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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #264:新・要衝を押さえる①、大地が決める通貨・第1回

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

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第264号(2026年7月31日発行)、今回のラインアップです。

①世界各国の地理情報

~新・要衝を押さえる① 開いた要衝、ジブラルタル~

②大地が決める通貨

~第1回 日本で最初の通貨は、銅ではなかった~

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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

今回で264回目のメルマガ配信となります。


7月最後の配信です。

8月は日曜日が5回ありますので、次回の配信は8月9日からを予定しています。


突然ですが、いま、財布の中に硬貨は入っていますか?

最近は、電子マネーの利用が進んでいることもあって硬貨、いわゆる「小銭」が財布に入っていないことが多いように思います。


「1円玉不要論」が飛び交うのが、時代を映しているなと思います。


もし入っていたら、1枚を手に取ってみてください。それは、金属でできています。当たり前だと思われるかもしれませんが、なぜお金は、紙や貝や石ではなく、金属でできているのでしょうか?


小銭の材料を考えると、なぜ日本の硬貨はおもに銅やニッケルなのか、なぜ大昔の地中海の硬貨は金や銀だったのかが浮かび上がってきます。


答えは、意外なところにあります。地面の下です。


その土地で何が採れたか。それによって、人々が何でお金を作るかが決まってきました。金の採れる場所の近くでは金貨、銀の採れる場所では銀貨、銅の採れる場所では銅貨がそれぞれ使われます。お金のかたちは、制度が決める前に、まず「地理」が決めていたという見方ができます。


そして、「地理」が静かに決めていたのは、お金のかたちだけではありません。

もう1つ、「地理」が決めているものがあります。


「どこを通れるか?」です。


船がどの海を通り、荷物がどの道を運ばれ、金属がどこからどこへ流れるか。それを決めるのは、山の高さであり、海の狭さであり、川の流れです。地面のかたちが、世界のあらゆる流れの通り道をあらかじめ決めています。


こうした地理的条件が地域の政治情勢に影響を与える。

それを世間では「地政学」というのでしょうが、そんな学問は存在しませんし、結局は「地理学」です。


今週は、その「地理」が決める2つの流れを、別々の場所から見ていきます。1つめは、船と人の通り道、地中海の入り口ジブラルタルです。この夏、その通り道の柵が下りました。2つめは、お金の始まりです。日本で最初の通貨は「銅(和同開珎)ではなかった!」という話をしてみたいと思います。


地図の上では、どちらもただの一点です。

しかし、その一点が、流れの向きを決めていくわけです。


それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。

よろしくお願いします!


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①世界各国の地理情報

~新・要衝を押さえる① 開いた要衝、ジブラルタル~


久しぶりに「要衝を押さえる」シリーズを書いてみたいと思います。


2026年7月15日、ヨーロッパの南の端で、1つの柵が消えました。


スペインとイギリス領ジブラルタルを隔てていた国境の柵です。世界の多くの国が、国境の壁をより高く、より長くしている時代に、ここでは逆のことが起きたわけです。スペインの首相ペドロ・サンチェスはこれを、「ヨーロッパ大陸に残された最後の壁が倒れたのだ!」と表現しています。


▼Gibraltar enters new era with Spain as border fence is removed(The Irish Times)

https://www.irishtimes.com/world/2026/07/16/gibraltar-enters-new-era-with-spain-as-border-fence-is-removed/


けれども、柵が消えたからといって、そこが要衝でなくなったわけではありません。話はむしろ逆です。要衝だからこそそこに柵が立ち、要衝だからこそその柵が外されたともいえるように思います。


■鉄の門が、蝶番から外された夜

条約は、2026年7月14日にブリュッセルで署名され、翌15日から実施されました。実施まではすこぶる早いです。


深夜0時、スペイン側の町ラ・リネア・デ・ラ・コンセプシオンとジブラルタルを隔てていた鉄の門が、蝶番から外されました。スペイン側からはサンチェス首相、ジブラルタル側からは首席大臣ファビアン・ピカルドがそれぞれその様子を見ていました。


これによって、ジブラルタルとスペインの住民は、身分証明書を示すだけで、検査を受けずに互いの側へ入れるようになりました。旅券の検査は、陸の境界から、ジブラルタルの空港と港へ移されます。空港と港では、イギリスとスペインの双方の職員が出入国の検査にあたり、域外から来た旅行者は、そこでシェンゲン協定の検査を受けることになります。


今回の話は、境界が消えたというものではありません。境界が、陸から空港と港へ移動したのです。


その結果、

… … …(記事全文11,198文字)
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