天木直人のメールマガジン ─反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説 2009年3月4日発行 第0084号 日米安保条約は無効だという訴訟 このメールマガジンを購読している賢明な読者ならお分かりであろうが 私は自分の意見を押し売りする目的で書いているのではない。読者とともに 世の中の真実に迫ろうとしているのだ。 あらゆる物事には議論がつきものだ。どちらが正しいかを客観的に判断する ことは容易なことではない。本当に難しいのは皆が納得する答えを出す事だ。 しかし、少なくともそのような議論の大前提として、事実、真実が明らかに されなければならない。共通の基盤が共有されてはじめて建設的な議論が なり立つ。 もうひとつは議論をする目的が何かという事だ。世の中の論争を見極める時、 その目的が正義の実現から行なわれているかどうかを見極めてもらいたいからだ。 世の中の議論の多くは、議論のための議論、保身のための議論、自己宣伝の為の 議論、利害が絡んだ議論、面子のための議論など、その目的は色々ある。だから その目的を見抜かなければならない。私は正義の追求のために議論をする。それ 以外の議論はそれぞれの思惑で勝手にやってくれということだ。 絶対的な善というものがこの世にあるかどうかは知らないが、限りなくそれに 近づこうとして議論をする。 さて、今日のメールマガジンだが、3月3日の日刊ゲンダイに斉藤貴男が 重要な指摘をしていた。なぜ新聞は日米安保条約の無効訴訟が行なわれている事 を書かないのか、国民に知らせないのか、という問題提起である。 いうまでもなく日米安保条約は戦後の日本の国の在り方を規定する「国是」 である。一つの条約が、「安保体制」という言葉で象徴されるように、我々の 生活の隅々まで縛り付けているシステムとなっている例は日本ぐらいだろう。 それほど大きく、異常な条約である。 その安保条約は1960年に岸信介首相が改定を強行採決して永久化、固定化 された。 ところが、その条約は岸信介が米国政府から助命され、買収されて署名した ものだからはじめから正統性はなかった。日米安保条約は無効ではないか。そう 長岩均(56)という国民が訴えている。 岸首相と米国の結びつきの闇についてはこれまでに多くの資料で明らかに されているが、その最近のものがニューヨーク・タイムズのティム・ワイナー 記者が発表した一冊の著書である。日本でもその翻訳が「CIA秘録」上下巻 (文芸春秋)として昨年11月に刊行されている。 もちろんこれらの主張の信憑性を判断する権限は誰にもない。最後は権力者が 決める事になる。司法もまた権力に従うのが現実だ。しかし少なくとも安保条約 に正統性がなかったのではないか、という疑義があることが国民に知らされる ことになる。この疑惑に気づかない国民はまだまだ多い。 司法は政治的判断を避けるであろうが、少なくとも何らかの調査をし、判断を 下さなければならない。一切の判断を避けて訴訟を門前払いするとしたら、 それはそれで大きな問題提起をみずから国民の前で行なう事になる。 このように考えた時、日米安保条約無効訴訟はまさしく新聞が大きく取り上げ て国民に周知すべき訴訟である。 不思議な事にマスコミは一切報道しない。斉藤貴男はそれを指摘しているので ある。その記事によれば第一回口頭弁論は3月4日午前10時に東京地裁631号 法廷で行なわれるという。この原稿を書いているあと一時間後だ。 果たしてそれについての報道がなされるか。どこの新聞が、どのメディアが それをどのように報道するか。私は注意深く見守る事にする。

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