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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「天木直人メルマガ」 第193号 
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              □■ 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】  □■  天木直人のメールマガジン 2009年5月20日発行 第193号 □■   ────────────────────────────────── ■                 裁判員制度を全面的に擁護する朝日の社説  明日から始まる裁判員制度を前にして、「待ってました!」、とばかり、 5月20日の朝日新聞が、裁判員制度を歓迎する社説を大きく掲げていた。  しかも、他紙が、裁判員制度の開始を国民に知らせる目的でその制度の 問題点を客観的に書いているのに比べ、朝日の社説は総務省、裁判所側に 全面的に軸足を置いた社説である。  どうやら朝日新聞は、大手新聞の中で最も権力側と一体になってしまった かのようだ。  その社説を注意深く読んでいくと、それは単純な政府広報でないことが わかる。読者を巧みに誘導する、周到に意図された情報操作の社説だ。悪意、 つまり強烈な目的意識、をもって書かれた社説なのである。  私は、多くの理由から裁判員制度に強く反対する者の一人だ。しかし、 だからといって裁判員制度の導入に賛成する議論を、何もかも否定するつもり はない。  如何なる制度、政策も、長所と短所がある。だからこそ国民の知るところで 十分に議論され、国民が納得する形でつくられ、実施されなければならない。  そうしてつくられた制度、政策であれば、たとえそれが気に食わなくても、 それに従う、従わなければならない。それが民主主義だ。  ところが、ここ半年ほどの間に盛り上がった裁判員制度に関する議論を見て いると、どう考えても、それを明日から導入するのは時期尚早である。  朝日新聞はその社説の冒頭で、「国民主権に立つ現憲法ができてから62年を へて、大変革が現実のものになる」、と、この制度の歴史的重要性を訴えている。  あたかも憲法改正に踏み切るような興奮ぶりだ。まるで憲法9条改正の地ならし をやっているごとくだ。  しかし、そのような歴史的大変革であればこそ、十分に議論をつくし、少なく とも国民の多数が納得いく形で始められるべきではないか。  いくら世論調査を繰り返しても過半数の国民は不安を感じている。いま直ちに 導入されなければならない必要性を感じていない。  なぜしばし延期して頭を冷やさないのか。無理をして強行する理由は、ここで 延期すれば二度とこの制度は実現されなくなるからだ。裁判所の面子がつぶれる からだ。  私が朝日新聞の社説でもっとも危険に感じるのは、今度の裁判員制度の目的が 裁判の民主化にある点を、ことさらに強調している事である。  これまでの裁判の閉鎖性から脱却し、国民の意思が反映される事になる、 これはり市民革命などを経た欧米諸国では当然のことだ、などと読者を脅かし ている。  これは嘘だ。それが言いすぎなら、裁判員制度の一面だけを一方的に喧伝する 総務省、裁判所側の代弁である。  朝日の社説のさらに巧妙なところは、まきおこる裁判員制度に対する批判的 意見についても言及し、それらの問題点についても理解を示す振りをしている ところである。  しかし、それはあくまでも「理解する振り」をしているだけだ。「裁判員の 心理負担は大きい」、とか、「刑事事件の枠組みを変える改革なのだから、 懸念が出ることはむしろ当然のことだ」、とか、「誠実にひとつひとつ克服 したい」、とか、「必要に応じて制度を見直す機会」、などと言ってみたところ で、裁判員制度が一旦導入されてしまえば、動き出す。動き出せば、もう元には 戻らない。  極めつけは社説の次の締めくくりのひとことだ。  「裁判員制度を失敗させるわけにはいかない」  語るに落ちるとはこのことだ。これは、誤りに気づいても、面子にこだわって 引き戻れない、引き戻らない、官僚そのものが発する言葉ではないか。  そのような官僚の誤りが、どれだけ国民生活を苦しめてきたか。われわれは もう十分に目撃してきたはずである。                   ────  天木直人のメールマガジン 2009年5月20日発行 第193号  発行者:天木直人  著者ブログ: http://www.amakiblog.com/  

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