ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00225/20230709100000111251 //////////////////////////////////////////////////////////////// 吉富有治の魔境探訪 - 政治という摩訶不思議を大阪から眺める https://foomii.com/00225 //////////////////////////////////////////////////////////////// 以下のメルマガ記事は太田晶也前大阪市議へのインタビューで構成され、6月7日に配信したものものである。その太田は一昨日の7日夕、この世を去った。51歳という若さだった。政治家としてはあまりにも若い。 病床にある太田を私は何度も見舞い、そして話を聞いた。そのたびに太田は「悔しい。もう少し生きたかった」と涙を見せ、大きな身体を震わせていた。その太田が語ったのは自民党に対する苦言と、その裏に潜む大阪を愛する気持ちである。死期を悟った太田だからこそ、自民党に対していま何を言うべきかをわかっていた。 以下の再配信記事は自民党関係者はもちろん、多くの人にも読んでいただきたい。政治というものが、また大阪の政治というものが理解できると思う。 * * * * 4月の統一地方選で惨敗した自民党大阪府連。大阪府議選と大阪市議選の両選挙で同党大阪府連は議席を大幅に減らした。大阪維新の会が実質的なデビューを果たした2011年4月の統一地方選以降、府連には負け癖が付いてしまったかのようである。 そこで自民党本部は急きょ、府連の立て直しに力を入れる構えを見せた。先月11日(注・5月11日)には党本部で、府連立て直しのための新組織「大阪自民党刷新本部」の初会合を開催。茂木敏充幹事長が本部長に就任した。 茂木は同24日に来阪し、大阪市内で府連の役員や次期衆院選の候補者らと面談。「大阪の大変厳しい状況が一気に加速している」とし、早期の立て直しは難しくても「ステップを踏みながら改革を進めていきたい」と述べた。 今回の統一地方選で大阪維新はさらに党勢を伸ばした。松井一郎前大阪市長が政界を去っても、大阪府知事選と大阪市長選では2位以下をそれぞれトリプルスコア、ダブルスコアの大差で引き離した。大阪市議会では単独過半数を獲得し、堺市長選でも永藤英機市長が2期目の再選を果たした。もはや大阪は「維新王国」と呼んで差し支えないほど大阪維新の天下になっている。 大阪維新の強さが際立っている一方で、自民党でも大阪の弱さが目立つ。そこで同党府連を立て直すために党本部がテコ入れするのだが、果たして上手く機能するのか。大阪の自民党は復活するのだろうか。 この疑問に答えてくれた政治家がいた。この4月まで「自由民主党・市民とつながる・くらしが第一大阪市会議員団」の幹事長を務めていた太田晶也前市議(51)である。 太田は末期ガンを患い、現在は入院して病魔と戦っている。太田が今回の統一地方選に出馬せず、実弟の太田勝己(50 今年4月の統一地方選で初当選)に大阪市福島区の選挙区を譲ったのは、そのような個人的事情があった。 私は今年3月から太田へのインタビューを何度も重ねている。会うたびに痩せていく太田を見るたびに私の胸は辛くなるが、彼の長い政治体験を記録として残さねばと思い、自分の気持ちに鞭打って太田と対面してきた。いわば彼の"遺言"を残そうという気持ちだった。 太田が大阪市議に初当選したのは2011年4月の統一地方選だが、彼の政治経験はそれ以前から続いている。父親の故・太田勝義が自民党の大阪市議だったこともあり、太田は20代のころから大阪府連でボランティアとして働いていた。服飾関係の専門学校の教師をしながら多くの国会議員や地方議員と接してきた経験を持つ。その中には若き松井一郎大阪府議(当時)もいた。 今回のメルマガは、自民党本部が同党大阪府連を立て直すことについて太田から取材した内容で構成されている。それ以外にインタビューで太田から聞いた話、たとえば大阪維新が誕生した経緯や背景などについては今後、連載か随時掲載といった形で世に出したいと考えている。 まず、今回は自民党本部が大阪府連を"直轄"するという件について太田のインタビューをまとめてみた。太田本人は茂木幹事長が5月24日に来阪する前の同21日、病気の身体を押して府連の会合に参加したという。この記事ではそのときの話が中心となる。以下、太田の話である。