【総裁選の朝に】
【全ての自民党議員に告ぐ】
「安倍晋三の遺言ー『何とか高市さんを総理にしたいね』」
2022年の七夕の夜11:00過ぎ、安倍晋三元首相から電話がかかってきました。参院選の最中だったので、選挙情勢を中心にいろいろな雑談をしました。
翌日は予定を変更して奈良に行く事になっていたので、自然と高市早苗さんの話になりました。
「高市さんはすっかり脱皮したね」
菅義偉首相が総裁選に出られなくなって、次の総裁は派閥の論理から言って岸田文雄か河野太郎に事実上絞られていました。
安倍さんは、「河野太郎を総理にしたら大変な事になる」と危機感を募らせていました。しかし「河野vs岸田」の一騎打ちになった場合、知名度やネット人気などから河野太郎が買ってしまう可能性がありました。
もう一つ安倍さんが危惧していたのは、立候補するのが「河野太郎、岸田文雄、野田聖子」の3人では、全員がリベラルで保守的な議員や党員の選択肢がなくなってしまうという事でした。
そこで、はっきりと保守的なスタンスを打ち出している高市早苗を担いで第一回投票で保守層を糾合する作戦を立てたのです。
具体的には、第一回投票では保守系の議員票と党員票を高市さんに糾合して、決選投票では「岸田票+高市票」を足し合わせる事で河野太郎をブロックするという作戦を立てたのです。そういう意味では、2021年の総裁選での高市さんはいわゆる当て馬でした。
🔴総裁選で脱皮した高市早苗
高市さんは夜の宴会が苦手で、政治家としては珍しく人付き合いがあまり得意な方ではありませんでした。
2021年の総裁選の序盤戦では高市陣営の中核議員Eが「高市に電話したけど出てくれない」などと安倍さんに苦情を言う局面もありました。
「山口君は前に『電話が苦手だ』と言ってたけど、どういう心理なの?」
「突然どうしたんですか?」
「高市陣営に送り込んだEからさ、『高市さんにアドバイスしようとして電話したけど出ない』と言って相当ムクレてるんだよね」
「僕は深い原稿書いたり哲学や宗教の事を深く考えている時に電話に出るとせっかく集中しているいい状態が台無しになってしまうので、電話に出られない事があります」
「高市さんも学究肌な所があるから、政権公約とかを詰めていると電話に出られないのかもしれないね」
政調会長や総務大臣を繰り返し務める中で研鑽を積んできた高市さんは、保守的な政治姿勢や経済金融政策、社会保障や安全保障など、政策面では無敵でした。
夜の宴会に出ない代わりに政策を磨いてきた高市さんが、政策を磨かずに夜な夜な飲み歩いていた自民党議員の仲間が多くないのは、ある意味では当然の事です。
「高市さんの性格や長年の生活パターンを変える事はできないよね。総理総裁を目指すなら、彼女の足らざる部分を補う軍師や参謀が必要なんだろうね」
2021年の総裁選の序盤戦ではこう語っていた安倍さんでしたが、総裁選が進むにつれて高市さんへの印象がどんどん変わっていきます。
「今日午後Eと話したらさ、『高市さんの方から電話がかかってきて、いろいろ相談されたんですよ』と満面の笑みを浮かべているんだよ」
「それは大きな変化ですね。これでEさんも本気で動くでしょう」
「Eもそうだけど、俺は高市さん本人こそ大きく脱皮しつつあるんだと思うだよね。Eの話をよく聞いてみたら、高市さんが把握している話や政策ばかりなんだよ。おそらく高市さんは、陣営で汗をかいているEや他の仲間とコミュニケーションを取ろうと自ら努力し始めたんだよ。僕がそうしろと言ったわけでもないのに。」
こう語る安倍さんは、まるで子供の成長を見つめる慈母のような表情をしていました。
総理総裁になるために自分に欠けているものは何か、高市さん自身で気がついて努力を始めた事が、何よりもうれしかったのでしょう。
