… … …(記事全文5,126文字)近年のアジア情勢を俯瞰すると、防衛とエネルギーの両面において、日本が事実上の「調整役」「主導役」として振る舞う場面が増えている。
防衛装備品輸出の大幅な緩和、とりわけ致死的兵器を含む輸出解禁の動きや、フィリピン、インドネシア、オーストラリアへの艦艇およびミサイルの供与、日・フィリピン部隊間円滑化協定の実効化。
さらには、自由で開かれたインド太平洋構想の下でのミニラテラル、すなわち志を同じくする少数国間の緊密な連携の推進や、アジアエネルギーセキュリティセミナーの主催にいたるまで、これらを連ねると、日本が地域秩序の下支えを担い始めている現実は否定しがたい。この状況を、かつての言葉を借りて大東亜共栄圏、あるいは新・大東亜共栄圏と呼びたくなる心理は理解できる。(私も呼んだことがあるが)
経済と安全保障の相互連結を日本がハブとなって進める構図は、確かに戦前の理想を現実的にアップデートしたものに見える。しかし決定的に異なるのは、これが日本単独の思惑によって構想された秩序ではないという点だ。
むしろ、真空が生まれつつある空間を、日本が埋めざるを得なくなっている、それが実態である。では、その真空を生んでいるのは誰か。
答えは明白だ。
アメリカ合衆国である。だが、それはアメリカが内向きになったからではなかった。
より正確に言えば、アメリカは外向きであり続けたいが、体力が追いつかなくなっているのだ。トランプ政権第2期の国家安全保障戦略や国家防衛戦略を冷静に見れば、世界を三つの階層で捉えていることが分かる。
第一は本土と直接連動する西半球防衛、
第二がインド太平洋、
第三がヨーロッパだ。
大西洋同盟の象徴であるヨーロッパを三番手に置いたという事実は、同盟国が多く自律性が比較的高い地域と見なしているという点もある。
自分たちだけで、できるだろ?という考えだ。
強力な軍事統合体であるNATO諸国に従来以上の負担、すなわち自立を促し、欧州同盟国に主力防衛を委ねる余地があるからこそ、自らは最大の敵国、中国との対峙に集中する構図だった。一方で、アメリカにとってアジア、すなわちインド太平洋は、世界GDPの半分以上を占める経済重心であり、中国という唯一の同等の敵国が存在する唯一の戦域である。
アメリカがアジアに重きを置く本当の理由は、価値観でも理想でもない。
シーレーン依存の貿易、半導体や重要鉱物のサプライチェーン、そして台湾有事のリスク。これらを失えば米本土経済が致命的な打撃を受けるという、冷徹な地政学的理由による。
この記事の続き:
・トランプ政権第2期が隠す「アメリカの体力的限界」と三つの階層戦略
・アジアと欧州の決定的な違い――なぜ米国単独で西太平洋を守れないのか
・ミッシング・リンクとしての「韓国」をどう盤面に配置すべきか
・「平和の不労所得」が終わる日。日本政府の苛烈なディールと、日本人が持つべき「野生の覚悟」
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