■□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年7月25日発行 第273号 □■ ──────────────────────────────── ■ 独立外交官を訪ねたニューヨークの旅を終えて ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 駆け足でニューヨークを往復してきた。目的はイラク戦争の嘘を告発して外務省を辞した英国の元外交官、 カーン・ロス氏と面談するためであった。 その事のために、ただその事だけの為に、片道13時間程の旅をとんぼ返りしてきた。安いパック旅行客の一人 として団体客の中にうずもれて。 そこで得たものはこのメルマガで折にふれて書いていきたいが、結論を一言で述べると私が想定していた通りの カーン・ロスであり、その独立外交官との面談であった、ということだ。 それは言葉で表すと、勇気、困難な道のり、そして希望である。 勇気とはもちろんカーンのとった行動の事だ。カーンが英国の優秀な外交官であったに違いない事は、その言葉の 端々に感じられた。 その彼が、英国の外交官にあこがれ、それを誇りにしていた彼が、国益に縛られた外交の限界に気づき、輝かしい未来 を捨てて独立外交官になった。 それがいかに勇気の要った行動であったかは、彼の著書「独立外交官」を読んでわかってはいたつもりであったが、 あらためて話を聞いて、実感した。 彼は言っていた。英国外務省と正面から対峙することになった、と。妻と両親の理解と支持がなければできなかった に違いない、と。 二つ目には、彼が取り組む「独立外交官」という活動の困難さである。 自分の関心は、国益がせめぎ合う政治紛争の中で、一握りの大国とその他の小国との間に存する不正義、不公平を、 いかにして是正していくか、ということにつきると、カーンは言いきった。 それ以外の仕事、つまり人道支援や経済開発などは自分の仕事ではない。あくまでも政治紛争だ、と。つまり 国連安保理事会の仕事と抗していく事だ、と。 それは外交の中でももっとも困難な仕事だ。しかも大国の利害と正面からぶつかる。そんな困難な仕事に個人が 取り組む事がいかに困難で無謀であるかは、外交を少しでも経験したものであれば誰でもわかる。 私との話はもっぱらその事に集中した。最後まで私の懸念は解消しなかった。彼と私の考えは最後までかみ合わ なかった。 そこが彼と私の違いだ。自らを信じて行動する独立外交官と、官僚的発想から抜けきれないでいる私。 彼は一貫して主張した。自分の外交官生活の中で大半を割いた国連安全保障理事会。その安保理外交こそが欺瞞と 限界に満ちたものであり、国連安保理会議では正義ある外交は実現できない。だから独立外交官になるのだ、と。 そして彼を突き動かしたものが、自分が作った国連決議でいかに多くの人々が犠牲になったか、その後悔である 事は容易に想像ができた。 当然のことながら日本が目指そうとしている安保理常任理事国入りについては否定的だ。安保理外交そのものに限界が ある中で、その一員になることにどういう意味があるのか、と。 私の質問は、もっぱら独立外交官の将来に及んだ。はたしてその未来は開けているのか、と。 この事に関しては、彼もその困難性を率直に認めた。言葉では皆協力的な事を言うが、国益を背負った外交官が 公に自分を支援してくれるはずはない。しかも対象国はすべて弱者だ。対価を期待する事はできない。資金集めが 最大の課題だ、と。 それでも、と、彼は言った。ミリバンド英外相が自分に好意を示し始めたと。 約5年前の04年の秋に、たった一人で立ち上げた独立外交官。初めて手にした寄付が70万円程度。それが今では スタッフが12名、資金が2億円ほどになった。これを自分は誇りに思う、なんとか資金を五億円ほどまでにしたい、と。 別れ際に、「成功を祈る」と差し伸べた私の手を強く握り返したカーンは、今まで自分にアプローチしてきた者の中で、 お前が一番自分をよく理解している、とつぶやいた。そしてそう言ったあとで、「心配はいらない。必ず成功させる。 そうでなければ自分が外務省をやめて独立外交官になった意味はない」と、笑顔で答えた。 そこに私は希望を感じた。独立外交官の未来を見た。 帰国した私を待っていたものは日本の政治の混迷であった。 わずか4日ほどの不在の間に、政治状況は、ますますつまらないものになりつつあるような気がしてならない。 自民党に未来はない事はそのままだけれど、なぜか民主党対する熱気が感じられない。 これから8月30日までは長すぎる。政治に対する不信はどんどん膨らんでいくに違いない。どの政党も負け合い競争を する事になる。 日本の政治は長い混迷の時期に入ろうとしているかのようだ。 ───── 天木直人のメールマガジン 2009年7月25日発行 273号 お知らせ メルマガ配信がなされていない、という苦情が読者から時折私宛に寄せられます。 私はもっぱら執筆に専念しており、配信につきました全面的にマグマグ社の責任となっています。 マグマグ社との話し合いにより、メルマガの運営・管理・配信に関するご意見、ご要望が御座いましたら、 以下の連絡先へ直接に連絡していただくことにしました。よろしくお願いします。

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