天木直人のメールマガジン ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月14日発行 第0103号 江田憲司が語る安全保障政策に注目したい 官僚から政治家に転じた者は山ほどいるが、そのような政治家は、極少数を 除いてはろくなものはいない。その極少数の一人として私が注目してきたのが 江田憲司である。 彼は橋本龍太郎首相の秘書官を経験したほどの通産官僚の出世頭だった。その 彼が官僚人生の頂点の時に官僚人生から決別し政治の世界に入った。そして今 本気になって官僚支配打破に挑んでいる。稀有な元官僚だ。 彼は、自ら認めるように、自民党や民主党のトップレベルから誘われてきた にもかかわらずあえて無所属を貫いて孤軍奮闘している。そのことも私が彼を 評価する理由である。 なぜ無所属にとどまっているのか。彼は言う。政策の根本のところで一致しない 者の集まりはいずれ行き詰る。だから、今の自民党にも民主党にも期待できない。 政界再編が正しく行なわれ、政策の一致する者たちが新たな政党を作って競い合う べきだ、と。その主張もまた正しい。 問題は、彼の考える「根本のところで一致する政策」とは何かという事である。 それを江田憲司が自らの口ではっきりと語っている記事を見つけた。 季刊雑誌にSIGHTというのがある。音楽評論家で雑誌編集者でもある渋谷 陽一という人物が、自らの会社ロッキング・オンから発行している政治雑誌である。 今発売中の春季号に江田憲司のインタビュー記事が載っていた。 彼は言う、 「・・・結局、内政問題というのは五十歩百歩なんですね。大きな政府だ、 小さな政府だ、自由主義だとか、ナントカ言ったって、真実は真ん中にあるので、 現実はそんな白黒はっきり分けられないんですよ。多少の違いは出るにしても、 そんな大きな違いじゃない。大きな違いはやっぱり外交安全保障だと私は思うん ですね。これについては自民も民主もぐちゃぐちゃだから・・・」 よくぞ言ってくれたと思う。この点こそ私が言いたかった事であった。 国内問題は結局のところどの政党も国民の生活を重視しなければならなくなって きている。最後は同じところに落ち着かざるをえないのだ。 しかし外交安全保障政策はそうではない。意見の違いは大きい。そして自民も 民主も、まともに安全保障政策を考え、論じる者が、あまりにも少ない。もちろん 護憲政党の安全保障政策などは無きに等しい。 要するに、この国にはまともな安全保障政策に関する論議が欠落してきたので ある。それを真剣に議論する時が来ているのである。 それでは江田憲司はこの最重要問題である外交・安全保障についてどう考えて いるのか。それを示すのが次の興味深い言葉である。 「・・・やっぱり集団的自衛権を認めるかどうか、そこなんでしょう。日本の 国民や国土を守るという点についてはコンセンサスができている・・・しかし、 イラク戦争を支持して自衛隊を派遣したような、集団的自衛権の行使は反対だ、 というのが私の立場です。 私は若手官僚の頃、集団的自衛権を行使して普通の国になれと思っていました。 だけど橋本政権で官邸の中枢に入り・・・日米間の新しい安全保障宣言、それに 続くガイドライン法(周辺事態法)の策定などに参画する過程で、今の政治家の ガヴァナビリティのなさ、自衛隊のオペレーション能力のなさなどを体験的に 知ってしまったんです。 仮に、百歩譲って集団的自衛権の行使を認めるとしても、今の段階で集団的 自衛権を行使して、米軍とともに戦うなんてことはとても出来ない。憲法理論 とか理屈以前の問題で、そんな事を議論してもしょうがない。インターオペラ ビリティ(相互運用性)などありませんよ、今の自衛隊に。一緒に戦うと 言ったって米軍に忌避されるだけです。しかも何も今更日本が軍事的に貢献して、 他の200カ国近い国連加盟国と同じことやったって限界効用もない・・・ どんな小国でも持っているような集団的自衛権を行使して今さら軍事的に 貢献しても、「ああ、そっか」っていうぐらいの話ですよ・・・そうじゃなくて 日本に求められているのは、日本の得手の分野でしっかりと世界に貢献する ことでしょう・・・ 日本ではまったく責任も問われず、イラク戦争の総括もされないから政治家は いい加減になるんです。私は集団的自衛権の観点から、アフガン戦争にもイラク 戦争にも一貫して反対しました・・・後方支援だって集団的自衛権の行使ですよ。 日本にとって戦後はじめての事だったのに、小泉流の詭弁で簡単に通してしまった。 イラク戦争なんて国際的な大犯罪だと思いますよ・・・そんなものに賛成した 政治家は、懺悔して辞めるべきだと思いますよ・・・」 元官僚出身で、元自民党の政治家で、ここまで自分の外交・安全保障政策を 語った政治家を私は知らない。江田憲司とは是非一度外交・安全政策について 話し合ってみたいものだ。 そして憲法9条こそ最強の安全保障政策だと彼が考えるようであれば、私は どの政治家よりも彼を支持したい。官僚支配打破と平和外交を旗印に、思いを 同じ政治家を集めて新党を結成してもらいたい。その必要性が今まさに求められて いると思う。

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