天木直人のメールマガジン ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月26日発行 第0116号 ミサイル防衛は「荒唐無稽な愚挙」 私は何度でも書く。北朝鮮のミサイル実験予告がもたらした唯一の歓迎 すべき事は、日本のミサイル防衛計画の実態を国民に教えてくれた事ではないか。 日本の安保政策が米国の命令を丸呑みして出来ている実態を国民の目に明らかに させてくれた事ではないか。 ミサイル迎撃システムという聞き慣れない言葉でも、これだけ連日に報道 されるようになると、どんなに軍事に素人の国民でも、これが茶番だということ に気づかされたに違いない。 「ミサイル防衛は荒唐無稽な愚挙」という表題の言葉は私の言葉ではない。 月刊誌「選択」09・2月号の記事の表題である。その記事は米国の専門家や 政府関係者の発言を引用しながら、ミサイル防衛システムはいまだ「実戦」には 役に立たないと書いている。 そして、それを実戦に使える完全なものにする為にはさらなる開発が必要だが、 費用対効果の観点からオバマ・バイデン政権は予算を優先的にまわすつもりはない、 と書いている。米国に言われるままに唯々諾々とミサイル迎撃計画を進めてきた 日本は、この米国の現実をよく考えろ、と書いているのだ。 その「選択」の記事の中で引用されていた専門家の一人にフィリップ・コイル 三世国防情報センター上級顧問(元米国防次官補)という人物がいる。その彼が 昨年3月から4月にかけて行なわれた米下院公聴会で行なった証言は驚愕的である。 すなわち、国防総省ミサイル防衛局は、完成品が満たすべき要件を定めないで 試行錯誤の兵器を実戦配備しているというのだ。配備しながら改良しており、日本 もそのような中間品を高額で買わされながら実験につきあわされているというのだ。 この事をコイル氏は次のような表現で証言したという。 「間取り図面が絶えず変更される家を建築しているようなものである。非常に 高くつく家になるし、出来上がってみると滅茶苦茶なものになっているだろう」 そのフリップ・コイル三世に産経新聞ワシントン支局長有元隆志氏がインタ ビューをしていた。3月26日の産経新聞にそのインタビュー記事が掲載されて いた。コイル氏の言葉を要約すると次の如くである。 「ロケットでも弾道ミサイルでも打ち上げ当初は見分けがつかない。1分後 ぐらいにロケットとミサイルでは上昇角度が変わってくる」 「早期警戒衛星は発射を探知できるが、夜間や悪天候では感度は高くない。 より性能の高い宇宙空間赤外線システム衛星などの配備は計画が遅れている」 「(日本のイージス艦が)迎撃するとは想像ができない。イージス艦による 迎撃の問題点はミサイルの速度が遅いことだ・・・このシステムはもともと イージス艦自身やその周辺を防御するために開発されており、迎撃可能範囲は 狭い・・・迎撃するには飛行するミサイルの近くにいないといけない」 「これまで14回迎撃実験を行い7回成功したが、過去6回の実験では 4回は失敗だった。20回以上実験に成功しなければ、MDが効果的という事 にはならない・・・発射に失敗し回転しているミサイルの一部を迎撃する実験は いまだ実現していない」 要するにミサイル迎撃はあまりにも不確実であるという事だ。それでも 麻生首相は「破壊措置命令」を閣議決定せざるを得ないだろう。北朝鮮がミサイル を発射したのに指をくわえて何もしないわけにはいかないからだ。 わが国最大の安保政策の危機が目の間に迫っている。この事をメディアも 専門家もっと国民に訴えるべきである。

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