■□■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年7月3日発行 第243号 □■ ──────────────────────────────── ■ 民主党の対米外交に助言する ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 民主党の最大の問題はその対米政策が不明であることだ。この事は政権を 取った後に、たちどころに民主党の最大問題となる。 これについて最近の民主党幹部の発言は対米自主外交に舵を切りつつある ように思える。 とくに最近の岡田幹事長の一連の発言は激しさを増している。 岡田幹事長は6月25日、民主党本部で訪日中のフロイノ米国防次官と会談 した際、「沖縄に米軍が集中しているのは第二次世界大戦中に(米軍が)占領 したからだ」と言って普天間基地の沖縄県内移転に反対したという。 これに対してフロイノ次官は、沖縄米海兵隊のグアム移転協定に言及し、 あたかもパッケージで解決する事が日米間の合意済みといわんばかりに、 「再編計画は大事だ」と応じたという。 ところがこれに対しても岡田氏は、「米軍基地を巡る日米関係は64年前の 過去(日本の敗戦)を引きずっている」と指摘したらしい(6月26日毎日)。 極めつけは民主党が政権をとったら日米地位協定の改定に着手すると言及 した事だ。 フロイノ次官はさぞかし腰を抜かしたことだろう。本国政府に報告している だろう。岡田ではだめだ。民主党ではだめだ、と。 私は対米自立、自主外交を支持する。 しかし、それを本気で実現するためには、国民の了解を得て米国と国をあげて 交渉する大きな覚悟が必要だ。 政権もまだ取っていないのに、思いつきの発言で米国を硬化させることは 軽率であり、危険だ。逆効果だ。 特に日米地位協定の改定は最大の外交課題である。なぜならば日米地位協定 こそ、日米安保体制の要であり、米国が日本に決して手をつけさせなかった協定 であるからだ。 その事を見事に教えてくれる貴重な本が最近出版された。井上寿一学習院大学 教授の手になる「吉田茂と昭和史」(講談社現代新書)がそれだ。 岡田民主党幹事長のみならず、民主党議員には是非とも読んでもらいたい。 戦後の日本の再出発にあたって、吉田茂がサンフランシスコ講和条約に署名し、 米国を中心とした西側陣営に与する選択をしたことは誰もが知っている。 そしてその同じ日に日米安保条約が署名されたこと、その日米安保条約が 不本意な不平等条約であったため吉田茂がその責任を負って一人で署名した事も 知られている。 しかしいわゆる日米安保体制なるものの本質、つまり米国の日本永久占領の 本質が、その後につくられた日米行政協定にあることはあまり知られていない。 井上寿一の「吉田茂と昭和」という本の白眉は、いわゆる日米安保体制と言う 名の米国の日本永久占領政策は、サンフランシスコ講和条約、日米安保条約、 そして日米行政協定(後の日米地位協定)という三つの法体系の三位一体で 出来ていること、そしてその法体系の下位にいくほど、日本占領の本質がむき出し になっている、という歴史的交渉経緯を喝破していることである。 つまり米国の日本に対する要求はあまりにも一方的なものであり続けた。 サンフランシスコ条約で書けない無理難題を日米安保条約に先送りし、その 日米安保条約でも書けない無理難題を行政協定にまわす。 そして後のない行政協定の交渉において、日本の外交当局がいくら頑張って みても、米国は一切の譲歩をすることなく、最後は日本が無理難題を飲まされて 終わる。その産物が日米行政協定なのだ。 「思いだしてもおもしろくない交渉」(西村熊雄外務次官)の末に作られた のが日米行政協定(新安保条約成立時に日米地位協定として継承)なのである。 もう読者はおわかりだろう。岡田幹事長の日米地位協定を改定するという発言は 、日米安保体制の根幹を変えることである。米国が決して受け入れない事だ。 今までのどの政治家もなしえなかった事だ。 岡田幹事長はその事に気づいているのだろうか。 井上はいう。そもそも日米安保体制は歴史的矛盾であると。その矛盾は、 戦勝国アメリカと敗戦国日本が協調関係を築いた事に起因する、と。そして 、その矛盾を解消する唯一の方法は、日本が再びアメリカと戦争を戦い、勝利 することしかない、と。 そして、米国と戦う決意もなく、たとえ戦っても勝つ見込みが無い以上、矛盾に 耐えるしかない(対米従属に甘んじるしかない)、と(276-277頁)。 この井上の言葉は過激だ。しかしいわゆる鳩山一郎をはじめとして今日まで続く 再軍備による自主防衛論者の主張は、彼らが気づいているかどうかは別にして、 結局はそういう結論に行き着くのだ。 しかし、その井上も、気づかない対米自主外交を可能にさせる方法がある。 それは平和憲法を盾にして米国の不当な要求を拒否することである。戦争国家 米国の外交から敢然と決別し、自主、自立した平和外交を世界に宣言する事である。 これしかない。 岡田幹事長が、そして民主党が、この事に気づいた時こそ、いままでのどの政権 もなし得なかった正しく、力強い対米外交が実現される時である。 ───────── 天木直人のメールマガジン 2009年7月3日発行 243号

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