天木直人のメールマガジン ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月7日発行 第0089号 小沢秘書騒動の山は越えた 突然の小沢秘書逮捕から始まった壮絶な権力闘争は、まさしく政権交代 闘争の最終章だ。もちろんその結末はまだわからない。しかし希望的観測を 交えて今の時点での私の考えを書いてみたい。 それは一言でいえば、覚悟を決めた小沢一郎が勝った、ということだ。 もちろん検察官僚の意地がある。自民党の生き残りをかけた国家権力濫用が ある。権力に迎合したメディアがある。事態は秘書の逮捕や小沢の意見聴取、 代表辞任という流れではある。 しかし例えそうであっても、民主党への政権交代への流れが変わらなければ 小沢民主党の勝ちだ。小沢は自分の政治生命と引き換えに政権交代を実現した 事になる。私はそういう流れになると思う。 そうでなくて、小沢民主党代表辞任とともに民主党がガタガタになり、 世論の支持を急激に失い、政権交代実現が雲散霧消すれば、この国は暗黒の 世になる。国家権力の国民弾圧が加速し、対米従属が固定化される。憲法9条 は捨てられる。絶対にそうさせてはいけないという希望的観測を交えて、 私は以下の通り小沢民主党の勝利を予言する。 小沢秘書の突然の逮捕の直後に、私はブログとメルマガで緊急メッセージ を配信し、小沢代表は直ちに代表を辞任して国策捜査との闘いに全力を傾注せよ と訴えた。すかさず多くの反応が寄せられた。反応は賛否両論であった。 小沢民主党を何故擁護するのかという意見の一方で、小沢代表は絶対辞職しては いけない、代表にとどまって闘ってこそ民主党を救えるのだ、として小沢辞任を 求める私の腰砕け振りを激しく攻撃するものがあった。 私は小沢民主党による政権交代論者だから、反小沢サイドの意見はここでは 問題外だ。私が傾聴に値すると思ったのは「小沢代表は辞任してはいけない」と いって私の弱腰を批判する意見であった。 その意見と私の意見は、「政権交代を妨げる卑劣な国策捜査と断固闘うべきだ」 という意味で同じであるが、異なるのは状況判断であり、戦略の差だ。私は 民主党を巻き込んで闘うのは負けた時にあまりにも打撃が大きい、たとえ小沢代表 が潰されても民主党に及ばない形で闘うべきだ、という考えたのだが、その 批判者は、小沢を代表から外すのが敵の大目的であり、小沢が代表を辞めると 民主党は崩壊する、ここは民主党代表として断固闘うしかない、というもので あった。その後の進展を見ると私の戦略は甘かったかもしれない。というよりも 小沢一郎の気迫と覚悟が私の慎重戦略を上回ったようだ。 小沢代表の最初の記者会見は言い過ぎだったと思った。しかしあれは小沢氏 が政治生命をかけた検察との闘いを宣言した記者会見だったのだ。あの迫力が この闘いの帰趨を決めたと思う。 その思いを私は二回目の緊急メッセージを書いた。そこまで小沢氏が決意し、 民主党もそれで結束できるのなら、もはや引き返せない。これは自民党から 仕掛けられた政権交代潰しの最終闘争であるととらえ、政権交代を賭けた死闘を 闘い抜くほかはない、がんばれ、と書いた。 そしてこのメルマガを書いている3月7日朝の時点において、どうやらこの 壮絶なバトルの山は越した、小沢民主党が勝つ事になる、私はそう思い始めた。 新聞やテレビが流す報道と、ネット上に流れる玉石混合の情報を総合して下した 私の見立てはこうだ。 小沢氏は、法的に最後まで闘ってでもこの問題に白黒をつけると二回目の 記者会見(3月6日正午)で繰り返した。そこには覚悟と共に余裕も見られた。 一回目の表現が言いすぎなら訂正すると軟化した。それは譲歩ではなく、 これから始まる長い戦いを勝ち抜くという決意を改めて示したのだ。たとえ 国策捜査で負けても、ただでは負けない、という覚悟すら感じた。