天木直人のメールマガジン ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月15日発行 第0104号 放置されている不正診療請求の思う 私のところには読者から様々な情報提供や要望が寄せられる。情報提供に ついては参考にさせてもらっており、貴重な情報についてはこのメールマガジン で読者に知らせて共有する時もある。 しかし特定のテーマについて取り上げて欲しいというものや、内部告発の類に ついては原則として取り合わない事にしている。自分の専門外の事や、事実確認の 出来ないものについて、軽々しく書くわけには行かないからだ。自分で調べて書く という余裕は、今の私にはない。 最近寄せられたメールのなかで、「医師による診療報酬の不正請求が横行して いるので、それを取り上げて欲しい」というものがあった。それが具体的に指摘 していたのは、架空の患者名を使って医療費を不正要求している医師がいるという ものであった。 そんな不正が行なわれているとは俄かには信じがたいと思いながら読み 過ごした。やがてその事についてはすっかり忘れてしまっていた。 ところが3月14日の朝日新聞の特集記事を読んで驚いた。そこには、 診療報酬の不正請求を監査するはずの医療Gメン制度が十分機能していない という事が書かれていた。 その記事によればこうだ。病院や診療所による不正請求の疑いについて 情報が寄せられると、医療Gメンと呼ばれる指導医療官が調査に動き出す。 これは1981年に設けられた制度で、政府によって各都道府県にある厚生局 の事務所に指導医療官が配置される事になっている。しかし現実は十分に機能 していない。 その理由の一つは、医療Gメンになるには医師か歯科医の資格が必要である が、医療Gメンの収入は通常の医師の収入より低くなるので、なり手がいない という。いまだに17の都道府県で医療Gメンが不在であるという。 もう一つの理由は、医療仲間がGメンになるわけだから、追及が徹底しない、 どうしても手心を加えてしまうという事だ。医療のボスが悪事をしていても、 下っ端医師にそれが追及できないのは世の常だからだ。 これでは不正請求が放置される事になるのは当たり前だ。おそらく、様々な 形の不正請求が行なわれているに違いない。私の手元に寄せられた医師の架空請求 はその一つに過ぎないのだろう。 不正請求の横行を厚生労働省が知らないはずはない。本気で取り締まろうと いう気がないのだ。 そう思っていたら3月15日の読売新聞が一面トップで農水省が組織的に 「ヤミ専従」を隠していたとスクープしていた。ヤミ専従とは公務員が給与を もらいながら勤務時間中に組合活動をすることである。農水省は組合側に調査の 日付を教えて、無許可で組合活動をする職員がゼロになるまで調査を繰り返して いた、という。政府と組合が結託した「ヤミ専従隠し」である。 今更嘆いたところで白々しい。この世は犯罪隠しで溢れている。しかもそれが 関係者の間の組織的共犯となっている場合が多い。 小沢事件が問題とされるのは、政治家とカネの問題が横行しているからでは ない。すべてを公平に摘発して悪を根絶する気がない事にある。検察の正義が 等しく実現されていない現実にある。要するに一罰百戒で終わってしまうところが 問題なのだ。小沢事件の場合はそれが政治がらみだから更に問題が深刻だ。 その陰で、いつも割りを食うのは、何の組織も、つながりもない、孤立無援の 多くの国民だ。脱税の余地のない善良な納税者である。この世の中の無数の弱者 たちだ。 彼らこそ最大の犠牲者だ。組織も仲間も持たない、従って頼る有力者や組織 を持たない多くの国民たち。彼らを救う事こそ正義であり、政治の究極の目標で なければならない。

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