2021年の総裁選序盤戦では高市さんについての苦情を安倍さんに漏らしていたE議員も、今回の総裁選では最初から高市陣営に入って大車輪の活躍をしています。
安倍さんだけでなく、というか、安倍さんの遺志を知り、それを継いで行こうと考えている多くの議員が脱皮した高市早苗を支えようと、必死で戦っています。
🟥安倍晋三の『遺言』
2022年7月7日の夜の電話に話を戻します。
9ヶ月前の21年9月29日に行われた総裁選で高市さんは、114票という、周囲の予報を大きく上回る議員票を獲得し、3位に沈んだ河野太郎の86票を大きく上回り、1位の岸田文雄の146に迫る大健闘をしました。
「総裁選以来、高市さんは本当に変わったね。いろいろな人に自分から電話しいろいろな相談をして、党内の仲間をどんどん増やしている。総理総裁というのは政権が窮地に陥った時に絶対に裏切らずに支えてくれる仲間がいなければ仕事にならない。そんな当たり前の事にようやく気がついたんだろね」
「60過ぎて自分の長年の生活パターンや人付き合いの仕方を変えるのは容易な事ではありませんよね。高市さんは総裁選を通じて自己改革したんですね」
「政策では無敵の高市さんが、絶対に裏切らない仲間を10人獲得すれば、もう無敵だよね。僕は脱皮した高市早苗を総理にしたいと本気で思ってる。」
「次の総裁選が楽しみですね」
「山口君、高市さんをよろしく頼むよ」
高市さんを総理に押し上げていくという強い意志を示した安倍さんが、「よろしく頼むよ」と言った事に軽い違和感を感じながら、長くなった電話を切りました。
翌日2021年7月8日。安倍さんは近鉄大和西大寺駅北口で何者かに狙撃されて帰らぬ人となりました。
だから「高市さんをよろしく頼むよ」という言葉が、私が安倍さんから聞いた最後の言葉になってしまいました。
🟥文春オンラインの悪質な報道
安倍晋三さんと高市早苗さんの関係について、週刊文春が「応援しない」と言っていたと報じました。
▲文春オンライン
記事の詳細はともかく、「死の直前に安倍さんが「高市さんを応援しない」と言ったタイトルは絶対にウソです。私は死の前日に真逆の事、高市さんを総理にしたいという熱い思いを伝えられていたのですから。安倍さんの遺志をねじ曲げる許しがたい報道犯罪です。
確かに2021年の総裁選序盤戦までは、安倍さんは高市さんが仲間づくりに積極的でない部分についての不満を信頼するごく一部の人間に漏らしていました。
しかし総裁選の中盤以降、自己改革して脱皮した高市さんの努力を高く評価し、「何とか高市さんを総理にしたい」と言って死んでいったのです。
文春の記事は、もしかしたら21年の総裁選の序盤戦の話が時間差で漏れ出したものを記事にしたのかも知れません。
だからこそ死の直前、安倍さんが高市を応援しないと言ったかのような記事は非常に悪質です。
「死人に口なし」とばかり、安倍さんの思いを踏み躙る記事や言説が世の中に溢れています。
私は自分の記者としての魂を込めて証言します。安倍晋三さんは死の前日、「(脱皮した)高市さんを何とか総理に押し上げたい」と述べたのです。そしてそれが、私に遺した最期の言葉なのです。
安倍晋三元首相の事が好きだろうと嫌いだろうと、今日総裁選の投票に臨む全ての自民党議員に伝えたい。
安倍晋三は高市早苗を総理総裁にしたいと心から思っていたという事を。
そう語った翌日に凶弾に斃れて、高市総理誕生を自分の目で確認する事なく旅立って行ってしまったという事を。
そして、安倍さんの最期の言葉が
「高市さんをよろしく頼むよ。」
だったという事を。
PS:
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山口敬之(ジャーナリスト)