(今年4月末に太田の自宅で撮影) * * * * * * * 【太田】私は5月21日に自民党大阪府連で開かれた会議に参加させてもらった。会議は役員会議と全体会議があり、全部で約5時間もあった。その中で私も苦言を述べさせてもらった。 会議ではまず、統一地方選の話が中心になった。府連が大敗した理由などについて多くの時間が割かれた。この場で私が強調したのは、選挙演説で有権者に話をするときはネガティブな訴えを避けろというものだった。 「言霊(ことだま)」という言葉がある。言葉には霊的なパワーが宿り、良い言葉は良い未来につながり、逆に悪い言葉は悪い未来につながるという日本古来の考え方だ。つまり選挙で政策を訴えるにしても、ネガティブな話をするとネガティブな結果しか生まないということだ。聞く人にネガティブな印象を与えるような話を政治家はするべきではない。政治家は常に未来と夢を語りかけ、特に大阪の政治家は大阪の明るい未来を語るべきなのだ。 たとえば大阪都構想の賛否を問う住民投票運動のときは、これはYESかNOの選択しかないので「NO」を訴えればいい。都構想の欠点を訴えるべきである。だが、統一地方選で大阪維新の悪口を言ったり、彼らの政策を批判するようなことはすべきではないと考える。 だいたい人物や他党の批判などを聞かされても気持ちの良いものではない。私も支援者から「人物や他党の批判はやめてほしい」と言われたことがある。ましてや、支援者以外の人たちが多く聞いているパブリックな場所で大阪維新など他党の悪口を言っても胸に響く人などそれほど多くはない。逆に悪口、文句を聞かされて気分が悪くなるだけではないか。 大阪でオープンが予定されているIRやカジノの問題点を追及するのはいいと思う。IRやカジノのどこがダメで、どこが問題かを訴えるのは悪口ではない。同じ批判でも建設的な批判だろう。だが、最初から「ダメだ」「反対だ」の一点張りでは有権者の胸には響かない。そのような感情的な訴えでは有権者はかえって逃げる。と、このようなことを会議で述べさせてもらった。 そのあと参加した議員からも統一地方選に関する総括的な意見が出たが、中でも「アップデートおおさか」と自民党大阪府連との連携についての批判が大半だった。 <注>「アップデートおおさか」は2023年4月の統一地方選のために設立された政治団体で、各政党とは距離を置く市民派の団体。ただ、市民派といっても自民党大阪の一部議員や立憲民主党、労組、部落解放同盟の関係者らが関与していた。この政治団体から大阪府知事選の候補として法学者でテレビコメンテーターの谷口真由美が、また大阪市長選に自民党前大阪市議の北野妙子がそれぞれ出馬していた。なお北野は、アップデートおおさかから出馬するに際して自民党を離党している。 * * * * * * * 【太田】自民党大阪府連はアップデートおおさかに対して「自主支援」といいながら、実際は府連執行部からスタッフを送ったりと「完全支援」に近いものになっていたことを他の議員は批判していた。また岸田さん(岸田文雄首相)が自身の後援会組織での講演のために来阪したとき、谷口さんと北野さんを壇上に上げて岸田さんの口から応援を依頼したり、自民党国会議員たちが2人の候補者を応援するネット動画を配信したことについて「承服できない」という批判が続出した。確かに、これは党本部と府連執行部の判断ミスだと思う。 そして党本部と府連への批判として極めつけだったのが夢洲IR・カジノの対案だった。府連は「ディズニーリゾート」を夢洲に誘致するという対案を出してきた。会議では、この案を言い出したのはいったい誰だと責任追及の場になった。約5時間も行われた会議のうち、アップデートおおさかとディズニーリゾートの問題だけで大半の時間が費やされた。 <注>ディズニーリゾートの誘致問題とは、2029年以降に誘致が計画されている大阪湾に浮かぶ人工島・夢洲へのIR・カジノに対して、自民党大阪府連の対案として突如、浮上してきたもの。統一地方選では大阪市内に「夢洲にディズニーリゾートを!」というポスターが自民党の党名とともに掲げられていた。また一部候補のポスターにも同様の文言が並び、これが波紋を広げた。 3月31日付けの産経新聞によれば、「自民府連関係者によると、ポスターは3月下旬までに作製され、大阪市北部を中心に掲示。意図について『ディズニー誘致は府連の総意ではないが、アイデアの一つ』と説明した。アイデアの提案者やポスター掲示が決まった経緯は明らかにしなかった」とある。 