清廉潔白で なくても皆が同じような事をやって見逃されてきたのに、ここで自分だけを 標的にされてたまるか、という「正しさ」を検察、自民党に突きつけたのだ。 言い換えれば、メディアが今後小沢不利のどのような情報を流しても、それが 法的に立件できるほどしっかりしたものでなければ、その手法に対する批判も また強まっていく。そんな記事ばかりを流し続けられるか、という事である。 私は検察官僚は追い込まれつつあるような気がする。ある情報によれば 西松建設との政治献金の仕組みが出来たのは大久保秘書の前任者の時代から であり、その秘書は今度の選挙で自民党から出馬予定だという。とんだ茶番だ。 「自民党には捜査は及ばない」と失言した政府高官の問題も、大失敗だ。 政府と結託している大手新聞、テレビは、知っていながら名前を明かさないが、 3月7日の日刊ゲンダイは漆間官房副長官だとあっさりばらした。元警察官僚 (元警察庁長官)である。検察官僚と警察官僚が自民党と結託して小沢民主党 つぶしをやっていると認めたようなものだ。 それに、自民党の大物代議士たちがつぎつぎと資金返済を表明し出した。 小沢氏と同様の立場に追い込まれつつある。政治資金規正法はザル法である。 皆が工夫をして合法化を装ってきたのだ。調べればほこりは出る。知らなかった、 記載訂正すればいい、というのであれば、小沢と同じ事になる。 西松検察の犯罪をいくら暴いても、それは西松側の犯罪だ。暴けば暴く ほど関係者が増えていく。小沢と西松だけの関係を特殊な犯罪であると主張 する事は無理がある。検察関係者もそれを認めだした。 最後の決め手は世論がどう判断するかだ。すでに一部世論調査が出ている。 これから一斉に出てくる。当然その数字は小沢民主党に不利な数字となる。 しかし小沢民主党が大きく支持率を下げない限り、麻生自民党の支持率が大きく 増えない限り、国策捜査はうまくいかなかったということだ。 検察はもはや落しどころを考え始めたのではないか。名誉ある撤退を模索して いるのではないか。メディアの騒ぎも心なしに静まりつつあると私は感じる。 要するに山は越したのだ。終わったのだ。 果たして小沢民主党政権が出来るのか。それが出来たら単なる政権交代に とどまらず、国家権力の移譲が行なわれる。主客逆転が起きる。それが今度の 事件で決定的になった。検察官僚は震え上がる事になる。 今度の騒動で明らかになった事がいくつかあった。一つは日本共産党が 小沢批判をしたことだ。戦前の言論弾圧や拷問などで国策捜査の卑劣さを知って いるはずの日本共産党が、自分たちが選挙で票を伸ばせるチャンスだとばかり、 小沢民主党代表を批判した。正義者ぶって組織防衛を最優先した。私の 日本共産党不信は決定的になった。 もう一つは前原誠司や渡辺周などが小沢国策捜査発言を批判したことだ。 政治生命をかけて闘っている身内の党首を批判したのである。私が小沢なら 決して許さないだろう。もし小沢民主党が政権をとったなら、小沢の下で 国策捜査に闘った連中と、距離を置いた連中の間の亀裂が決定的になる。 距離を置いた連中は民主党を出るしかなくなった。 残る問題は、政権交代に闘って傲慢になるだろう小沢一郎とその民主党が、 果たして国民にとって正しい政治を行なうかどうかだ。日米関係をどうするかだ。 外交、安全保障政策をどうするかだ。保守大連立に走らないかだ。 しかし私はそれにはあまり関心がない。権力者はすべて悪をなすというのが 私の立場であり、小沢政権が実現すれば小沢政権の誤りを厳しく監視していく 事になるからだ。 いずれにしても自公政権を国民の手で倒すことがまず先決だ。その後の政治 がどのように展開していこうとも、国民の声がより強くなって政治を監視できる ようになっていけばそれでよい。政治が正しく監視されていれば、政治などに 関心を持つ必要はない。政治は所詮人生の重大事ではない、それが私の考えだ。

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