天木直人のメールマガジン ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月4日発行 第0085号 ナイ次期米駐日大使就任報道の迷走 早々と内定が報じられたジョセフ・ナイ次期米駐日大使の人事が、一向に 決まらない。ヒラリークリントン国務長官の訪日の際も、麻生首相の訪米の際も、 その姿はなかった。 私の手元にある記録によると、オバマ新政権の米駐日大使としてジョセフ・ ナイハーバード大学教授(元国防次官補)が内定したといち早く書いたのは 1月8日の朝日新聞夕刊であった。「オバマ新政権がナイ氏を起用する方針を 固めたことが7日明らかになった」と報じ、ナイ氏の下で国防次官補代理を つとめたカート・キャンベル氏が国務省東アジア・太平洋担当次官補に起用 されることとあいまって、日本に手厚い配慮をした布陣だ、などと歓迎していた。 翌日の各紙も、書き方は微妙に異なっていたが、同様の記事を次々と掲載し、 あたかも駐日大使はナイ氏で決まりであるかのような印象を日本の読者に 与えていた。 ところが1月16日の日刊ゲンダイで春名幹男名大教授(元共同通信 ワシントン支局長)はこれを否定していた。すなわち、私の情報源ではまだ 決まったわけではない、打診されたのは確かだがイエスともノーともどっち つかずの返事をした、ナイ氏の妻がなぜか「ノー」と言ったという話もある、 などと書いていた。 春名氏は更に、ナイ氏を知日派と決めつけて日米同盟重視の人事だとする のはおかしい、96年の日米安保再定義に関わったのは事実だが、日本の政治 に詳しい学者ではない、と書いていた。 その後読売新聞が1月25日の新聞で、「ナイ氏が駐日大使に就任すること が24日内定した。月内にも正式決定される見通しだ」と断定し、「日本重視」 のメッセージだ、などと歓迎した。 週刊現代1月31日号では国際ジャーナリスト堀田佳男氏が「国際ニュースの ソムリエ」の中で、良識ある知日派が次期駐日大使に決まったことは日本に とって悪いことではない、などと書いていた。 しかし、その後一向に正式決定がなされていない。そう思っていたら最近発売 された月刊誌リベラルタイム4月号において、「夫人の猛反対」で難航する ナイ氏の駐日大使就任、という次のような記事が目にとまった。 ・・・ナイ氏の夫人はボストンで画廊を経営しているため、夫の赴任先が ワシントンぐらいだったら認めるが、それ以上だったらダメといって、 OKを出していない・・・ナイ氏の駐日大使就任構想は幻になってしまう 可能性がある・・・ なるほど、そういうことか。しかし、それさえも本当かどうかはわからない。 別の情報では、ナイ氏自身が駐日大使のポストに魅力を感じていない、ワシントン の要職であれば話は別だ、というものもある。 そういえばシーファー大使夫人も日本は嫌いだったらしい。朋友ブッシュに 頼まれてシーファー大使は日本に赴任したが、一切日本に溶け込もうとせず、 ひたすらブッシュ政権の要望を日本につきつけた。ブッシュ政権の終わりと共に、 その直前の1月15日にそそくさと帰任した。 これが日米同盟関係の実態だ。駐日大使の人選の情報がつかめず右往左往する 日本と、駐日大使のポストなど魅力を感じない米国、それが「最重要な日米 同盟関係」の現実である。

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