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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「天木直人メルマガ」 第162号 護憲派は安保議論から逃げてはいけない
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□■□■  【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■  天木直人のメールマガジン 2009年4月26日発行 第162号 □■   ────────────────────────────────── ■              護憲派は安保議論から逃げてはいけない    4月24日に、安全保障問題に関する二つのテレビ番組に呼ばれて 参加してきた。一つは関西読売テレビの「やしきたかじんのそこまで言って 委員会」の収録、もう一つは「田原総一郎の朝まで生テレビ」の実況である。  朝まで生テレビは実況だからすでに放映済みである。北朝鮮外交で日本 は孤立しているのではないか。日米同盟で大丈夫か。核武装を含めた自主 防衛を考えるべきではないか。などがテーマの番組であった。  一方の「やしきたかじんのそこまで言って委員会」のほうは、5月3日の 憲法記念日に放映される予定で、改憲論者の安倍元首相をゲストに呼んで、 なぜ改憲の動きが進まないのか、現実と乖離した憲法9条を放置していいのか、 を論じた番組である。 (筆者註:この番組は4月26日の日曜日に放映されるとお知らせしましたが、 放映は5月3日という事でした。番組に関心ある読者はご注意ください)。  いずれの番組も、少数の護憲派ゲストが、多勢のタカ派の論客によって 罵声を浴びせかけられる、そういう番組である。タカ派の視聴者は溜飲を下げ、 護憲派の視聴者は歯軋りさせられる、そんな番組である。  このような番組は、安全保障問題を深く考えない一般国民を改憲派に導く おそれがある。番組の意図もそこにあるに違いない。  しかし、番組を出演した護憲派の一人としてつくづく感じたのは、攻撃されて いるのは決して平和主義者のほうではないということである。  実は追い込まれているのはタカ派なのだ。そのことをつくづく感じた。その事 を今日のメルマガで書いてみたい。  たとえば、国を守るのに、「強い軍隊を持つべき」か、「憲法9条を堅持する」 か、という単純な二者択一の議論になると、たちまちタカ派が勢いづく。  「平和憲法で日本が守れるか、馬鹿なことを言うな」と罵声を浴びせる。  スタジオに集まっているサクラのような観客の多くが、そういう時に限って 拍手をする。  軍事力か平和憲法か。そのような対立軸で議論を始めればたちまち対立する。 平行線を辿る。声の大きいものが勝つ。議論は成り立たず感情論で物事が決まる。  だから私はそんな議論には巻き込まれない。そのかわり、各論でタカ派の主張 の矛盾を一つ一つ突いていくことにする。そうすればたちどころに彼らは 行きづまる。そしてタカ派の間の喧嘩がはじまる。  なぜか。それは国際政治の現実がタカ派を追い込んでいるからである。タカ派 の強硬な発言は、無知な世論を誤魔化すことが出来ても、国際政治の現実を 誤魔化す事はできないのだ。  たとえば、「自主防衛力を高める事で日本の安全を守る」ことは当たり前だ、 とタカ派は主張する。しかしこの考えはたちどころに国際政治の壁につきあたる。  軍事力で国を守ろうとすれば行き着く先は核武装しかない。核武装まで 行かなければ、彼らの当面の敵である「核を持った北朝鮮」に勝てないからだ。 北朝鮮から脅され続ける事になるからだ。  そして日本の核武装については、田母神氏のような単純強硬派は、わが意を 得たりとばかり「その通りだ」と言う。  しかし、多少なりとも国際政治の現実を知っている自称インテリ親米保守派は、 「米国はそれを認めない。日本は世界の孤児になる」、と核武装を否定する。  こうして保守・タカ派の間で罵り合いが始まる。  もう一つの大きなテーマである「日米同盟の是非」については、保守・タカ派は もっと追い込まれている。  「米国が日本を守ってくれると本当に信じているのか」と聞けば、彼らは答え に窮する。  