Foomii(フーミー)

X(ツイッター)では言えない本音

鳥集徹(ジャーナリスト)

鳥集徹

#136 横行するレベルの低い「似非エビデンス」 ~「ワクチンで認知症リスク減」論文の欺瞞~

【ワクチンと認知症リスクの関係】

1億人強のデータを統合した研究は、各ワクチンと認知症リスクについて以下の関連を報告!

・帯状疱疹:全認知症24%、アルツハイマー病47%減

・肺炎球菌:アルツハイマー36%減

・インフル:アルツハイマー13%減

因果関係の証明ではないが、関連は強く一貫性あり。

https://x.com/YujiY0402/status/2035877655703162925


これは、コロナワクチンを強力に推進した啓発団体「こびナビ」(2023年11月末にプロジェクト終了)の元メンバー・山田悠史医師(米国老年医学会専門医)が、2026年3月23日にX(旧ツイッター)へ投稿した文面だ。この投稿は2026年3月27日時点で4・4万回表示され、503の「いいね」が付いている。続く投稿で元の論文のリンクが貼られているが、多くの人はそれを読むことなく、「ワクチンを接種すれば認知症リスクが減る」と誤認するのではないだろうか。

 

私が山田医師の投稿を知ったのは、これを引用した九条丈二氏(George Kujo IR Analysis Independent Researcher)の投稿(同日)だった。九条氏はこの論文が21件の「観察研究」に依拠していること、統計的な操作をしても「健康者接種バイアス(Healthy Vaccine Bias)」は消えないことなどを指摘し、「強く一貫性あり」と書くのは読者を「予防効果あり」に誘導しがちだと批判している(https://x.com/cavid19w/status/2035905220673495282?s=46)。

*ちなみに九条氏は今年になってから、面会制限などコロナ騒ぎをめぐる問題についての論考を、言論プラットフォーム「アゴラ」などで公表している。当ウェブマガジンの読者にも読むことをお勧めするhttps://agora-web.jp/archives/author/george_kujo

 

私も九条氏の投稿をさらに引用して、その批判に同調する投稿をした。この山田氏の投稿の最大の問題点は、こうしたバイアスのある論文を利用して、ワクチン接種へ誘導しているように思えることだ。また、論文を批判的に吟味しないことで、医学界がバイアスのある論文の横行を許している。そのような医療誘導は、科学的にフェアではない。そこで、あらためて山田氏が引用した論文の内容を確認するとともに、こうした論文の利用が横行していることの問題点について書いてみたい。

 

この論文の原題は〝Association between vaccinations and risk of dementia: a systematic review and meta-analysis〟(ワクチン接種と認知症リスクとの関連性:システマティック・レビュー及びメタ分析)。オックスフォード大学出版局から出版されている英国老年医学会の機関紙〝Age and Ageng〟(年齢と老化)に載った論文で、主にイタリアの研究者を中心とするグループが著者となっている。すでに、このサブ・タイトルに問題点を感じるが、それについては後で詳述したい。

 

内容は、50歳の成人と未接種の成人の認知症および軽度認知障害(MCI)の発生率を比較したもので、九条氏も指摘している通り、各種のワクチンと認知症との関連性を調べた「観察研究」や「追跡調査」(前向きまたは後ろ向き研究)の論文を網羅的に探索して集め、それらを評価や解析の対象としている。ここでまず理解すべきは、これがワクチンの安全性や有効性を検証するために、接種者と未接種を適切に割り付けた「ランダム化比較試験」を筆頭とする「介入研究」を対象にしたものではないということだ。

 

観察研究とは簡単に言えば、現実社会や日常診療などで得られたデータを使って、特定の習慣や治療などと、病気との発生率の関連性を見出す研究だ。たとえば、特定集団を対象にアンケート調査を実施し、加工肉の摂取量の多いグループのほうが、摂取量の少ないグループより大腸がんになりやすいといった知見を得るのが「コホート研究」、医療機関を受診して検査でコロナ陽性となった人を対象にワクチン接種歴を調べて、接種者と非接種者のどちらの陽性率が高いかを算出するのが「症例対照研究」(ケース・コントロール研究)だ。

 

これに対し、研究者が関連する事象に計画的かつ積極的に介入して、医薬品の安全性・有効性等を検証しようとする実験的な手法を「介入研究」という。介入研究は被験者のリクルート等に手間がかかるため、臨床医学ではより手っ取り早くデータを収集できる「コホート研究」や「症例対照研究」が盛んに行われている。しかし、EBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づく医療)では、これらの観察研究はランダム化比較試験よりエビデンスレベルが低いとされる。なぜなら、比較するグループ間のバイアス(偏り)を完全に排除することができないからだ。

 

… … …(記事全文6,107文字)
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