… … …(記事全文5,807文字)デヴィッド・グッドハート(David Goodhart 1956~)と言う人物がいる。
イギリスのジャーナリストであり政治思想家だ。
彼はオックスフォード大学出身でリベラル系高級誌の編集長を務めた、典型的な「エリート階層」の出身だ。
しかし彼は、先進国の民主主義社会で深まる対立の原因が従来の「右派対左派」ではなく「文化的な価値観の違い」にあることに着目し、2017年の著書『The Road to Somewhere』で(どこでも族)」と「サムウェア族(ここだけ族)」という分断の枠組みを提起した。
デヴィッド・グッドハート
https://www.chartwellspeakers.com/speaker/david-goodhart/
The Road to Somewhere(どこかへの道:ポピュリストの反乱と政治の未来)』
https://amzn.to/4wkunEk従来の右派・左派という対立軸ではなく、アイデンティティや価値観の拠って立つ場所の違いに着目した点に特徴がある。
エニウェア族(Anywheres)とは、高学歴で都市部に住み、世界中どこででも生きていけるスキルや肩書を持つ人々だ。全人口の2割程度を占め、個人の自由や多様性、グローバル化や移民の受け入れを積極的に評価する。
彼らにとって環境の変化は新たなチャンスでもある。
一方のサムウェア族(Somewheres)は、特定の実情や地域に根を張り、伝統的な生活習慣を守って生きる人々だ。
人口の半数近くを占める多数派であり、地元への愛着や家族・国民としての強い繋がりを大切にしている。急激なグローバル化や大量の移民流入に対しては、自らの生活圏や文化が脅かされるという強い不安を抱き、変化を喪失として捉える。
グッドハートの主張の中心は、現代政治やメディア、ビジネスの決定権がエニウェア族の価値観に偏重していることへの警鐘である。
自由貿易や移民政策、過度な大学進学率の推進といった政策は、エニウェア族には恩恵をもたらしたものの、サムウェア族にとっては地域社会の衰退や労働条件の悪化を招いた。
イギリスのEU離脱や各国のポピュリズムの台頭は、決して単なる無知や排外主義の表れではなく、声を無視され続けてきたサムウェア族による健全な反逆であると彼は分析している。
そして社会の分断を修復するためには、移動の自由や能力主義ばかりを偏重する姿勢を改め、地域コミュニティや実業、国民国家という枠組みの価値を再評価し、双方のバランスを取り戻すことが不可欠であると訴えている。
これは面白い分析で、私も以前の記事で、グローバリストとは、世界をまたにかけて仕事ができる芸術家やビジネスマン、そしてその方が儲かる人たちも含まれると指摘したが、その考えと同じである。
また、これはディアスポラとマジョリティーの構造とも似ている。
なぜなら各国に散在するディアスポラとは、華僑やユダヤ人、もしくはインド人のように世界に散らばる友人、知人や親せきの絆を駆使してビジネスを行っているが者が多いが、彼らはまさにエニウェア族に他ならない。
エニウェア族は、世界をまたにかけて商売をする人たちのため、各国の伝統文化とは面倒な障壁でしかないのだ。
例えば、ヨーロッパには、キリスト教的な安息日の伝統に由来する「日曜日は家族や地域と過ごし、商業活動を休む」という社会規範がある。ドイツの店舗休業法などがその典型だ。
しかし、エニウェア族は、24時間365日グローバルに資本と物流を回したいので、需要があるのに店を開けられない状態は「著しい経済損失」であり、参入障壁や非効率そのものと考える。
日本の例を出すと、シンプルな例でいうとご飯に箸を立てないという文化があるだけで、エニウェア族には厄介な文化となる。なぜなら、イチイチ、各国の伝統文化を覚えないと相手に対して非礼となってしまい、商談がうまくいかなくなる可能性もあるからだ。
また、日本が単一民族であることも厄介に映るはずだ。
多くの民族が居住する国の方が、自分と同じ民族や国の人の居住するエリアを通じてコネクションを作りやすいからだ。
まさに華僑や、インド人、ユダヤ人が世界各国にコミュニティー作っている環境こそが、彼らにとって活動しやすい環境なのだ。
だから、エニウェア族は、多文化共生が大好きだ。
そしてできれば各国の伝統文化を否定し、世界統一的な規範を望む。これがキャンセルカルチャーを後押しする大きな原動力にもなっている。
これは左翼にとっても好都合な考えであり、左翼が便乗してくることになる。つまり、左翼を駆逐するだけでは、このキャンセルカルチャーの動きは無くならないことを意味する。エニウェア族と日本の未来を解き明かす本論へ!
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