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やっぱり地理が好き
~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~
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第269号(2026年9月6日発行)、今回のラインアップです。
①世界各国の地理情報
~10年かけた道が、数秒で消えた ヒマラヤ山脈と一帯一路~
②今週の気になるニュース
~ジャカルタで火が燃えた理由は、黒海とホルムズ海峡にもある~
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こんにちは。
地理講師&コラムニストの宮路秀作です。
日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。
今回で269回目のメルマガ配信となります。
9月となりました。
本メルマガのご購読を継続していただいたみなさま、大変感謝いたします。
ありがとうございます。
授業で「人口」について扱うとき、「戦後の日本の人口動態」といった小さい時間スケールで説明すると同時に、「人口増加のあゆみ」というかなり大きな時間スケールで説明します。大きな時間スケールというのは、基本的には獲得経済期から食料生産革命(農業の開始)へ移行し、そして産業革命を経て、20世紀後半の人口爆発という流れで説明します。
その説明のさいに「可容人口」という言葉を使用します。可容人口とは、大なり小なりの空間スケールにおける「収容可能な人口数」ということです。ドイツの地理学者であるアルブレヒト・ペンク(1858~1945年)が考案した「ペンクの公式」によると、地球上の可容人口はおよそ160億人となっています。
かつてダイヤモンドオンラインでの連載記事に、拙稿が掲載されていますので、よろしければこちらもアクセスしていただけると嬉しいです。
▼地球の人口は160億人まで増える!? 教養としての「人口論」
https://diamond.jp/articles/-/118615
さて、可容人口を決める要素としては主に二つ、食料供給量と就業機会です。
人類が農業を始める以前の獲得経済期においては、仕事をして金を稼ぐという概念がまだ無かった時代ですので、食料は「買う」ものではなく「自然界から獲ってくる」ものでした。つまり、食料供給量は獲得量であり、そこに生産量が加わるのは西アジアでの農業開始まで待たなければなりません。
「今日はマンモスが食いてぇな!」と思って、都合良くマンモスが目の前を通過するわけではなく、また通過したとしても捕らえることは容易ではないため、安定して食料が獲得できる保証のない時代です。そのため人口増加は微増傾向でしかありませんでした。
今からおよそ1万年前、最終氷期(およそ7万年前~1万年前)が終了したことで地球が温暖化したことで、西アジアで小麦栽培が始まりました。獲得量だけでなく生産量が加わったことで食料供給量が安定し、次第に人口が増加していきました。1万年前におよそ500万人しかいなかった地球の人口は、西暦元年には2億5000万人にまで増えたといいます。
産業革命は、蒸気機関の改良によって蒸気機関車や蒸気船などが登場して、遠隔地へと短時間・大量輸送が可能となって時代です。これによって、食料供給量は獲得量、生産量、そして輸入量が加わりますが、全世界で起きた技術革新ではなかったため、産業革命に成功した欧米諸国を中心とした人口増加が見られました。
そして、第二次世界大戦後の20世紀後半は、医療技術の発展や医薬品の普及、衛生環境の改善、食糧事情の向上など、さまざまな要因から発展途上国を中心に人口が急増しました。これを人口爆発といいます。
上記の話は大学受験においては必ず学ぶ内容ですが、問題はそこではなく、とんでもなく大きな時間スケールをなぞっているということが重要です。日本において、少子化問題が叫ばれるさい、結局は「1970年代初頭の第二次ベビーブームを境に出生率は低下傾向が続いている」「コロナ禍で若者の出会いの機会が減って出生率がさらに低下した」など、比較的小さい時間スケールをなぞることが多いように思います。そこに因果関係と相関関係の別が付いているか否かの議論は一旦脇に置いておきます。
地球科学では地球を扱うので、かなり大きな時間スケールで議論します。また、歴史学では基本的に人類史を扱うため、地球科学に比べると小さな時間スケールで議論します。その橋渡しをしているのが地理学であるという認識を持っている人はあまり多くないように思います。
またスケールは時間だけでなく、空間にも存在します。
アジア、東アジア、日本、関東地方、東京といったように、空間スケールは「何を見たいのか」によって、最初に設定するものです。どの空間スケールが正しいのかということではありません。スケールが変われば観察できることが異なるというだけの話です。
こうしたスケールについてお互いが共有していなければ、議論にならないわけです。平時においては特に問題になりませんが、有事のさいは頭が混乱してしまい、突如として「俺が考えた最強の理論!」が発動しがちです。
しかし、一旦落ち着いて時間、空間ともに、大なり小なりのスケールで観察して、総合的に考察することが重要です。
それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。
よろしくお願いします!
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①世界各国の地理情報
~10年かけた道が、数秒で消えた ヒマラヤ山脈と一帯一路~
2026年8月26日の朝、中国とネパールの国境にある吉隆口岸(ギロン口岸)を、泥と岩を含んだ濁流が襲いました。
監視カメラの映像には、峡谷を猛烈な勢いで下ってきた茶色い濁流が、国境の施設をのみ込んでいく様子が記録されています。人々が逃げ惑うなか、建物も車も、数秒でその濁流に呑み込まれてしまいました。
「吉隆口岸」のWikipediaを見ると、その時の監視カメラの映像がアップロードされています。結構衝撃的で絶句する様子が映し出されていますので、ご視聴は自己責任でお願いします。
▼吉隆口岸
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E9%9A%86%E5%8F%A3%E5%B2%B8
▼逃げ惑う人も車も巨大な建物も土砂に飲み込まれる…中国とネパールの国境検問所で土砂崩れが発生(ニューズウィーク日本版)
https://www.newsweekjapan.jp/articles/-/332456
被害は甚大です。ネパール側では死者538人、行方不明者は当局の名簿照合分で977人と発表されました。中国側でも5人が死亡し、550人以上の行方が分かっていません。カイラス山への巡礼に訪れていたインド人をはじめ、多数の外国人が巻き込まれています。日本人5人とも連絡が取れていませんでした。これは8月28日時点での情報でした。
それからおよそ一週間が過ぎ、被害は日を追うごとに拡大しています。9月4日の時点で、ネパール側の死者は少なくとも1,287人、中国側で31人。両国を合わせて1,318人にのぼります。行方不明者は両国で5,600人を超えました。カイラス山への巡礼に訪れていたインド人をはじめ、多数の外国人が巻き込まれています。日本人5人とも、いまだに連絡が取れていません。複数の水力発電所が土石流にのみ込まれ、トンネル内に作業員が閉じ込められました。9月4日には、9日ぶりに2人が救出されています。
今後、さらにこの数字は増えていく可能性があります。
そして、この災害はもう1つのものを押し流しました。
