。 この小泉自民党批判はそのまま政権を取った民主党首脳の一人である仙谷 官房長官の下に切りかかってくるだろう、と。 その通りである。 政権政党になった以上国民全体に責任を持つことになる。だから野党時代の 主張を変えざるを得ない場合もある。これは菅首相が良く使う言葉だ。 しかし基本政策を変える事が許されるのであれば何のためのマニフェストで あるのか。 しかし中野の仙谷批判はそれにとどまらない。もっと鋭い。 仙谷氏は、あくまでも「法的な手続き」、「法の支配」の整合性を問題にして いるのであって、決して日米同盟そのものを批判しているのではないのだ、と。 けだし慧眼である。 その仙谷官房長官は社民党と連立政権を組もうとする事に対し、国民ではなく、 ルース駐日米国大使に真っ先に理解を求めた(12月9日各紙)。 平和外交を望む国民は、「米国の抑止力の重要性に気づいた」と言って普天間 代替基地を沖縄に残す事で日米合意した鳩山首相に裏切られた。 そしてその国民は今、鳩山・仙谷民主党政権にとどめを刺されたのである。 了
新しいコメントを追加