誰も、内心はそう思っていない。特に最近の米国の日本軽視を見ればなおさら そうだ。  しかし、彼らは決して「米国は日本を守らない」とは言えない。それは彼らの 最後の砦である「日米同盟こそ日本外交のすべてである」という考えに、 ほころびを入れる事になるからだ。  そしていったん日米同盟に疑念を持ち始めると、たちどころに日米同盟神話 の崩壊につながる危険があるからである。  私はその質問を安倍元首相にぶつけてみた。「おじいさんがつくった安保条約は、 もはや米国によって否定されているのではないか。ソ連共産主義の脅威を前提に した日米同盟はもはや不要ではないのか」、と。  それに対する安倍元首相の答えが、今の政府・自民党の矛盾のすべてを 物語っていた。  「日米同盟は日本の安全の為だけにあるのではない。世界の平和と安全に ついての共同責任もある。それに、集団的自衛権を行使できない日本にも 責任がある。米国が戦っている時に、それに協力しない日本を米国が本気で 守る気になるだろうか。守ってもらえるためにも、まず日本は集団的自衛権を 使えるような国にならなくてはいけない」、などという。  これは嘘である。苦しい言い訳である。日本が集団的自衛権を行使しよう がしまいが、米国は国益に合致しなければ、日本の為に米軍を動かす事はない。  岸元首相が結んだ安保条約は、世界の平和の実現に向けた日米共同責任など、 どこにも謳っていない。  このような言い訳をしない限り、日米安保条約を擁護できないのだ。  日米安保条約はもはやその根拠を完全に失っているのだ。だからこそ 政府・自民党は「米軍再編への協力」とか、50周年を迎える来年に想定されて いると報じられている「新しい日米安保宣言」などという政府決定によって、 安保条約に代わる新しい政策をつくろうとしているのだ。  しかも、国会条約を結ぶのではなく、政府決定でこれを行なう。国民の知らない 間に日米安保条約を書き換えようとしているのである。  ほかにも各論ごとの争点はいくつかあるが、最後に北朝鮮のミサイル脅威に 関する論点を一つだけ述べておく。  今度の北朝鮮のミサイル実験により、北朝鮮のミサイル脅威がことさら強調 されるようになった。  日本のミサイル迎撃能力を強化しなければならない、という声が政治家の 中にも、メディアの中にもあがっている。  いいだろう。確かに北朝鮮のミサイル脅威は深刻だ。  それでは、どこまでミサイル迎撃防衛を強化すれば安心できるのか。北朝鮮 とのミサイル戦争に勝てるのか。  中途半端な迎撃強化は危険である。膨大な予算が必要だ。しかし、 ただでさえ深刻な国民生活の中で、国民生活を救済する予算を、いまミサイル 防衛強化に使う事が正しいのか。それを国民が許すのか。  それよりもなによりも、すでに何百発もあると言われる北朝鮮のミサイルを すべて撃ち落せるのか。核弾頭を積んだミサイルが一発でも東京に落ちたとき、 その犠牲ははかり知れないことを本気で考えたことがあるのか。その犠牲を 覚悟しろと誰が言えるのか。  保守・強硬派の議論は各論に入るとたちまち行き詰まる。だから司会者は 決して各論に入ろうとしない。都合の悪い質問になると、たちどころにさえぎり、 無視し、矛先をそらして終わりにする。そして最後は必ず憲法9条を唱える だけでは無責任だ、という事にしてしまう。  護憲派は安保論議から逃げてはならない。安保議論に強くなって、各論で 保守・タカ派の矛盾を打ち負かさなければならない。  時代はそこまで進んでいる。そして国際政治の現実は、ますます護憲派に 味方しているのである。   ─────────  天木直人のメールマガジン 2009年4月26日発行 第162号  発行者:天木直人  著者ブログ: http://www.amakiblog.com/  読者の皆様からのメールをお待ちしております。このメールマガジンに返信 していただければ、著者まで届きます。   読者へのお知らせ  関西読売テレビ番組 やしきたかじんの「そこまで言って委員会」は、 放映日時は、きょう4月26日(日)ではなく、憲法記念日の5月3日と いう事です。お詫びして訂正します。

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