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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「日米安保条約第5条の適用」を強調する前原外相にだまされるな
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年9月30日発行第119号 ■       ===============================================================           「日米安保条約第5条の適用」を強調する前原外相にだまされるな       ===============================================================  先の日米外相会議でクリントン米国務長官が前原外相にそう明言した。 この事が前原外相から繰り返し発言され、それが当然のようにメディアに 報道される。  やはり日米安保条約は必要だ。中国との有事の際に日本を守ってくれる のは米国しかいない。あたかもそう国民に思い込ませるかのように。  これはクリントン国務長官のほうから言い出したのではない。前原外相が 誘導質問をして、それに答える形で言及したに過ぎない。図らずも前原大臣は それをテレビの中で口を滑らせて認めていた。  その事はさておいて、クリントン国務長官が明言したという「日米安保 条約第5条の適用」とは具体的に何を意味するのか。  これを正しく理解するためにはまず日米安保条約第5条に何が書いてあるか を正確に知る必要がある。  第5条の要旨は、「日本国の施政下にある領域」において「(日米)いずれ か一方に対する武力攻撃」が起これば、日米両国はそれぞれ、「自国の憲法上 の規定及び手続きに従って」、「共通の危険に対処する」、という事である。  「自国上の憲法上の規定に従って」という文言がある以上、米国の防衛義務 は米国の憲法上の規定と手続きが認める範囲内での防衛義務しか負わない。 つまり日本を守る義務はないのであるが、その事もここでは問わない。  この第5条を知った上でクリントン国務長官の発言をどう解釈すればよいか に限って考えてみる。  それを解説してくれる記事を偶然にも9月30日の新聞に三つ見つけた。  一つは産経新聞「正論」に述べられていた佐瀬昌盛防衛大学校名誉教授の 次の言葉である。  つまり、この領域で武力攻撃が起きない限りわが国の領土権にともなう 利権が中国に奪われても5条は発動されない、と。  現実には中国が直ちに武力攻撃を行う可能性はないので米国は何も行動を 取らない。その間にどんどんと中国の日本権益の切り取りが進んでいく、と。  もう一つの意見は毎日新聞「木語(もくご)」と言うコラムに金子秀敏 専門編集委員が書いていた次の言葉だ。  すなわち、クリントン長官は「尖閣諸島が日本の施政下にある」とは言った が、決して「日本の領土」であるとは言わなかった。米国が繰り返し日本に 伝えてきている立場は「もし領有権について対立があるなら、当事国間で解決 すべきだ」との見解である、と。  要するに両者の解説に共通している事は、米国は軍事力の行使を中国に 行なってまで日本の利益を守るとは一言も言っていないし、その保障は確認 されていない、ということである。  この点について朝日新聞「私の視点」で東郷和彦元外務省条約局長がこう 書いていた。  「・・・尖閣諸島が日米安保条約第5条の対日防衛義務の下にあることは 疑いない。しかし、わが国ができるだけの外交努力を払わずに、米国人の血を 流してほしいと要請することもまた、ありえない・・・」  もちろん前原外相は、「米国が日本を守ってくれると明言した」とはひと ことも言っていない。第5条の適用が確認されたと言っているだけだ。その 限りでは前原大臣は嘘をついているわけではない。  しかし詳しい事を知らない日本国民の多くは、やはり日米同盟は重要だと 思い込んでしまう。  要するに、そのように思い込ませようとする前原発言とそれを繰り返し 報道するメディアを鵜呑みにしてはいけないということである。                                   了                            おしらせ  日経ビジネスオンライン9月29日に私の「新防衛計画の大綱私案」が掲載 され反響を呼んでいます。  「中国撃つべし」という声一色の今こそ正しい日本の外交・安全保障政策が 必要であると思います。  関心のある読者の為に、日経ビジネスオンラインの案内を以下の通り紹介 しておきます。                 記 日経ビジネスは雑誌とオンラインで成り立っています。 雑誌は定期購読制です。こちらからお申し込みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbo/base1/index.html?xadid=002 オンラインはこちらでお読みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/ 会員登録(無料)していただくことで、すべての記事をお読みいただけ ます。 http://business.nikkeibp.co.jp/info/reguser/ 〒108-8646 東京都港区白金1丁目17番3号 NBFプラチナタワー 日経BP社 日経ビジネス オンライン Tel:03-6811-8188 Fax:03-5421-9160 日経ビジネス オンライン:http://business.nikkeibp.co.jp/                                     了  

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