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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

「天木直人メルマガ」 第0117号 孤立する日本の対北朝鮮ミサイル外交
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 天木直人のメールマガジン  ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説  2009年3月27日発行 第0117号  孤立する日本の対北朝鮮ミサイル外交  これを書いている今、政府は安全保障会議を開催してミサイル迎撃命令を 決定している頃だろう。それが今日のニュースに仰々しく報じられることに なる。  私は安全保障会議をお膳立てする内閣審議官だった(1988-90年)。 その経験から、安全保障会議なるものがいかに空疎なものかを知っている。 すべては官僚たちがお膳立てし、総理以下関係閣僚はそれに従って発言して 終わりである。だから今度の決定も、議論も無くセレモニーでしかない。  緊張感の無さは、そのような官僚主導のこの国の政策決定の実態だけにある のではない。わが国安全保障史上はじめての、そして最も緊迫したミサイル戦争 前夜という状況なのに、政府もメディアも国民も、なぜか緊張感が無いと感じる のは私一人だろうか。  いや、緊張感はあるのだろう。不安感はあるのだろう。しかし打つ手がないのだ。 なぜ打つ手がないのか。それはもちろん日本が単独で北朝鮮のミサイル実験に対応 できないからだ。  しかし、より深刻な事は、今回の北朝鮮ミサイル発射問題が世界の危機と捉え られていない事である。日本だけが大騒ぎしている問題に封じ込められている からである。  日本が大騒ぎするのは当然だ。北朝鮮のミサイル実験は日本に向けて発射される。 日本の領空を真っ二つに割って飛来する。これほどの危機はない。これが米国や 中国だったらミサイル戦争が始まるほどの危機だ。  しかし、日本以外の世界のどの国も、北朝鮮が今回ミサイル実験をしたところで 自国に危険が及ぶなどという事はない。だから世界は大騒ぎしないのだ。  しかし米国はそうであってもらっては困る。日本と安全保障条約を締結し、日本 を守る立場にあるはずの米国は、日本の危機を自らの危機と受けとめて深刻に 対応しなければウソである。  ところが、その米国が、言葉とは裏腹に、本気で北朝鮮のミサイル実験阻止に 動こうとしていない。この事をどのメディアも指摘しない。  ニューズウィーク日本版の3月25日号は「核の脅威」の特集号を組んでいた。 そのなかで、米核戦略の専門家であるグレアム・アリソンハーバード大学教授が 次のように語っている箇所があった。  「・・・ロバート・ゲーツ国防長官は最近、『テロリストが核兵器を手に 入れる』ことを想像すると眠れなくなると語った・・・」  この言葉が今の米国の安全保障政策のすべてを物語っている。米国はもはや 北朝鮮の核保有を問題にしているのではない。北朝鮮の核がテロリストにわたる ことを問題にしているのだ。逆に言えば北朝鮮との間でテロ対策の合意ができれば、 北朝鮮がどんなにならずもの国家であろうが許すのだ。リビアの例がそれを証明 している。  この事に関連して、3月27日の日刊ゲンダイで春名幹男元共同通信 ワシントン支局長(現名古屋大学教授)が、その連載コラム「国際情報を読む」 で次のように書いていた。  すなわち、北朝鮮とイスラエルは、北朝鮮のシリアなどへのミサイル輸出停止 と引き換えにイスラエルの金鉱採鉱技術を供与するという取引を既に1992年に 行なっていた、その時北朝鮮はイスラエルに対し、米国との接触の仲介を頼んで いた、と。  周知のように米国の対北朝鮮核政策は猫の目のように変転してきた。クリントン 政権の融和政策に懲りた米国は、6カ国協議の場を提案して共同責任で北朝鮮の 核保を阻止すべく強硬姿勢をとった。北朝鮮の核保有が避けられないと見るや、 北朝鮮との直接交渉に変節し、北朝鮮とシリア、イランとの間の核協力を断ち切る 戦略に切り替えた。  今度の北朝鮮のミサイル実験に対して米国がどのような方針で臨むかは、 いまのところ不明である。しかしはっきりしている事は米国と北朝鮮の間に 駆け引きが行なわれているということだ。その駆け引きの仲介役として中国が 関与しているということだ。その駆け引きの場に日本の姿はない。  北朝鮮のミサイル危機が露呈したものは、単に日本のミサイル防衛の無力さ だけではない。日本外交の無力さ、情報不足さもまた明らかにした。 何よりも 日米同盟関係の欺瞞を明らかにしたのである。

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