天木直人のメールマガジン ー反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月27日発行 第0118号 佐藤優が語る外務省の内幕─田中真紀子追放劇 たびたび書いてきた事だが、私は佐藤優が語る外務省の内幕については、 これに注目している。的確であり、面白い。国民の参考になる。だから、 それを見つけたら可能な限りこのメールマガジンで紹介しようと思っている。 最近の週刊誌、雑誌で、彼の二つの外務省批判を見つけた。それを二回に わけて解説する。その第一回目は、発売中の週刊文春4月2月号に出ていた 田中真紀子追放劇の内幕である。 官僚は組織防衛と人事には異常なまでの執念を見せる。特に外務省はそうだ。 外交という仕事の特殊性、機密性を殊更に強調し、外交への他者の介入を極端に 嫌う。人事を自分たちだけの物にして身内で決めたがる。すべては特権を独占 するためだ。 そんな外務官僚は、言いなりになる外相を歓迎し、外交機密費問題や外務省の 人事問題に口出しする政治家を嫌う。 その中でも、田中真紀子と鈴木宗男は、外務官僚がもっとも警戒した政治家で あった。使い道がなく危ない言動ばかりしていた田中真紀子外相(当時)は一日も 早く排除しなければならない存在であった。 田中真紀子と違って鈴木宗男は利用価値があった。何かにつけて人事権を振り 回して恫喝したり、外交に口出しする鈴木宗男は、外務官僚にとっては恐れられる 存在ではあったが、外務省の予算獲得や権限拡充という組織防衛には役立ったし、 鈴木にいる不利をして出世競争に利用するという点で使い道はあった。 さんざん利用した後で、邪魔になった頃に追い出せばいい。毒をもって毒を 制した後に、すべての毒を排除する。これが田中真紀子追放劇の内幕であった。 外務官僚は田中真紀子が如何に外務大臣として失格であるかの情報を意図的に リークして田中真紀子を貶めた(そのような隙を与えた田中真紀子の責任も勿論 あった)。そのために外務省シンパの鈴木宗男を利用した。鈴木宗男と密接な関係 を築いていた一事務官に過ぎない佐藤優を通じて、鈴木宗男に働きかけた。 首尾よく田中真紀子を追放する事に成功した後は、手のひらを返したように 鈴木宗男と佐藤の追い落としを図る。こうして鈴木と佐藤は、佐藤の言う 「国策捜査」によって犯罪人に仕立て上げられ、収監される事になる。 ここまでは筋書き通りであった。しかし鈴木宗男は再び政治家に返り咲き、 佐藤優は世論に影響力を与える言論人となって、復活する。復活した二人は 外務省にとって最大の脅威であるに違いない。 週刊文春4月2日号で佐藤優が語っている以下のごとき田中真紀子追放劇は、 当事者である佐藤しか知らない貴重な情報である。そして、私にとっては、つい この間まで一緒に仕事をしていた先輩、同僚たちの卑劣な動きを思い出させて くれるドラマの再現でもある。 平成13年(2001年)5月、佐藤優は当時の事務次官である川島裕に 次官室に呼ばれてこう言われたという。 「婆さん(田中真紀子)は外交には関心がない。興味があるのは、機密費問題 で外務省を叩くことと、人事だけだ」。 田中真紀子の事を「婆さん」と呼ぶのはいかにも川島次官らしいもの言いだ。 そしてその川島次官は同年6月に赤坂のTBS会館地下の「ざくろ」で鈴木宗男 と密かに会って、「田中外相では外交ができなくなります。外務省を守って ください」と頼み込んだという。 「ざくろ」は外務省が会食でよく使う場所だ。もちろんその食事代は機密費 から支払われる。 そして佐藤優は、田中外相攻撃を依頼してきた幹部がもう一人いた事を 鈴木宗男から聞かされる。 「おい、佐藤さん。飯村(豊)官房長が来て、田中外相をやっつけて下さい と言うんだ・・・」 飯村官房長は私の同期の一人である。同じく私の同期である谷内正太郎や 田中均と次官ポストを争った功名心の強い男である。川島次官の片腕として 外務省を守る事によって自らの生き残りを図ったのだ。 田中真紀子は翌2002年1月に外相を更迭される。知りすぎた鈴木宗男が 邪魔になった外務省は、今度は鈴木宗男バッシングを始める。その時の情景を 佐藤は次のように再現してみせる。 ・・・そのとき、「鈴木さんとの関係でキミが一番苦労しているのだから、 (今度は)鈴木批判に回れ」 私にこう持ちかけてきたのは、ほかならぬ飯村氏でした・・・ いかにも飯村らしい。その飯村は次官こそ逃したものの、その後インドネシア、 フランスの大使を歴任し、この4月から中東担当の政府代表となると報じられて いる。 同じく外務官僚であった前任者の有馬龍夫と同様、およそ中東問題に携わった 事がなくてもなれる華麗な天下りである。人事を外務官僚たちで独占している からできるお手盛り人事だ。 その外務省が小沢政権の誕生を恐れているという。小沢政権の下で鈴木宗男が 外務省に乗り込んでくる事を恐れているという。その事については次回のメール マガジンで書くことにする。

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