… … …(記事全文3,797文字)マイケル・サンデルは、ハーバード大学で長年政治哲学を教えてきた学者で、日本では「ハーバード白熱教室」という講義がNHKで放送され、一躍知られるようになった。
彼の著作『これからの「正義」の話をしよう』が世界的ベストセラーとなり、日本でも100万部を超える読者を得た「正義とは何か」を問う伝道者というべき存在だ。
サンデルは「保守的な価値観(共同体、道徳、伝統、現場の尊厳)を深く理解し重んじる、左派・社会民主主義的な思想家」だ。
だからこそ、従来のリベラルに違和感を感じる人々と、グローバリズムに反対する保守派の両者から、評価される存在となっている。
彼が「能力主義の暴走」を論じたのは、2020年に出版された『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(原題 THE TYRANNY OF MERIT: What's Become of the Common Good?)である。本書のテーマは一言でいえば「能力」そのものへの疑義である。
サンデルは能力主義に焦点を当てながら、不平等が容認される格差社会がいかに生み出され、そこで積もった人々の不満がいかにトランプ大統領の誕生につながったのかを解き明かしていった。
「努力と才能さえあれば、出自に関係なく誰でも成功できる」というアメリカン・ドリームの理念は、裏を返せば「成功しない者は努力が足りないからだ」という残酷な自己責任論と表裏一体になる。
この能力主義の夢は、実際には「勝者」と「敗者」の間に前例のない分断をもたらしているというのが彼の診断だ。
とりわけ鋭いのは、勝者側の心理の分析だ。
後半はいよいよ、サンダルが日本に関して言ったことに言及。
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