… … …(記事全文4,458文字)2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始した。イランは直ちに湾岸諸国への報復に打って出て、ホルムズ海峡は事実上封鎖された。世界の石油供給の約20%を担うこの水道が閉じられた瞬間、国際原油価格は跳ね上がり、各国のガソリン価格は連鎖的に急騰した。しかしその影響は、国によって天と地ほどの差があった。
下記が主な国の、イラン攻撃前と後の店頭ガソリン価格の変化を表す表だ。
ガソリン価格が高騰した上位国は以下の通りだ。まず、ミャンマーは世界最大となる+101%の急騰を記録し、世界1位となった。次いでフィリピンではガソリンが76%急騰し、ディーゼルも過去最高水準を記録した。同国は石油の98%を中東から輸入しており、その依存度の高さが直撃した形だ。マレーシアでもガソリンが+50%超、ディーゼルは+70%超という数値が出ている。
影響は生活の根幹にも及んだ。ミャンマーの米農家は、収穫を維持するためだけに戦前の5倍の価格でブラックマーケットの燃料を購入せざるを得ず、カンボジアでは燃料や肥料価格の急騰によって農家が作付け自体を断念するケースもみられた。ガソリン価格の高騰にとどまらず、食料安全保障への影響も深刻化しているのが現状だ。
マレーシアは本来、政府が補助金を投入してガソリン価格を低く固定する強力な価格統制を行っていた。しかし、イラン攻撃による原油価格の急騰は、政府の財政負担を瞬時に限界突破させた。
結果として政府は、補助金の縮小や対象者の制限といった制度改革を余儀なくされ、これまで人為的に低く抑えられていた店頭価格が、国際市場の実勢価格に向けて一気に跳ね上がることとなった。
ミャンマーは政変以降の国際制裁により、常に深刻な米ドル(外貨)不足に陥っている。中東情勢の緊迫化でドル建ての原油・製品油が高騰した際、輸入業者がガソリンを購入するための外貨を調達できず、自国通貨の暴落も重なって価格が倍増した。さらに、地政学的リスクに伴うタンカー保険料の急騰から、寄港リスクの高い同国への配船が忌避された。これにより物流網が孤立して在庫が逼迫し、配給制への移行が極端な価格暴走を招く要因となった。
フィリピンは1998年の石油業界自由化法以降、燃料価格の統制や元売りへの補助金支給を一切行わず、価格を民間市場の競争に委ねている。そのため、日本のように政府がクッションとなる仕組みがなく、国際価格の急騰が即座に店頭へ100%転嫁された。また、7,000以上の島からなる島嶼国であるため、海上運賃や国内の二次輸送コストの上昇が重なり、地方都市を中心にインフレが激化した。なぜ日印は防げたのか?
各国の構造差と有事の経済学を紐解く。
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