天木直人のメールマガジン ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月11日発行 第0099号 いまこそミサイル戦争の愚かさを国民は知るべきだ 私は3月1日のメルマガ第0080号で、北朝鮮とのミサイル戦争の危険性 について書いた。 「北朝鮮が実験を強行すれば撃ち墜す」と米国が宣戦布告すれば、北朝鮮が 「やれるものならやってみろ。即時の対応打撃で応える。戦争になる」と応じる。 人類が始めて経験するミサイル戦争の危機ではないのか。本来ならば非常事態 であり、日本国民の安全の最大の危機である。それにもかかわらず、いくら政局 が混迷しているからといって、この奇妙な無関心さは一体どうしたことだろうか。 これは米朝間の駆け引きであって、そんなことは起こらない、とでも言うの だろうか。 それとも、まさかそういう事は起こらないだろう、という根拠なき希望的観測 で事の推移を見守っているのか。 あるいは単純に、米国に追従してきた日本としてどう対応していいか分からない、 対応のしようがない、という事なのだろうか。 おそらくそのすべてが混じりあっているのだろう。 そのような思考停止の状況の中で、いや思考停止だからこそ、政府もメディアも、 そして右翼世論も、やれ安保理決議違反を許すな、人工衛星でもミサイルでも 同じだ、日本に飛来したらアメリカから導入したばかりのミサイル迎撃システム で撃ち落すのは当然だ、などと勇ましい発言を繰り返す。これは笑止千万だ。 安保理決議1718号違反かどうかについては中、ロはそれを認めていない。 しかも安保理決議は、違反すればすぐにそれを撃ち墜せるなどとはどこにも書い ていない。テポドン2号は長距離弾道ミサイルであって日本向けではなく米国 向けだ。それを迎撃するは明らかな集団的自衛権の行使だ。政府の解釈をもって しても憲法9条違反だ。 こうして、少しでも冷静に考えれば国際法や憲法違反の疑義がある迎撃ミサイル システムの発動であるが、そんなこと以前に、高いカネを払って米国から買わされた 日本のミサイル迎撃システムに重大な矛盾があるのだ。 これを見事に白状したのが3月11日の読売新聞の「解説スペシャル」である。 防衛問題専門の勝股秀通解説委員と政治部記者遠藤剛記者の記名入りのその記事は、 まじめな顔でこう書いている。 ・・・(テポドン2号は)日本列島のはるか上空の大気圏外を通過して太平洋上 に落下する可能性が高い。現行法上は、日本に被害が及ぶ場合のみ、自衛隊は 警察権に基づいて危険を除去することができる・・・このため、今回の北朝鮮の ミサイルに対して・・・発射された弾道ミサイルの航跡を追尾し、落下地点など を割り出すことだ・・・(しかも)日本が導入したMDシステムの能力で迎撃 できるのはノドン級まで(で)、ノドンの最高高度は地上150キロ前後。 テポドン2が正常に飛行すれば最高速度は地上600キロに達し、速度もノドンに くらべればはるかに速い。SM3(イージス艦からの迎撃)を発射しても ミサイルの高度まで届かず、速さにも対応することはできない・・・ なんという間抜けなことか。これに対する海上自衛隊幹部の反論がふるって いる。北朝鮮が発射に失敗し日本に落下する危険もあるから、その時は速度も 落ちるので今度は地上に配備したPAC3で迎撃できるという。 ところがこのPAC3でさえ欠陥商品であることを読売新聞の記事は白状 している。「PAC3は防御範囲が半径十数キロと狭く、現在のMDシステムは 発展途上であり過信は禁物だ」、と。 これが現実なのである。ミサイル戦争を戦うことなど日本はできない。政府、 防衛省は日本国民を守る事をまじめに行なっていない。壮大な税金の無駄遣い である。

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