https://www.sankei.com/article/20230331-K6ODQ2RG2JNLHMCAJQ3UEVJLNI/?outputType=theme_localelection2023 夢洲へのIR・カジノの誘致は基本的に国の政策だが、そのアイデアを最初に言い出したのは大阪維新であり、同党の目玉政策になっている。自民党大阪府連ではその対案として「ディズニーリゾート」の誘致を訴えるポスターを市内各地で掲げたものの、産経新聞の記事にもあるように同案がIR・カジノの対案として持ち出されたことはこれまで一度もなかった。それだけに同じ自民党候補から批判する声が聞かれたのだ。 以下、太田の話が続く。 * * * * * * * 【太田】ディズニーリゾート誘致の案を自民党大阪府連の中で誰が言い出したのか、結局は会議ではわからなかった。中には自民党市議団から出てきたアイデアという話もあったが、同市議団の中には「私はいっさい聞いたことがない」と話す議員がいたことから、このアイデアは一部の市議によるものだと思われる。ただ仮にそうだとしても、ポスターの制作を許可したのは大阪府連であり党本部。府連執行部の責任は大きい。 だいたいディズニーリゾートの誘致など政治的なセンスが感じられない。結局、21日の役員会では党本部が大阪府連を直轄する話はいっさい行われず、約5時間の会議では統一地方選で大敗を許した府連批判で終わった。また会議では、府連として大阪府知事選と大阪市長選には深くコミットしないと言いながら実際は深く関わるきっかけを作った一部議員の名前を挙げ、遠回しな表現ながら彼らを「A級戦犯」とする意見まで飛び出した。 さらに統一地方選挙の前半戦が終わったばかりなのに、その時点で宗清皇一衆院議員が府連会長を辞任する情報をマスコミに漏らしたことにも批判が出た。後半戦を戦う自民党候補にすれば、府連会長が白旗をあげた中でまともに戦えなかったという怒りがあった。 https://www.sankei.com/article/20230420-3D6GGSGS6ZKW7H4PXYTH4GVJGE/ 府連執行部の隠ぺい体質と世間からズレた判断ミスが府連内の不協和音と不信感を招いたのだ。府民、市民の声を聞かず、自分の考えが正しいと勘違いし、無鉄砲な選挙戦に突入した。大阪市議選では大阪維新による単独過半数の阻止こそが最重要目標であったのに、知事選と市長選に勝つことが最大の目的になってしまい、肝心の市議選は置き去りにされた。今回の統一地方選は、自民党の自民党による維新をサポートした"自滅選挙"だったと言わざるをえない。 党本部が府連を直轄する問題で茂木さんが24日に来阪したとき私は会議には参加していない。ただ参加した議員らの声は聞いた。ある議員は「党本部と府連の考えにはずいぶんと隔たりがある」「大阪の内情がわかっていない」と怒っていた。 たとえば、大阪府議選や大阪市議選でも自民党候補が出馬できない選挙区がある。このような選挙区では公明党と何らかの調整をしているのかと茂木さんに質問すると、「そんな調整はしていない」と言われたという。いや、公明党と取引というか調整はしているはずだろう。 さらに国レベルでは党本部と大阪維新、日本維新とべったりの関係ではないのか、資金援助が必要なのに党本部は相手にしてくれないといった不満や、「自民党大阪府連と党本部は別物」といった大阪維新のアナウンス戦術を党本部も容認するような態度にも文句が出た。実際、自民党国会議員の中にも「自民党の大阪は共産党と一緒やから」と陰口を叩く人がいると聞く。そのような党本部の冷たい態度が大阪府連を弱くさせている。また、府連会長には民間人からの登用も考えるべきという意見もあったようだ。 これら様々な不満に対して、茂木さんは「今回の統一地方選では大阪に全国一の予算を投入した」と話したり、「選挙で勝つには候補者自身が強くならなければならない」と精神論で返すだけで、府連の議員たちが抱える不満や不平は茂木さんの心にはまったく響いていないようだったと参加者の一部は話していた。 私(太田)も、茂木さんが府連を本気で立て直す意思はないと感じている。一部を除いて大阪の国会議員も地元大阪に興味はないのではないか。党本部が刷新本部を立ち上げても大阪府連の改革はできないと思う。刷新本部の改革程度では次の解散総選挙があっても府連は勝てないだろう。 一方の大阪維新だが、国政では梅村みずほ参院議員の失言問題や、大阪では笹川理府議のパワハラ・セクハラ問題が世間を賑わせている。しかし、このようなスキャンダルに見舞われても選挙にはまったく影響はないだろう。実際、過去に週刊誌のネタにされた維新の大阪市議がいたが、その人物もその後の統一地方選ではトップ当選を果たしている。 