天木直人のメールマガジン ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月23日発行 第0113号 日米同盟の正体を明かした外務省OB 驚愕の本がまたひとつ出た。元駐イラン大使であり現防衛大学校教授の 孫崎享氏の手による「日米同盟の正体 迷走する安全保障」(講談社現代新書) という近刊書である。 この本の何が驚愕なのか。それは、日本を守ってくれているはずの日米 安保体制(日米同盟)が、国民の知らない間に、完全に米国の戦争協力の道具に 変えられてしまっている現実を白日の下にさらしたからだ。 この本の何が驚愕なのか。それは、国会承認条約である日米安保条約が、 2005年10月29日の「日米同盟:未来のための変革と再編」という 一片の行政合意で、いとも簡単に否定されてしまった事を国民に教えたからだ。 法秩序の下克上が起きていたのだ。 この本の何が驚愕なのか。それはもはや米国にとっての唯一、最大の脅威は、 中東の「テロ」であり、これからの日米同盟とは、米国の「テロ」との戦いに 日本がどうやって協力させられていくかという事でしかない、その事を明らかに したからだ。 これらの指摘は、なにも目新しい事はない。私が繰り返して指摘してきた事だ。 左翼イデオロギー政党、政治家や学者、有識者がさんざん警鐘を鳴らしてきた事だ。 しかし官僚組織からはじき出された私が何を言っても影響力はない。左翼政治家 や学者、有識者がどんなに正しい事を言ったところで、権力側は相手にしない。 権力側についたメディアはまともにとりあげない。だから国民はいつまでたっても 本当の事に気づかない。 しかし孫崎氏は違う。私の3年先輩に当たる孫崎氏は、外交官として任期を まっとうした元外交官だ。国際情報局長という幹部職を経歴し、駐イラン大使を 最後に退官した後は、防衛大学校へ天下って今日に至っている人物である。 その経歴を考えるとまさしく権力側に身を置いて、権力側について飯を食って きた要人である。日本政府の安全保障政策を担ってきた一人である。 その彼が、日本の国是である日米安保体制の正体を明らかにし、もはや日米同盟 は空洞化していると公に宣言したのだ。これを驚愕と言わずして何と言うのか。 おりしも今日3月23日の各紙は、22日に神奈川県横須賀市で開かれた 防衛大学校の卒業式の模様を報じている。そこで麻生首相は、相も変わらず 日米同盟の強化を訴えている。その光景を報じる写真の中に、あのブッシュの 戦争を支持し、この国をブッシュの戦争に差し出し小泉元首相の姿がある。 来年2010年には日米安保条約改定50周年記念を迎え、政府、外務省の手に よって盛大な式典が行なわれようとしている。日米同盟万歳の合唱が繰り返される。 欺瞞だ。孫崎氏のこの著書が、文字通り「日米同盟の正体」を正しく国民に 知らせるきっかけになることを期待する。日本の政治が日米同盟の呪縛から解放 され、国民が、自主、自立した安全保障政策を論じる日が来る事を期待する。 その時が政権交代とともに訪れる事を期待する。日本の夜明けの足音が、 かすかに聞こえてくるような気がする。

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