■□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年8月8日発行 第298号 □■ ──────────────────────────────── ■ 日本人メディアを相手にひとり相撲する日本のパフォーマンス外交 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こういう記事は次元が低くてあまり書きたくないのだが、私にしか書けない事だから書いてみる。 いや、正直にいえば私はどうしても書きたいという衝動にかられたから書いているのだ。 8月8日の各紙は、エルサレム発として一段の小さな外電を報じていた。 日本の飯村豊中東特使がエルサレムで会見し、イスラエルのペレス大統領やパレスチナ自治政府のアッバス議長に 対し、中東和平の訴えを行った事を明らかにした、という記事だ。 ペレス大統領に対し、「ヨルダン川西岸での入植活動の完全凍結を求め」、「東エルサレムのパレスチナ住民を強制退去 させる事態が相次いだことに懸念を表明した」(毎日)、という。 アッバス議長に対し、「パレスチナ自治区の治安の一層の改善」(朝日)、「国家樹立に向けた改革努力の継続」(毎日)を求めたという。 これは中東外交ではない。外交ですらない。日本のメディア向けのパフォーマンスに過ぎない。 飯村豊氏は私のかつての同期だ。だから批判するには忍びない。しかし批判せざるを得ない。 これは彼が中東担当の政府代表に就任して初めての挨拶旅行なのだ。政府代表としての仕事をしています、という 国内に顔を向けたアピールなのだ。 彼の前任者の有馬龍夫元駐独大使がそうであったように、中東とはおよそ関係のない経歴を歩んできた出世頭の、 しかし次官になり損ねた外務官僚が、天下りのポストとして手にする「政府代表」という名の名誉職。 考えてみるがいい。中東外交のために本省の中東局長が存在する。現地の大使が存在する。そしてその上に 外務大臣、首相という政治指導者がいる。 この上に何のために中東担当政府代表が必要であるというのか。 年に一度ほど中東を訪れ、日本メディアを相手にその「成果」を説明する。今回の飯村特使のイスラエル訪問は、 その手始めなのだ。 それよりも何よりも、この時期にイスラエルに出向いて中東和平を申し入れる、その意義がどこにあるのか。 入植凍結の要請は、米国のオバマ大統領がネタニエフ首相に申し入れても聞く耳を持たなかった今の イスラエルである。 パレスチナ自治区の統一と安定は、もはやアッバス議長では手に負えない問題となっていることは 世界中が知っている。 それを、日本の官僚OBが、しかも中東問題に何の知見も人脈もない者が、口先だけでどうして説得させられる というのか。 対米従属外交に終始する日本の官僚が、いまごろ何を言いに来たのかとイスラエルは笑っていることだろう。 常に安全なところに身を置いて仕事をしている日本の官僚OBが、「パレスチナ国家樹立に向けて改革努力を 行え」と高説を垂れる。それは、米国・イスラエルの不正義なパレスチナ政策に命をかけて抗しているパレスチナ人 への冒とくである。 ───────── 天木直人のメールマガジン 2009年8月8日発行 298号

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