この理由は、世間の多くの人は政治に関心がないからだと思う。政治的な良し悪しの判断よりも、新聞やテレビに露出するだけで「がんばっている」というイメージだけが刷り込まれている。梅村さんや笹川さんは政治家としてはダメでも、「維新はがんばっている」という空気が世間にはある。これが世間が持つリアルな政治のレベルである。 私(太田)がいつも話していることだが、自民党大阪府連を立て直すには3つの要素が必要なのだ。1つは「個々の議員のポテンシャルのアップ」、2つ目は「国会議員と各市町村議員とのコミュニケーション作り」、そして最後が時間はかかるが「新たな人材の育成」だ。大阪府連を根本から立て直すにはこの3つを実行する以外にない。 1番目の「ポテンシャルのアップ」とは、政治家としてレベルアップを図ることだ。政治的な知識と教養を身につけることである。そのためには党本部で中央研修会を開くことだ。自民党でも他の地方議員は東京に出向き、大臣や官僚の話を直接聞く研修を行っている。国を仕切っている人たちの生の声を聞くだけで政治的な見聞が広がる。しかし大阪はそこそこ国会議員がいるから中央とのパイプは彼らに任せきりになっている。そのため地方議員が大臣などの話を聞く機会は少ない。これではダメだ。政治家としての知識や教養、度量が深まらない。 2つ目の「議員間のコミュニケーション作り」も不足している。大阪府議団と大阪市議団の間ですら相互交流や議員間のコミュニケーションは少ない。相手を知るには直接会って話をすることが大事だ。会って喧嘩したとしても、それで信頼が深まることもある。大阪府連の各議員には、ごく近くの内輪以外に相手を知るという姿勢が欠けている。 そして最後の「人材の育成」だ。これは10年、20年と時間を要するが最も大事なことだ。次世代を背負う政治家を一から育てる必要がある。急ごしらえの改革では小手先のテクニックだけが先行し、一番肝心な党としての足腰を鍛えることができなくなる。人材の育成は強い党を作る上で欠かせない大切な柱なのだ。 大阪維新と公明党が強いのは、どちらもトップダウンの政党だからだ。トップが間違った指導をやらない限り、個々の議員の動きも間違った行動にはならない。そのトップダウン体制が党勢拡大の大きな力になる。党勢が拡大すれば、大阪での改革を成しとげ、様々な課題を解決することができる。結果が出れば世間も党の実績として評価する。 ただし、大阪維新にしても公明党にしても、個々の議員が大阪を本当に愛しているかは疑問だ。大阪維新は二重行政の解消や行政改革をしきりに訴えるが、彼らは制度をあれこれいじることは好きでも大阪の将来ビジョンをどう考えているかまでは見えてこない。大阪の隅々から深いところまでを知り、大阪を愛しているとは到底思えない。 幹事長の茂木さんは選挙が強い人で知られた政治家だ。政治も選挙も熟知している。ただし、彼は最強の矛と盾を持った中で選挙を戦ってきた政治家であり、アルミのような矛と盾しか持たない自民党大阪府連に茂木流の戦略は通じない。そもそも大阪の事情もわかっていない。大阪の地方議員の声を聞こうと大阪までやってきたのに、彼が話したことは「選挙はがんばれ」。これでは誰の胸にも響かない。この調子では、自民党大阪府連が立ち直るには20年くらいはかかるだろう。(一部、文中敬称略) <なお、この記事の無断転載は固くお断りいたします。> //////////////////////////////////////////////////////////////// 本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛に返信をお願いいたします。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 配信記事は、マイページから閲覧、再送することができます。ご活用ください。 マイページ:https://foomii.com/mypage/ //////////////////////////////////////////////////////////////// ■ ウェブマガジンの購読や課金に関するお問い合わせはこちら info@foomii.com ■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/ ////////////////////////////////////////////////////////////////

新しいコメントを追加