■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年5月23日発行 第196号 □■ ────────────────────────────────── ■ 政府・外務省は拉致被害者の生死について明らかにすべき時だ 4月25日未明に放映された「朝まで生テレビ」で、「拉致被害者は死んで いる」とする田原総一朗氏の発言が、その後思わぬ展開を見せ始めた。 私はこの重大な田原発言に、外務省が、拉致被害者家族が、そして拉致被害者 家族を支援する政治家たちが騒がなければ、皆が暗黙に拉致被害者の死を認めて いる事を意味するのではないか、拉致問題は風化していくのではないか、と メルマガで書いた。 そう書いた後に、この田原発言問題は意外な進展を見せ始めた。 拉致家族会が、遅ればせながら、二週間ほど経った5月11日に、田原氏と テレビ朝日に抗議文を送った事が5月12日の各紙で報じられた。 それから一週間ほどたった5月19日の朝日新聞が、田原氏とテレ朝が プロデユーサー名の文書を送って、「不快の念を抱かせ誠に申し訳ない」と 拉致被害者家族連絡会に謝罪したことを報じた。 その朝日の記事は、また、「人の生死に関する問題を、具体的な情報源を示す ことなく発言したことは深く反省している」、と田原氏が話していることを 報じていた。 さらに、今日5月23日の毎日新聞は、田原氏個人から拉致家族会と「救う会」 に、「乱暴な言い方でご家族や関係者のお心を傷つけたことをお詫び申し上げ ます」とお詫びの文書が届いた事を報じている。 わずか一週間ほど前には、「家族会の方が抗議される気持ちはよくわかる。 しかし、私は事実を言ったまで」と、強気だった(5月12日産経新聞)田原氏 が、謝罪するようになったのだ。 しかし、これらの謝罪文の報道を注意して読むと、田原氏は決して、「拉致 被害者は死んでいる」と言った自らの発言を撤回しているわけではない。 「不快の念を抱かせ誠に申し訳ない」と謝っているだけなのだ。死んでいると 言ったことは間違いだったと、その言を撤回してはいないのだ。 これに対し、5月19日、中曽根外務大臣が記者会見で田原氏の発言を、 「大変遺憾で非常に誤解を与える発言だ」と批判した上で、「外務省は安否不明 の拉致被害者はすべて生存しているとの立場、前提に立っている」と述べた、 と5月20日の産経新聞が報じた。 これは一見田原発言を否定しているかのようだ。しかし、「生存している立場」、 「生存している前提」で、北朝鮮側と交渉しているというだけであって、決して 「生存している」と断言していない。肝心なところを巧妙にぼかしているのだ。 そして5月22日の読売新聞の報道である。西村康稔外務政務官が21日、 複数の外務省幹部に聞き取り調査を行なう考えを明らかにしたという。田原氏の 発言を誘発するような言動が外務省関係者の中にあったかどうかを確認するため だという。 しかし、西村発言の意味するところは、情報を洩らした外務省職員を見つけ出し て厳重注意する、ということであって、決して拉致被害者の生死を確認する、 とは言っていない。 これら一連の動きは極めて重要である。我々はこの問題の今後の進展から 眼を離してはいけない。メディアはこの問題を最後までフォローして国民に 知らせなければならない。 なぜならば拉致被害者の生死を確認する事こそ、拉致問題の決着(これは 決して解決ではない。救出ではない。どういう結果に終わろうとも、拉致問題が 終結するという意味だ)につながる決め手となるからだ。 国会議員がもし拉致家族の事を本気で思うのであれば、この問題を国会で追及 しなければならない。 外務政務官に聞き取り調査の報告日を発表させるべきだ。その調査報告を つつみ隠さず国会に報告させることだ。 そしてもし外務省関係者から拉致被害者の生死にかかわる情報が田原氏に 伝わったのであれば、その情報源を明らかにし、その信憑性の根拠がどこにあるか を外務省に聞きたださなければならない。 もし、田原氏の情報源が外務省関係者のものからでないとすれば、田原氏を 国会に参考人として招致し、その情報源とその信憑性を質さなければならない。 私は田原氏の情報源は外務官僚であると思っている。そしてその外務官僚は、 確かな根拠なしに、推測で、そう語っていると思う。 なにしろ、わずか10人ばかりの命の為に国家の大事が損なわれてはならない、 とかつて言い放ったのが外務官僚である。 自らの手で確認作業を行なうことなく、北朝鮮の発言をそのまま信じて 「拉致被害者は死んでいる」、と平気で家族に伝えたような男が出世する組織が 外務省なのだ。 もし万が一、外務省が拉致被害者死亡の確かな情報を握っており、それを 拉致被害者家族や国民に隠しているのならば、そしてその上で「全員生きている」 と装っているのであれば、今回の中曽根外相の発言は許しがたい背任行為という 事になる。 そして、もし外務省が、「全員が生きている」事を本当に信じているのなら、 そしてその救出を本気で考えてを北朝鮮側と交渉するつもりなら、米国の強硬 姿勢を願ったり、制裁強化ばかりを訴えて北朝鮮との交渉を閉ざしてきたこれ までの外務省の態度は自己矛盾である。大きな外交失敗である。 あらゆる条件を提示し、北朝鮮との直接交渉で解決を目指すべきだった。いや 今からでも遅くない。救出のために北朝鮮との直接交渉を開始すべきだ。 田原発言がきっかけで拉致問題はあらたな段階に入る事になるかもしれない。 いやそうならなくてはいけない。そうなることを期待する。 こんどこそ外務省は国民の前に真実を語るときが来た。政治家や外務官僚の 野心や保身の為に、これ以上拉致被害者家族を苦しませてはいけない。これ以上 拉致被害者家族の心をもてあそんではいけない。 ───────── 天木直人のメールマガジン 2009年5月23日発行 第196号 発行者:天木直人 著者ブログ: http://www.amakiblog.com/

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