■□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年8月6日発行 第295号 □■ ──────────────────────────────── ■ 二人の米駐日大使のエピソードに思う ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 私が重視する事は、一つでも多くの知識を身につけること、それによって自分の考えの正しさを補強し、 あるいは自分の誤りを謙虚に認め、正すこと(それは時として難しいことではあるが)である。 たとえば犬養毅首相が最後に語った「話せばわかる」という言葉の本当の意味について、私は最近あらたな 事を知った。 どんなに考えが違っても(たとえば核武装を唱える田母神氏やそれを支持する人々と私の意見のように)、 「落ち着いて話せば理解しあえる」、「暴力ではなく言論で」、などという意味で、その言葉は人々に広く 受け入れられている。 しかし史実はそうではない、あの言葉には特別の意味があったのだ、としたらどうだろう。 サンデー毎日に歴史評論家保阪正康氏の「昭和史の大河を往く」という膨大な連載がある。 その連載の第171号(発売中の8月16日号)に次のような、ことが書かれていた。 関東軍に抗する張学良は犬養首相に対し、日本軍に不当に没収された財産の返却を求めた密書を送り、その中に 「少なからぬ金子」が添えられていた。その事を知らされた青年将校たちが、犬養首相が中国と通じていると誤解して 怒った。その青年将校を前に、自分を貶めようとする軍上層部の作為に惑わされてはいけないと、青年将校らに 事実を説明しようとした、その時の犬養の言葉であるという。 この事を保阪氏は数々の資料と孫娘犬養道子の話などから推論している。 これはあくまでも保阪氏の推論であるが、このような保阪氏の推論を知ると、「話せばわかる」という言葉もまた 深い意味を持っていたことがわかって興味深い。 いつものように前置きが長くなったが、きょう8月6日の新聞に見る二人の米国駐日大使の次のエピソードもまた 興味深い。 日経新聞は日米核密約に関連し、ライシャワー米駐日大使の特別補佐官を務めていたジョージ・パッカード氏の 次の言葉を披露している。 ライシャワー大使は駐日大使をやめて久しい1981年に邦人記者との記者会見で密約の存在を証言し 日本を騒がせた。 その時ライシャワー大使は、「密約の存在は時限爆弾のようなものであり早く明らかにしたほうがダメージが少ない」 と判断し、また、「日本人は賢明だからなぜ密約が必要だったかを理解するだろう」、と考えていたという。 駐日大使というよりも歴史家であったライシャワー大使は、事実は遅かれ早かれ明らかになると信じていた。後世、 うそつきと言われるのだけはいやだという純粋な学者の思いからの証言だったという。 だから自分の発言で日本が大騒ぎとなったことを知って、相当ショックを受けていた、という。 これはライシャワー大使の人柄を示す実に興味深い元側近の話だ。 もう一つはルース新駐日大使に関する毎日新聞の記事である。 ルース氏は法科大学院時代にホワイトハウスでインターンをして以来、いつか公職について「国に恩返しをしたい」 と夢見ていた(7月23日の上院外務委公聴会の発言)という。 そして、オバマ政権移行チームがルース氏に複数のポストを打診した時、その中でルース氏は、「駐日大使が私の 第一希望だ。重要でやりがいのある仕事だと思う」と申し出たという(ダニエルオキモト・スタンフォード大名誉教授)。 企業経営者として耳を傾けることの重要さを学んだ(同教授)ルース氏の謙虚に他者の意見を聞く姿勢は、 オバマ大統領との共通点でもある、と日経新聞は書いている。 人の意見を聞かなかったブッシュ大統領と、そのブッシュ大統領の命令を忠実に伝えるだけのシーファー前駐日大使 とは大きな違いである。 この日経新聞の記事を読んで、オバマ大統領とルース駐日大使の米国新体制は、日本が新しい日米関係を構築していく 上での大きなチャンスであると、私は再確認した。 ブッシュ・シーファー旧体制と決別した米国新体制に対し、日本もまた政権交代で応えなくてはならない。これは 歴史の流れだと思う。 ───────── 天木直人のメールマガジン 2009年8月6日発行 295号

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