□■□■ 【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ 天木直人のメールマガジン 2009年5月1日発行 第169号 □■ ────────────────────────────────── ■ 北方領土問題(米国にとっての利用価値) 北方領土問題の解決を米国が阻止しようとしていた。こういう史実が ある事を知っている日本国民が果たしてどれほどいるだろう。 「日米安保条約は実質的に終わっている」という書き出しではじまる 元外務省幹部孫崎享氏の著書「日米同盟の正体」(講談社現代新書)が、 いかに衝撃的な著書であるかは、メールマガジンでも繰り返し書いてきた。 この著書のなかで孫崎氏は、「北方領土は米国にとり、二度、三度と味 わったおいしいアーモンドグリコである」と次のように書いている。 一度目はヤルタ秘密協定(1945年2月のルーズベルト、チャーチル、 スターリン三首脳会談)の舞台裏である。 ソ連の対日参戦を望んだルーズベルトは、千島列島についてのソ連の 領有権を承認し、この約束はトルーマンにも引き継がれた。 二度目は1951年9月に署名された対日講和条約(サンフランシスコ条約) における千島列島の範囲に関する米側の曖昧な態度である。 サンフランシスコ条約は、「日本国は、千島列島ならびに・・・樺太の一部 およびこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原および請求権を放棄 する」と規定している。 しかし、孫崎氏は、丹波實元駐ロ大使がその著書「日露外交秘話」 (中央公論社)の中で、「日本に千島列島を放棄させるが、その範囲を曖昧に しておけば、この範囲を巡って日本とソ連は永遠に争う事になる・・・」と いう在京英国大使館発本国宛極秘電報を引用していることを紹介している。 その上で、実はこれと同じ事を米国政府関係者が言っていたのだ、と、 マイケル・シャラー、アリゾナ大学教授の著書「『日米同盟』とは何だったのか」 (草思社)の次の言葉を引用して我々に教えてくれる。 「・・・千島列島に対するソ連の主張に異議を唱えることで、米国政府は 日本とソ連の対立をかき立てようとした・・・うまくいけば、北方領土について の争いが何年間も日ソ関係を険悪なものにするかもしれないと彼らは考えた」 三度目は極めつけの歴史的事実だ。鳩山一郎の二島返還合意の実現に対し、 米国はこれに正面から待ったをかけた。その史実を孫崎氏は次のように書く。 「1956年の鳩山一郎政権時代、歯舞、色丹を手に入れることで領土問題 の解決を図ろうとしたことがある。これに対し、同年9月7日、米国国務省は 日本に『日ソ交渉に対する米国覚書』を出している。それによると、日本は サンフランシスコ条約で放棄した領土に対する主権を他に引き渡す権利を 持っておらず・・・仮に(ソ連と)合意すれば、米国はサンフランシスコ 平和条約による一切の権利を留保する。平和条約はチャラになる、と言っている。 凄い警告である・・・」 賢明な読者はもうおわかりだろう。北方領土問題は、対ソ外交の問題である と同時に、実はこよなく対米外交なのである。 何故小泉首相は北方領土問題に手をつけようとしなかったのか。 それは単純な事だ。勝算のない問題に手をつける気がなかっただけの話だ。 彼が北方領土問題の複雑な歴史的背景を熟知しているとは思えない。 しかし対米従属一辺倒の小泉首相が、北方領土問題は対米交渉の問題だと 知りぬいた上で、米国の意に沿わない事は最初から手をつけない、と確信犯的に 避けたとすれば、作り話でも面白い。 いみじくも、鈴木宗男は平成18年10月23日提出の質問主意書で、 「ロシアとの北方4島帰属問題を解決するにあたって米国の仲介が必要では ないか」と質している。 これに対する10月31日付の政府答弁書は、こうだ。 「政府としては・・・ロシア連邦政府と引き続き粘り強く交渉していく 考えである」 質問をかわした見事な官僚答弁だ。鈴木宗男にはさらなる追及を期待する。 ───────── 天木直人のメールマガジン 2009年5月1日発行 第169号 発行者:天木直人 著者ブログ: http://www.amakiblog.com/ 読者の皆様からのメールをお待ちしております。このメールマガジンに返信 していただければ、著者まで届きます。

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