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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #257:「第二のアラル海」という言葉を、一度疑う

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

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第257号(2026年6月30日発行)、今回のラインアップです。

①世界各国の地理情報

~「第二のアラル海」という言葉を、一度疑う~

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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

6月となりました。

本メルマガのご購読を継続していただいたみなさま、大変感謝いたします。

ありがとうございます。


なかなかメルマガ執筆の波に乗れずにいます……。

見捨てずに読んでくださっている読者の皆様方には頭がさがります。

ありがとうございます。


さて、世界三大珍味といえば、キャビア、フォアグラ、トリュフです。


このうちキャビアは、チョウザメという魚の卵です。「鮫」という字が入っていますが、サメの仲間ではありません。名前というのは、しばしば人を惑わせます。小野妹子が「男」であると聞いたときには「ファッ!」と思ったものです。


そのキャビア、わたくしはここ数年、口にした記憶がありません。筋トレはサボるのに、グルメだけは一丁前を気取りたいところですが、先立つものがございません。だって、稼いでも稼いでも、無慈悲にわたくしの財布に手を突っ込み、金を巻き上げていく奴らがいるからです。そのお金は、「8万円あげるから、これでエアコン買って良いよ!」と配られるわけです。


歴史を紐解くと、戦争以外で富の再分配が行われたことはありません。そして人間は平和を願い、如何にして戦争を回避するかに心を砕いてきました。そして、話で物事を決着させようと努力してきました。平和を願えば願うほど、富の再分配から遠ざかっている、そんな現実が存在しているわけです。


ところが、そんな庶民的な悩みとは比べものにならない規模で、キャビアそのものが地球から消えかけています。キャビアの原料となるチョウザメは、世界のおよそ9割がカスピ海に生息しています。そのカスピ海が、いま静かに干上がりつつあるわけです。

カスピ海には「海」という字が入っています。しかし、カスピ海は海ではありません。世界最大の湖です。周りを陸に囲まれ、外洋とはつながっていない。それでも我々は、何百年も「海」と呼んできました。海と名づけられた瞬間、人はそれを「減るはずのないもの」と思い込みます。チョウザメをサメだと思い込むのと、同じ構図です。

名前に騙されない。これは地理を学ぶうえで、想像以上に大事な作法といえるのではないでしょうか?


それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。

よろしくお願いします!

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①世界各国の地理情報

~「第二のアラル海」という言葉を、一度疑う~


カザフスタン西部に、アクタウという港湾都市があります。カスピ海に面したこの街で、いま岸辺がどんどん後退しています。かつて水面下にあった岩肌が、むき出しになっている。海岸線の後退が、肉眼で分かるほどです。

数字で確認しましょう。


カスピ海の水位は、2006年から2024年にかけて2メートル以上低下しました。2025年には海抜マイナス29メートルを下回り、観測史上の最低水準を記録しています。下落のペースが結構デタラメです。2020年から2025年にかけて、水位は1年あたりおよそ7センチメートルの速さで下がっています。これは世界の海面上昇の、なんと20倍の速さです。


▼The Caspian Sea Hits Historic Low(The Times of Central Asia)

https://timesca.com/the-caspian-sea-hits-historic-low/


困るのは、まず人間の暮らしです。アクタウは飲料水のほぼすべてをカスピ海に頼っています。水位がこれ以上下がれば、取水そのものができなくなる。生態系も悲鳴を上げていて、固有種のカスピカイアザラシが毎年のように大量死しています。そして、先ほどのキャビアです。

こうした光景を前に、多くの報道は一つの便利な名前を与えます。


「第二のアラル海」です。


さて、ここで立ち止まりましょう。

… … …(記事全文6,087文字)
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