天木直人のメールマガジン ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月25日発行 第0115号 世の中の不正に異を唱え始めた官僚OBたち 「おかしいことは、だれかがおかしいと言い続けなければ直らない」。こう いう書き出しで始まるサンデー毎日4月5日号の岩見隆夫の「サンデー時評」に、 私の目は釘付けになった。 その記事は、元最高裁判所福田博判事の新著「世襲政治家がなぜ生まれるのか? 元最高裁判事は考える」(日経BP社)を紹介しながら、福田氏が「一票の格差」 問題で最高裁大法廷の多数意見に異を唱えている事を私に教えてくれた。 なぜ私が驚いたか。それは福田博元最高裁判事が、私が仕事上で最も深くつき あった外務官僚の先輩であるからだ。駆け出しの頃の直接の上司であり、 マレーシア日本大使館公使の時は特命全権大使として文字通り直属の上司で あった。 福田博氏は東大法学部を卒業して外務官僚となり、中曽根首相秘書官、条約局長、 外務審議官を経て最高裁判事を10年間務めた人物である。外務次官や駐米大使に こそなれなかったが、つねに外務省の中枢のポストを歩み続けた自他共に認める ミスター外務省でであった。 その福田氏が、選挙制度の欠陥を指摘し、それを許し続ける最高裁を次のように 批判しているというのだ。 「・・・選挙区割りとか議員定数は議員立法で改正されることが多いが、改正に かかわるのは当選した議員たちだ。そうした議員立法を最高裁判所は「国会の 立法権の裁量の範囲」として認めてきた。その結果、有力議員の選挙区割りが 変わる事は現実には起こらない。地盤は極めて安定し、引退する時は後継ぎ として二世、三世、四世議員がどんどん出てくる・・・世襲議員には、明らかに 勉強不足、資質欠如、経験不足・・・が少なからずいます。それは、日本の進路を 的確に決定できる能力のある政治家の層が薄くなっていくことに結びつく・・・」 元最高裁判事が、違憲判断を避け続けてきた最高裁を批判し、歴代の首相の殆ど が世襲議員であるこの国の進路を憂う、これは紛れもなく驚愕の書である。 私は3月23日のメルマガ第0113号で、日米同盟の正体を暴いた元外務官僚 孫崎享氏の新刊書を驚愕をもって紹介した。今度は福田博元判事だ。 孫崎氏といい福田氏といい、官僚人生の真ん中を歩いてきた人たちだ。その人 たちが、いくら現役を離れた後であるといっても、政府中枢の政策や判断をここ まで公然と批判するようになったのだ。 いままでには考えられなかった事だ。何かが変わり始めている。日本は そこまで危機的状況になっているということではないのか。このおかしい状況を 放置していけば日本の将来は危ういと皆が感じるようになってきたということ ではないのか。 この動きが広がっていく事を期待する。そこに日本の将来がかかっている。強い 人たち、権力側にいた人たちが立ち上がらなければ、この国を変える事はできない。

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