□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年5月1日発行 第170号 □■ ────────────────────────────────── ■ 北方領土問題(佐藤優の告白) 私の見るところでは、鳩山一郎首相の手による日ソ共同宣言が、米国の恫喝 ともとれる干渉によって履行されずに終わった後は、北方領土返還はただの一度 も実現される可能性はなかった。 2島返還といい、4島返還といい、あるいは馬鹿げた3・5島返還といい、 日本側のひとり相撲である。 ソ連政府も、その後のロシア政府も、北方領土返還に応ずる意思は一切なかった、 ない、と言っていい。 それなのに、なぜ日本政府は北方領土返還をめざして迷走するのか。それは、 政治家といい外務官僚といい、ひとえに手柄をあげたい為である。 この事を佐藤優起訴休職外務事務官が月刊誌「創」4月号の連載 「ナショナリズムという病理」で、見事に告白している。 彼は、エリツィン大統領の(みせかけの?)柔軟姿勢に飛びつき、日本が 「四島一括返還」から、「四島への日本の主権が確認されれば、実際の返還の 時期、態様及び条件については柔軟に対処する」、へ、方向転換をした事に ついて、こう告白している。 「・・(柔軟対応が)何を意味するかについては一切触れておらず、その 意味での具体性はな(い)・・・この路線転換を外務省は世論に対して積極的に 説明しなかった。国会答弁における説明や、(外務省広報資料)『われらの 北方領土』における記述変更も、『静かに潜り込ませた』というのが実態だ。 なぜ外務省はこのような姑息な対応をしたのだろうか?・・・」 この問に対する答えを佐藤優はあえて書かない。しかし、このごまかしが、 「後になって大きなツケになって回ってきた」と、東郷和彦氏(ソ連課長、 欧亜局長)の言葉を借りて反省してみせる。 その「ツケ」とは、2002年に吹き荒れた鈴木宗男、東郷和彦、佐藤優 に対する、「国是である四島一括返還」を崩した、という非難の事である。 興味深いのは、この非難を、佐藤優は、一方において「根拠のない非難に さらされた」といっておきながら、別の箇所で、「もっとも、このような状態を 招いた責任の一端は筆者を含む外務官僚にある」、と率直に述べている事だ。 そして、その上で、本年2月の麻生首相とメドヴェージェフ露大統領の間で 合意したとされる「新たな、独走的で、型にはまらないアプローチ」について、 佐藤らが犯した誤りを再び繰り返そうとしている、と警告している。 言外に、国民に説明責任を果たさないまま、功を焦って原則を曲げる愚を 繰り返すな、と言っているのだ。 佐藤優は最後に次のように言い切ってその記事を終えている。 「北方四島が日本領であるという従来の原理原則を政府、外務省が変更する なら、その事実を国民に明らかにし、国会で審議し、世論に耳を傾け、総選挙 で国民の信を得てから、ロシアと交渉を行なうのが筋だ。なし崩し的に四島 返還の立場を変更すると、ロシアからは日本は『バナナの叩き売り』のように 領土を値切る国家とみなされ、ナメられる・・・」 その言やよし。まさに正論である。これで止めとけばよかった。 ところがその佐藤優が、週刊アサヒ芸能5月7・14日連休合併号の連載 「ニッポン有事」の中でこう書いていたのを見つけた。 彼は谷内正太郎政府代表の3・5発言を評価した上で次のように書いている。 「私は3・5島でもいいのではないかと考えている。北方四島を両国の つまずきの石にしないという意思が大事だ・・・政府と外務省は、谷内発言の 火消しにやっきになっているが、日露関係が水面下で動き始めていることは 間違いない」 佐藤優の面目躍如である。佐藤優の立ち位置は常に不明である。さぞかし 鈴木宗男が悲しんでいることだろう。 ───────── 天木直人のメールマガジン 2009年5月1日発行 第170号 発行者:天木直人 著者ブログ: http://www.amakiblog.com/ 読者の皆様からのメールをお待ちしております。このメールマガジンに返信 していただければ、著者まで届きます。

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