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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

日中対立にどう対処すればいいのか 
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年9月27日発行 第114号 ■       ===============================================================           日中対立にどう対処すればいいのか         ===============================================================  今朝の朝ズバッでみのもんたが大きな顔で言っていた。皆が菅政権の失敗を 批判するが、誰もこうすればいいという意見を言わない、と。  残念ながら彼の言うとおりである。  テレビや新聞の議論を見ても誰も核心をついた発言をするものはいない。  ならば言おう。  今すぐに行うべき事は、菅政権の外交力の無さ皆で認め、今からでも遅く ないから一刻もはやく菅政権に政治主導の行動をとらせる事だ。  それができなければ、それができる政権に交代させる事だ。それしかない。  いたずらに時間を浪費すれば、ますます日本は国益を失うことになる。  具体的にはこういう事だ。  1.今回の事件で日本がここまで不利な立場に追い込まれたのは事件直後 の日本政府の対応に政治力、外交力がなかった事につきる。   菅政権は事件の第一報を受けたとき、まっ先に在京中国大使を外務省に 招致して遺憾の意を伝えるべきであった。  同時に、この問題が日中間の大きな問題になる危険性を見越して「戦略的 互恵関係」を掲げて中国側と首脳レベルの話し合いを提案すべきだった。  中国側は首脳会談を拒否したかもしれない。その時は世界がそれを知る。 中国側に分は無い。  首脳会談をしても日中関係は緊張したかもしれない。中国側が今と同じ強硬 な対応を示したかもしれない。  しかしその緊張は今のような中国側の一方的な高圧による緊張ではない。 対等な外交戦による緊張である。その意味合いはまったく違う。  2.菅政権の最大の問題は、いつまでたっても政治的指導力を発揮しようと しない事だ。できない事だ。  中国側に発言するのではなく、国内に向けて、あるいは野党に向けて つぶやいているだけだ。独り言を繰り返しているだけだ。これは最悪だ。  政治的指導力を発揮できる局面はいくらでもある。  たとえば国連演説などを辞めて直ちに帰国して陣頭指揮を取る姿勢を見せる ことだ。  たとえば船長釈放の発表だ。あの決定は今度の事件の中で決定的重要性を 持つ政治判断であった。  なぜ菅首相自らが記者会見を開きそれを国民に語らなかったのか。中国側に メッセージを送らなかったのか。  たとえば中国に捕まった会社社員4名の救出だ。面会に領事担当官ごときを 派遣して終わらせている。その結果軽く扱われている。  なぜ天皇陛下の信任状を持った丹羽大使を派遣して中国側に政治的判断を せまらなかったのか。  菅政権の最大の欠陥は外務官僚の言うままに「冷静」という名の「ことなかれ 主義」に終始していることである。  今回の対応ほど菅政権の政治的主導の欠如を露呈したものはない。  3.これは菅政権に対する苦言ではなく、メディアと国民に対する忠告でだ。  中国側の思惑を詮索したり、中国側の非道を責めてみても始まらない。中国 政府が中国国民と国益のために外交戦略のすべてを駆使するのは当たり前だ。  だからこそ日本政府は政治力、外交力を発揮しなければならないのだ。 メディアや国民がなすべきことは日本政府に対し正しい政策を求めることである。  4.解説者の中には今こそ日米同盟強化だとか、中国との領土問題を抱えて いるアジア諸国との連携をはかれ、などという発言があるが大きな間違いだ。  これは日本の主権にかかわる日本の外交問題であり、日本が自らの手で解決 しなければならない問題である。  中国に対する思惑が日本と異なる米国に助けを求めることなど論外である。  5.メディアも国民も、今回の中国側の高圧的な態度を見てすぐに中国の 軍事的脅威と結びつける。だから日米同盟は必要だ、だから憲法9条を変えて 強い軍隊をもたなければならない、となる。  大きな間違いだ。今度の事件でどんなに日中関係が悪化しても中国が軍事力 で日本を脅かすことはない。それをやった時点で中国は負ける。  それをやるつもりがないから外交的にこれだけ強く中国は出ているのだ。  日本はいまこそ平和憲法を掲げてこれ以上ないほど強く中国と外交力くらべ をしなければならない。  中国の愚かな軍事力増大に対して、軍事力で対抗するほど愚かなことはない。  憲法9条を掲げた平和外交の前に中国は対抗することはできない。  6.最後の決め手は国民の判断である  私が菅首相ならば、もしこのまま日中関係が悪化していくならいつかの時点 で総辞職をして国民に信を問うだろう。  日本が正しい以上あくまでも外交的に筋を通す、それによって中国との経済 関係が悪くなっても耐えていく、そう国民が考えるのか、  それとも中国との経済関係を重視し、日本が大人になって譲歩してもいい から中国との関係改善に努めるか、  菅政権が自らその判断を下し、それを国民に問う。  今回の問題の解決が長引き、問題がどんどんと深刻になっていくとすれば菅 政権のとる道はそれしかない。それほど大きな問題なのである。  問題は一日でも長く総理の座にしがみつきたいと考える菅首相夫妻にそのよう な国を思う潔さがさらさら無さそうな事である。  困った事である。                                了    おしらせ  日経ビジネスオンラインでは9月29日より、日本の新しい防衛政策を考え る特集が始まり、様々な有識者の「新防衛計画の大綱私案」が連載されます。  その第一回に私の意見が掲載されます。  関心のある読者の為に、日経ビジネスオンラインの案内を以下の通り紹介 しておきます。                 記 日経ビジネスは雑誌とオンラインで成り立っています。 雑誌は定期購読制です。こちらからお申し込みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbo/base1/index.html?xadid=002 オンラインはこちらでお読みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/ 会員登録(無料)していただくことで、すべての記事をお読みいただけ ます。 http://business.nikkeibp.co.jp/info/reguser/ 〒108-8646 東京都港区白金1丁目17番3号 NBFプラチナタワー 日経BP社 日経ビジネス オンライン Tel:03-6811-8188 Fax:03-5421-9160 日経ビジネス オンライン:http://business.nikkeibp.co.jp/

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