… … …(記事全文4,080文字)トランプ関税の交渉結果を他国と比較してみた。そこから何が分かるか?
日米関税交渉の結果は、良い!悪い!と諸説入り乱れている。
今回は、別の角度から、日米関税の結果を検証してみたい。
ご存じの通り、米国に輸出される日本製品には15%の相互関税が課せられる事となった。また、15%の関税は自動車と自動車部品にも適用された。他にも、5,500億ドルの投資や、ホワイトハウスのファクトシートでは、日本が米の購入を75%増やし、数十億ドル相当のトウモロコシ、エタノール、大豆、持続可能な航空燃料を購入するとも強調されている。
また、ボーイング社製の航空機100機を取得し、防衛装備品の購入を拡大する事も盛り込まれている。
また、5,500億ドルの投資は、天然資源開発、レアアースの産出・精製・半導体・医薬品等の米国の根幹に投資を限定するものとなっている。
ならば、既に関税の合意に達した他の国は、どうなのだろうか?
順に各国の内容を見て行きたい。
そして最後に総括と私見を述べたい。イギリス
英国から米国に輸出される最初の10万台までの自動車には10%の関税が課せられる。この割当量を超えると、25%の税率が適用されることとなった。
10万台という上限は、2024年のイギリスの対米自動車輸出実績とほぼ同水準であり、これ以上は米国に輸出できないように非常に重い制限を課したことになる。
ただ、英国からの鉄鋼輸出にはゼロ関税が適用された。
一方で、米国から輸入される航空宇宙部品には、より低い関税率が適用される。その代わりに、米国の農家は、牛肉など2億5000万ドル相当の農産物を自由にイギリスに売れることとした。
一方、英国の農家には1万3000トンの牛肉の無関税割当が提供される。
ホワイトハウスはまた、米国が約7億ドル相当の無関税エタノールを輸出するとも言っている。
ブリティッシュ・エアウェイズの親会社であるIAGも、米国ボーイングから約130億ドル相当の航空機を購入することを約束している。
米英の協定は、アングロサクソンらしく金額を明確に設定し、逃げ道がないように関税を設定している点に特徴がある。
イギリスの自動車関税10%は、日本に適用された15%より安いのだが、日本がアメリカに輸出する自動車の台数は年間約140万台である。日本は140万台でも、150万台でも15%関税が適用されるが、イギリスは10万台までが10%で、10万台以降は25%が適用されるわけだ。
イギリスはこれ以上、自動車輸出を認められていない事を意味する。
また、そもそも米英間の貿易で、実はアメリカに貿易赤字はない。
2024年の米国から英国への物品輸出額は799億ドルで、2023年より7.6%(56億ドル)増加した。2024年の米国の英国からの物品輸入額は681億ドルで、2023年より6.0%(39億ドル)増加した。2024年の米国と英国の物品貿易黒字は119億ドルで、2023年より17.4%(18億ドル)増加した。
つまり、アメリカはイギリスに対し貿易黒字なのだ。
貿易赤字の無い国に対して、この関税やボーイング機購入を約束させるなど、それほどイギリスにとってオイシイ交渉結果ではない事は分かる。
ただ、協定条項には、デジタル貿易、知的財産、医薬品サプライチェーン、労働・環境基準に関する協力強化が含まれており、これらにおける協力強化を盛り込む点は、米英の結束の強さを表していると言える。★ベトナム、インドネシア、フィリピンは、どうか?
★そして、それらと日本を比べてみて見える事とは!?
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