■□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2009年11月22日発行 第460号 ■ ────────────────────────────── 正しい対米外交の難しさ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 鳩山政権の最大の問題は、やはり、対米政策である。 鳩山民主党の対米政策が、自民党政権下のそれと同じであっては、政権交代の意味がない。 それは、左派イデオロギーが唱える反米、抗米外交に転換することでは決してない。 国民の利益を最優先した日本の自立した対米外交の確立である。 この事こそ、戦後63年間、自民党政権がなしえなかった事である。 これから次々と鳩山首相の決断を迫ってくる普天間問題、核密約問題、在日米軍問題などは、 すべて鳩山政権の外交の鼎の軽重を問う問題である。 私はそのすべての動向について注目し、メルマガの最大の関心事として書いていくつもりだ。 正しい日米関係の確立のためには、当然のことながら米国と言う国を知らなければならない。 そして、このことこそ、今の日本の政治家が、官僚が、メディアが、有識者が、 ましてや一般国民が、 誰一人として出来ていないことなのだ。 どの国もそうであるが、特に米国については、それを正しく捉えることは難しい。 米国は一つではない。様々な勢力の日々せめぎあいのなかで成り立っている国である。 そしてそのどの相手と話すかによって、まったく異なった顔を見せる。異なった米国がある。 米国は、米国の中で戦いがある。その米国内の戦いに勝った勢力がその時の米国を絶大な権力で動かす。 だからこそ、米国内の政治争いは熾烈で、複雑で、国民を巻き込んだものになる。 そのような米国との外交を正しく行うためには、米国が突きつけてくる要求にうまく対応する、という態度では 駄目だ。 日本がまず何を成し遂げたいか。それを国民的合意の下につくりあげ、それを米国内部の有力者に働きかけ、 理解させて実現させる。 それこそが目指すべき正しい日米外交てある。 この事は容易な事ではない。 しかし他国との関係で自国の国益を確保するということは、もともとが容易なことではないのだ。 前置きがながくなったが、対米外交を皮相的に捕らえている有識者の一例を紹介することによって、 米国を知ることの難しさ、対米外交の難しさを、説明してみたい。 筆者には申し訳ないが、これはすべての日本の指導者について書いている事で、そのつもりで読んで いただきたい。 11月21日の毎日新聞「近聞遠見」の中で、政治評論家岩見隆夫氏は、宮沢元首相、鳩山首相、 岡田外相の三人の米国滞在経験から生まれた「米国観」を紹介しながら、最初の渡米印象が重要な 意味を持つと要旨次のように書いている。 1939年の夏、19歳の宮沢は日米学生会議に出席すべく初めて米国の地を踏んだ。 すでに日米関係は険悪になりかけていたが、討論の米国学生は、「日本の言う事はもっともだ。米国も悪い」 などとしきりに言う。「ははあ、米国というのはえらい国だな。こいつらと喧嘩したら分がないな、と思った」 と後に宮沢は語っているという。 鳩山はスタンフォード大学に留学して76年、博士課程を修了した。尊敬する政治家はケネディ元大統領。 岩見は鳩山の渡米印象については何も触れていないが、民主党代表になったばかりの02年のインタビューの 言葉を次のように引用し、そのころから対等な日米関係が鳩山の持論だという。 「与党(自民党)の政治家は米国に背くような結論を最初から放棄してしまっている。沖縄の基地や 地位協定の問題を持ち出すことができない。だから政権交代あるのみだ。日米関係の再構築こそ、本当に やらなければならない構造改革だと私は思っている」 岡田は鳩山から10年遅れの85年、通産官僚としてハーバード大国際問題研究所に1年間留学。 そこでレーガンという強い大統領が米国をリードする姿を見た。宇宙船チャレンジャーが爆発して7人の 乗組員が死亡した時、米国民の連帯感と国民が信頼する大統領に感動。岡田にとって米国は政治への夢を 与えてくれた国だった(「政権交代─この国を変える」講談社)という。 そして岩見は次のように締めくくる。 「・・・過去の日米関係を追従と見る鳩山と、政治の先輩国として一目置く岡田。この米国観の違いが、 普天間交渉にも微妙に響いているようだ。宮沢が健在ならばどう裁くか・・・」 このような岩見氏の評論を読んで、「なるほど」と思う読者は多いかもしれない。 しかしこういう評論はあまり意味はない。それどころか危険だ。 そもそも、わずかな対米経験で米国観が固まり、その米国観で対米外交が決められるようでは困る。 それよりもなによりも、たった一度の対米、留学経験で米国という国が理解できるはずはない。 一つの米国などはない。あるのは様々な勢力のせめぎあいで出来ている米国であり、その時々の権力を 握っている勢力が、その時、その時の米国を動かすのである。 その勢力と如何に強いパイプを作るか、そしてその時々の最大の勢力にどう日本の国益をぶつけるか。 今までの日本外交は、ごく限られた日本の指導者たちが、ごく限られた米国の有力者を相手に働きかけて 決められてきた。 当然のことながらそこで行われる外交は、日本の特定の意向、利益に実現に限られる。 外交の相手も特定の米国勢力だ。やりやすい、アプローチしやすい相手だ。 これは本来の国民外交ではない。バイアスのかかった外交だ。 政権交代後の鳩山民主党の対米外交は、まさしくこの偏った対米外交を排し、 対米外交を広く国民に開放して、国民の支持を得た外交を米国のあらゆる層にぶつけていかなければ ならない。 世界の国民が証人となってその対米外交を見る。 そういう透明性の高い外交を行うしかない。 それはまた情報開示、透明性を最優先する鳩山民主党政権の、譲ってはならない原則であるはずだ。 __________________________________________ 天木直人のメールマガジン 2009年11月22日発行 第460号

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