□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月3日発行第238号 ■ =============================================================== 被爆国日本が米国の「対核テロ戦争」の最大の協力者であるという皮肉 =============================================================== 原子力技術に詳しい読者ならば意外なことではないのかもしれないが、 この記事は私にとっては目新しい記事であったので紹介させていただきたい。 情報誌「選択」の12月号に、核技術の最先進国である日本が、米国の 核テロとの戦いの最強の協力国となっている、という記事が掲載されていた。 その要旨はこうだ。 大騒ぎしたAPEC首脳会議のさなか、オバマ大統領は菅首相に「核 セキュリティー作業部会」の新設を求め、菅首相がこれに応じたという。 この作業グループの最大の目的は「核鑑識」という最先端の核技術を駆使 して核兵器の供給先を特定する事であるという。 「核鑑識」とは、ありていに言えば「核の指紋」ということらしい。最新の 核鑑識技術によって核物質の生産元や供給源を突き止める事ができるという。 仮にテロが核物質を手に入れ、これを使って小型核爆弾を製造し米国内で 爆破させたとする。 米国は直ちに特殊ロボットを爆心地で作動させ残留放射性物質を回収し、 それを解析して供給国を特定できるようになる。 供給源が確定できたら米国はその国に報復する。そうする事によってテロに 核物質が渡る可能性を排除するというのだ。 いまや米国にとってこの「核セキュリティー」は最大の安全保障政策であり、 その最強の協力国が、世界最大の原子力発電国家で、原発の物理的防護や核 物質の検認技術などで世界のトップクラスを走る日本であるという。 唯一の被爆国である日本が、唯一の核使用国である米国の核戦略を助ける という逆説。 しかし問題はそれにとどまらない。 このような核検認技術を有している日本であるにもかかわらず、日本政府が その技術の重要性に気づかない、その問題意識の欠如であるという。 さる10月5、6日の両日、文部科学省の独立行政法人である日本原子力 研究開発機構主催で、「核鑑識に関する国際ワークショップ」が東海村で開か れたという。 驚くべきは米政府が送り込んできた代表団の規模と質の高さだったという。 国土安全保障省をはじめロスアラモス国立研究所、連邦捜査局(FBI) などから第一線の専門家が大挙して参加し、その圧倒的な力量と意識の高さで 議論をリードしたという。 しかし、米国がその技術を最も高く評価している日本からは、日本原子力 研究開発機構の専門家こそ多数参加したが、政府からの参加者は文科省と警察 庁の三人だけ。外務、防衛両省は参加しなかったという。 この光景が日本という国を象徴している。 日本の持つ優秀な技術や人材を政治的、戦略的に活用できないこの国の官僚 や政治家たち。 そしてまたこの国のメディアもその重要性を報じる事はない。 いつまでたっても米国に利用され続ける日本の姿がそこにある。 了
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