□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月28日発行 第117号 ■ =============================================================== 前原外相の首を差し出せば日中問題は解決する =============================================================== 日中問題に関する今日の各紙の記事の中で群を抜いて秀逸なのは朝日新聞 一面のスクープである。 その中で朝日はこう書いている。菅首相は「初動に問題があったようだ」と 知人に漏らしていたという。 それは事件直後の9月8日に、当時海上保安庁を指揮する前原国交相の 「強硬路線」が船長を逮捕・拘留した事をさす。 周知の通り尖閣諸島問題は1972年の日中国交正常化以来の日中間の最大 の政治問題であった。 領土権にかかわる問題であるから双方は譲れない。 だからこそ鄧小平は皆が受け入れられる方法が見つかるまで一時的に棚上げ してもよい(1978年の訪日時の記者会見)、と言い、あの小泉首相でさえ 尖閣諸島への不法侵入者を中国に強制送還する政治配慮をして問題の表面化を 避けたのだ。 それが、お互いの領有権主張の立場に踏み込まない唯一の外交的知恵で あったのだ。 それを前原氏はいとも簡単に破った。公務執行妨害の容疑で逮捕し、拘留 した。 日中間の暗黙の了解を踏み外したのだ。中国が猛反発した理由がここにある。 ところがよりによってその前原氏が9月17日の改造人事で外相になった。 外相になったとたん中国を逆撫でする強硬発言を連発した。 ここに至って中国の菅民主党政権に対する態度が決定的に対決姿勢になった。 実はこの前原元凶説は朝日だけが書いているわけではない。その意味で今日 の朝日の一面記事はスクープではない。 発売中の週刊朝日10月8日号とサンデー毎日10月10日号が奇しくも 同様の指摘をしている。 すなわち週刊朝日は、「尖閣諸島問題で追い込まれる菅政権」という特集 記事の中で、「東シナ海においては領土問題は存在しない。(中国漁船は) 我々の領海内で操業し、それを排除しようとした海上保安庁の船にぶつかって きた。公務執行妨害について、日本は法治国家ですから、国内法に則って粛々 と対応しています」、という初動時点での前原大臣の発言を紹介し、さらに、 「前原さんの強硬論に、原理主義者の岡田さんが賛同する形で、最終的に 内閣で船長の逮捕を決めた」との関係者の内話を掲載している。 サンデー毎日は、「仙谷・前原の無策外交の裏側」という特集記事の中で、 前原氏の強硬発言が中国側を本気で怒らせたというあるジャーナリストの次の 言葉を引用している。 「前原氏は(外相)就任直後の記者会見で、中国の軍事力増強に懸念を表明 した上で、『尖閣諸島はわが国固有の領土で、領海内で操業し、海保船にぶつ かってきた』と発言した・・・この前原氏の後先考えない発言が中国を怒らせた・・・」、と。 そういえば前原氏は、偽メール事件や八ツ場ダム問題で威勢のいい事を口に しては問題をこじらせる常習犯だ。前原氏が後先考えない発言をすると決まって 問題がこじれる。 解決の糸口がまったく見えない日中問題の解決は簡単だ。 菅首相が日中外交を混乱させたと言って前原大臣を更迭すればいいのだ。 中国はたちどころに軟化するだろう。 いや、仙谷官房長官や岡田幹事長や前原外相に対中外交を任せた自分が 悪かったと謝罪して菅首相が総辞職すればもっといい。 それは決して中国に屈した事にはならない。 日中双方の指導者たちが知恵を出し合って政治問題より経済問題を優先させ なんとか良好な関係を保ってきた。そのお陰でやっと日中経済関係が太くなり つつある。 その努力をぶち壊した軽率な外交を、日中双方の政府、国民に菅民主党政権が 謝罪し、その責任をとって辞めるけの話である。 日本と中国の双方の政府・国民が喜ぶ一石二鳥だ。 おまけに菅民主党政権など一日も早く辞めてしまえと考える私のような者に とっては一石三鳥だ。 菅首相には一刻も早くその事に気づいてもらいたい。 了 おしらせ 日経ビジネスオンラインでは9月29日より、日本の新しい防衛政策を考え る特集が始まり、様々な有識者の「新防衛計画の大綱私案」が連載されます。 その第一回に私の意見が掲載されます。 関心のある読者の為に、日経ビジネスオンラインの案内を以下の通り紹介 しておきます。 記 日経ビジネスは雑誌とオンラインで成り立っています。 雑誌は定期購読制です。こちらからお申し込みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbo/base1/index.html?xadid=002 オンラインはこちらでお読みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/ 会員登録(無料)していただくことで、すべての記事をお読みいただけ ます。 http://business.nikkeibp.co.jp/info/reguser/ 〒108-8646 東京都港区白金1丁目17番3号 NBFプラチナタワー 日経BP社 日経ビジネス オンライン Tel:03-6811-8188 Fax:03-5421-9160 日経ビジネス オンライン:http://business.nikkeibp.co.jp/ 了
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