□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年5月2日発行 第171号 □■ ────────────────────────────────── ■ 国際政治の中の中国、台湾、日本の関係を考える 4月30日の産経新聞は、湯浅博氏のコラム「くにのあとさき」で、 NHKが最近放映した「シリーズ・JAPANデビュー」の第一回、「アジアの一等国」 という番組を批判している。 インタビューに応じた知日派台湾人が日本の台湾統治を批判した、それが 中国共産党の圧力に屈したNHKの偏向番組である、というのだ。 実はこのNHK番組は、同様の理由でタカ派保守の間ではいたるところで激しく 批判されている。 なぜ彼らはこのNHK番組をそれほど強く批判するのか。 その背景には、「反共の台湾、親日の台湾までもが日本の植民地政策を批判 するのか」、という危機感があるからだ。 さらにいえば、中国と台湾の関係改善が進めば、台湾有事が遠のき、日米同盟 の意味がますます希薄化していくという深刻な問題がある。 この考えを象徴する考えが、月刊「宝島」6月号に見られる。「桜井よしこが 語る台湾と日本の危機」がそれである。 そこで桜井よしこ氏は要旨次のように語っている。 「 北朝鮮ミサイル問題に目が奪われている日本だが、日本にとって本当の 危機は中台関係の急激な変化(融和)にこそある。 世界中見渡しても、台湾ほど親日国家は他に類を見ない。その台湾と日本と の良好な関係が損なわれるようなことがあってはならない。中国を喜ばせる だけだ。 台湾と中国が統合されれば、日本の船舶の多くが通過する台湾海峡が中国の 内海となり中国は大きな外交カードを持つ事になる。 台湾は日本と同様の価値観を持つ自由と民主主義の国であり、その台湾が、 そのような価値観をまったく認めない共産主義の中国に席巻されることは 看過できない。 なによりも、中台が一体となれば東南アジアの多くが中国の影響下に入り、 その結果日本は孤立する。日本に残される選択肢は、中国の言いなりになるか、 対峙するしかなくなる・・・」。 なるほど。このような考えに立つ限りは、台湾の国民が日本の植民地政策を 批判しはじめる事は悪夢に違いない。 しかし、残念ながらこの桜井よしこ氏の考えに象徴される日本のタカ派保守 の考え方は、中国や台湾、そして米国や国際社会の考えを捨象した一方的な 考えだ。国際政治の流れに逆行する考えだ。 馬英九台湾政権の中国接近とこれを歓迎する中国、米国の中国重視政策など、 大きな歴史的流れは、もはや誰の目にも明らかである。 おりしも4月30日の各紙は、WHO総会に台湾が参加することを中国が認めた と報じている。台湾の国連機関への参加は71年の台湾の国連脱退以来初めて であるという。 産経新聞の論説を書いた湯浅博氏はこう書いている。 「(NHK)制作者がシロをクロと言いくるめる番組をつくろうと思えば、取材対象 の見解からクロばかりを抽出すれば事足りる。そこには、善意ある台湾人の 複雑微妙な心理は配慮されない・・・」 この言葉は、そっくりそのままNHK番組を批判する湯浅博氏の論説にも当て はまる。NHKの番組でインタビューに応じた親日台湾人は「日本統治の善しあし は半分半分なんです。NHKには両方言った」と述べているのだ。 タカ派右翼の外交論に望みたい。国際政治の大きな流れを直視すべきだ。 みずからに都合のいいところだけを抽出したり、国際政治を無理に捻じ曲げ たりしてはいけない。 国際政治の流れを見極めた上で日本外交をどう効果的に展開していくか、 それが国益にかなう外交である。 ───────── 天木直人のメールマガジン 2009年5月2日発行 第171号 発行者:天木直人 著者ブログ: http://www.amakiblog.com/ 読者の皆様からのメールをお待ちしております。このメールマガジンに返信 していただければ、著者まで届きます。

新しいコメントを追加