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やっぱり地理が好き
~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~
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第174号(2024年9月23日発行)、今回のラインアップです。
①世界各国の地理情報
~環インド洋経済圏 オーストラリア①~
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こんにちは。
地理講師&コラムニストの宮路秀作です。
日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。
今回で174回目のメルマガ配信となります。
さて、オーストラリアといえば、みなさんはどんな国だと想像しますか?
オーストラリアは 正式国名を「Commonwealth of Australia」(オーストラリア連邦)といい、コモンウェルスとして英連邦加盟国です。首都はキャンベラ、人口数はおよそ46万と小規模です。緯度は南緯35度17分、経度は東経149度8分であり、標高は580mに位置します。キャンベラといえば、放射環状路型の道路網が有名です。
オーストラリアの国土面積は769.2万平方キロメートル、これは日本のおよそ20倍に相当します。人口はおよそ2639万人を数えます。
オーストラリアの地勢的特徴として、オーストラリア大陸とタスマニア島を中心に構成されています。地体構造としては、国土のおよそ2/3が安定陸塊に属し、これは先カンブリア時代に形成された大陸部分で、長い時間をかけて削られた平坦な地形が特徴です。安定陸塊は、地震の発生が少ない地域であり、オーストラリア全体として地震の影響をほとんど受けません。
また、オーストラリアは大きく東部山地、中央低地、西部台地の3つに分かれます。東部山地は、グレートディバイディング山脈が広がっており、この山脈は古期造山帯に属します。古生代の造山運動によって隆起し、その後は隆起よりも侵食が優位になると長い年月をかけて削られた結果、比較的なだらかな地形となっています。グレートディバイディング山脈の最高峰であるマウントコジオスコの標高は2228mで、他の世界の高山と比べるとそれほど高くありません。
オーストラリア大陸のおよそ60%が乾燥気候に分類されており、これは世界の大陸の中で最も高い割合です。一般的に「世界で最も広い砂漠は南極大陸である」といわれますが、それは「言葉遊び」でしかなく、基本的に世界で最も乾燥気候が広がるのはオーストラリア大陸です。
大陸中央部を南回帰線が通過するため、それより低緯度、つまりオーストラリア北部は熱帯気候に属しています。熱帯気候下に埋蔵量が多いのがボーキサイトですので、オーストラリア北部のウェイパ、ゴヴではボーキサイトの採掘が盛んです。北部は12月から2月にかけて雨季を迎え、4月から8月は乾燥した気候が続きます。そのため、ボーキサイト採掘は足元がぬかるんで、事故が多いといいます。これはチリやペルーに広がる乾燥気候下で行われる銅の露天掘り明確に違いがあります。
▼第五講 銅の力! 現代世界を動かす金属とその供給地
https://note.com/seishun_pub/n/ncd756b77e89e?magazine_key=m713d46d755a0
また、東部の海岸地域は温帯気候、南西部のパース周辺では地中海性気候が展開されており、特にワインの生産が盛んな地域として知られています。
オーストラリアの人口は、シドニーとメルボルンに人口が集中しています。人口数はシドニーが496.6万、メルボルンが496.9万(2020年)なので、およそ4割の国民はどちらかの都市で生活をしていることとなります。乾燥気候がこれだけ広がっていれば、居住できる範囲は狭められるので、特定の場所に集中しがちであるのは、西アジアや北アフリカなどと同様です。
それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。
よろしくお願いします!
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①世界各国の地理情報
~環インド洋経済圏 オーストラリア①~
先述のように、オーストラリア北部はボーキサイトの主要産出地として知られています。ボーキサイト採掘は熱帯地域で盛んであり、それは熱帯土壌に埋蔵が多いことが背景です。
熱帯地域は降雨量が多く、この雨により地表の成分が溶け出し、鉄やアルミニウム、チタンなどの金属成分が濃縮されることが特徴です。そのため、ボーキサイトは熱帯地域に多く産出されます。
オーストラリア北部も例外ではなく、この地域には豊かなボーキサイト鉱床が広がっています。特に、カーペンタリア湾の東側に位置するアーネムランド半島や、ウェイパ、グロートアイランド周辺が主な産出地です。オーストラリア北部は熱帯地域に位置するため、この熱帯土壌が広がるエリアでは、ボーキサイトの産出が盛んに行われているわけです。
▲オーストラリアのボーキサイトの産出地
ボーキサイトは1821年にフランスの地質学者ピエール・ベルチェが、フランス南部のレ・ボー・ド・プロヴァンスで発見し、この街の名前に由来して名付けられました。ボーキサイトはアルミニウム鉱石で、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化鉄、二酸化チタンなどを含む複数の鉱物の集合体です。見た目は赤褐色や黄褐色で、粘土のように比較的軟らかい特徴があります。
日本語では「鉄礬土(てつばんど)」と呼ばれ、アルミニウムはかつて「礬素(ばんそ)」とも呼ばれていました。この名称は、アルミニウムを含む「明礬(みょうばん)」に由来しています。
ボーキサイトは風化によって形成される残留鉱床で、特に熱帯地域で多く見られます。風化作用で溶脱が進むと、アルミニウムの含有率が60~70%に達し、ギブサイトやベーマイトといったアルミニウム鉱物が残留します。ギブサイト岩質のボーキサイトは主に熱帯気候下で、ベーマイト岩質のものはジュラ紀や白亜紀の古い地質時代に形成されたものが多いとされています。
これら、ボーキサイトに関する話は、青春出版社プライム涌光が運営するnote、「青春オンライン」に寄稿した、わたくしの連載コラムに詳しいので、下記URL先からお読みいただけると嬉しいです。
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▼第六講 アルミニウムの原料「ボーキサイト」はどこで採れる?
https://note.com/seishun_pub/n/na657d153fa60?magazine_key=m713d46d755a0
■かつて流刑地だった新大陸
オーストラリアの南部に位置するタスマニア島は、北海道よりやや大きな島であり、自然の美しさから世界遺産にも登録されています。このタスマニア島とオーストラリア大陸の間には南緯40度が通過しており、気候は日本の秋田県や青森県に近い緯度に位置しているため、夏は涼しく、冬は海洋性気候の影響で比較的温暖です。
タスマニア島はかつて流刑地として利用されており、その歴史は1803年に始まります。シドニーからやって来た初期の植民者たちの中には囚人も含まれており、50年にわたってイギリスやオーストラリアで罪を犯した人々がこの島に送られました。タスマニア島が流刑地として選ばれた理由の一つは、