□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月28日発行 第115号 ■ =============================================================== 東京新聞よ、お前もか =============================================================== 9月27日の東京新聞の社説には心底失望させられた。 「菅直人首相とオバマ米大統領は首脳会談で、日米同盟関係の重要性を確認 し合った。今年は日米安全保障条約改定50周年の節目の年。日米同盟を 『進化』させる礎を築かなければならない」 こういう前書きで始まるその社説はまるで読売新聞や産経新聞のそれと見紛う ものである。 東京新聞には半田滋という名うての防衛政策に詳しい編集委員がいる。 彼の書く数々のスクープ記事は在日米軍の不合理や米国の「テロとの戦い」 に協力する自衛隊の矛盾を鋭く指摘している。 日米同盟の危険性をこれほど的確に指摘し続ける新聞記者を私は知らない。 彼の考えが東京新聞の考えだと思っていた。 それがこのような社説を掲げたのである。裏切られた思いだ。 しかし私がもっと失望したのは「深化」でなくてあえて「進化」と書いた その意味を知ったからである。 その社説はこう書いている。 「・・・日米両国は、同盟関係を深める『深化』の作業を進めているが、 安全保障面だけを深めるのではなく、協力分野を広げて『進化』させることが、 日米安保体制の信頼性を高め、それがアジア・太平洋地域の平和と安定に つながる・・・」 これは外務官僚が好んで使ってきた詭弁だ。私が最も排斥する考えである。 その言葉が東京新聞の社説で使われるとは思いもよらなかった。 米国にとって軍事協力とその他の分野での協力はまったく無関係である。 非軍事面での協力をいくら「進化」させて米国との関係を深めようとしても、 米国の日本に対する不合理な軍事協力要請はなくならない。 その都度日本政府は米国の圧力と日本国民の板ばさみになり対応に苦慮する ことになる。 結果として日米関係が緊張する。 すなわち、いくら協力関係を安全保障以外の分野に拡げても、日米関係は 安定しない。脆弱なままなのだ。 東京新聞の社説は、さらに大きな間違いを書いている。 地球的規模の課題に協力して「進化」した日米関係を構築すべきだと東京新聞 が考えたヒントがオバマ大統領が菅直人首相に語った次の言葉の中にあるという。 「地域を超える課題に、日本は(米国にとって)欠くことができない(国だ)。 核不拡散、テロ、気候変動(の問題)に、米国として(日本と)協力して いきたい・・・」 そして東京新聞の社説はこう断じている。 「日本がこうした課題の解決を期待され、両国が協力し合えば、日米関係は 確実に前進する」、と。 気候変動はともかくとして、核不拡散やテロについて米国に協力することは こよなく米国と軍事協力関係を「深化」させることである。決して安全保障以外 の分野に協力関係を拡げて日米同盟関係を「進化」させることではない。 東京新聞よ、おまえもか。 私がそういう思いを持ってこの社説を読んだ理由がそこにある。 了 おしらせ 日経ビジネスオンラインでは9月29日より、日本の新しい防衛政策を考え る特集が始まり、様々な有識者の「新防衛計画の大綱私案」が連載されます。 その第一回に私の意見が掲載されます。 関心のある読者の為に、日経ビジネスオンラインの案内を以下の通り紹介 しておきます。 記 日経ビジネスは雑誌とオンラインで成り立っています。 雑誌は定期購読制です。こちらからお申し込みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbo/base1/index.html?xadid=002 オンラインはこちらでお読みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/ 会員登録(無料)していただくことで、すべての記事をお読みいただけ ます。 http://business.nikkeibp.co.jp/info/reguser/ 〒108-8646 東京都港区白金1丁目17番3号 NBFプラチナタワー 日経BP社 日経ビジネス オンライン Tel:03-6811-8188 Fax:03-5421-9160 日経ビジネス オンライン:http://business.nikkeibp.co.jp/
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