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やっぱり地理が好き
~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~
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第173号(2024年9月8日発行)、今回のラインアップです。
①世界各国の地理情報
~環インド洋経済圏 インドネシア~
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こんにちは。
地理講師&コラムニストの宮路秀作です。
日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。
今回で173回目のメルマガ配信となります。
9月となりました。
本メルマガのご購読を継続していただいたみなさま、大変感謝いたします。
ありがとうございます。
さて、インドネシアといえば、みなさんはどんな国だと想像しますか?
インドネシアは東南アジア南東部にある大変多くの島々からなる国です。大きな島々は14,000とも18,000ともいわれており、かなりの数の島からなる国ですね。このように多くの島々からなる国のことを「多島国」といいます。多島国として他に挙げられるのは、もちろん日本、そしてフィリピンなどがそうですね。インドネシアの面積は日本の約5.5倍、大きな島として挙げられるのは、ジャワ島、スマトラ島、カリマンタン島、スラウェシ島、ニューギニア島などです。
また、環太平洋造山帯とアルプス=ヒマラヤ造山帯が会合するのがスラウェシ島のあたりだといわれていて、スラウェシ島はアルファベットの「K」のような形をした島です。このようにプレートの境界が位置している場所であるため、インドネシアは地震の発生と火山が非常に多い国です。
忘れてはならないのは、2004年12月のスマトラ沖地震です。この地震によって発生した大津波で、死者・行方不明者は合わせて16万人を超えたといわれています。これは大惨事でした。
またおよそ7万年前から始まった最終氷期(およそ7~1万年前)は、スマトラ島にあったトバ火山の大爆発による火山灰が地球上の広い範囲を覆ったこともあって、太陽エネルギーが減少することで寒冷化し、そのまま氷期に突入したと考えられています。現在は火山爆発のあとに形成されたトバ湖という名称のカルデラ湖になっており、その後の火山活動でトバ湖の中央部にはサモシール島という島が形成されています。
ちなみに、「氷河期」と「氷期」は別な概念です。氷河期とは、地球全体が寒冷な時期に入り、極地や高山だけでなく、広範囲にわたって氷床や氷河が発達する期間を指します。南極大陸とグリーンランド内陸部に大陸氷河が存在しているため、現在も氷河期です。一方、氷期とは、特に寒冷な時期のことを指します。氷河期には温暖な期間(間氷期)と寒冷な期間(氷期)が交互に訪れ、現在は間氷期です。氷期には地球全体が非常に冷え込み、北半球の広範囲が氷で覆われていた時期です。その最後の氷期は最終氷期であり、およそ1万年前に終わって現在は温暖な間氷期にあたります。
さて、インドネシアはほぼ赤道直下に位置していることもあり、高地を除けばほぼ全土が熱帯です。高温湿潤な海洋性気候を示しており、非常に気温が高く湿度が高いという気候が一年中続きます。気温と降水量の年較差が非常に小さい国で、実際、首都ジャカルタの1月の平均気温は27.0度、7月の平均気温は28.1度と、気温の年較差はわずか1.1度しかありません。ほぼ同じ気候が一年中続くことが、これでよくわかります。年間平均気温は28度で、年降水量は1,900mmですので、日本よりもやや降水量が多いといったところでしょうか。
インドネシアの首都はジャカルタです。ジャカルタは人口1,000万人を超す大都市であり、面積は191万平方キロメートル、人口は約2億7,753万人(2023年、世界銀行)です。インドネシアの人口は、インド、中国、アメリカ合衆国に次いで世界第4位です。
現在のインドネシアでは、人口の約2/3がジャワ島に集中しています。2億7,753万人のうち2/3がジャワ島に集中しているため、ジャワ島の人口密度が非常に高くなっています。そこで首都機能の移転が議論され、カリマンタン島にあるヌサンタラに新首都を移転することが決定しています。
これについては、2024年度筑波大学前期試験(生物資源学類、地球学類)の地理にて出題例があります。
こうしてみると、1990年以前と以後でインドネシアの人口増加については人口動態が変化したのだろうと考えられます。1990年以前については、1960年以前からそうだったと考えられますが、多産多死型から多産少死型へと人口動態が転換したことでの人口増加でしょう。1990年以後は、出生率は低下したとはいえ、それ以上に死亡率が低下したことで人口が増加していると考えられます。実際に、インドネシアの合計特殊出生率は2.15と人口置換水準2.1程度に近づいています。1990年が3.10だったことを考えると、出生率の低下傾向は間違いないといえます。
「インドネシアって、途上国だから農業が主産業で、多くの労働力が必要だから子だくさんでしょ?」といった、「その知識いつ覚えた?」というようなカビの生えた古くさい知識で世の中を語る人がごまんといますので、頭の中を日々アップデートしていくというのはすごく重要だと改めて思います。
それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。
よろしくお願いします!
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①世界各国の地理情報
~環インド洋経済圏 インドネシア~
■インドネシアの歴史を早読み
インドネシアでは、7世紀頃、スマトラ島に仏教王国が成立しました。8世紀から9世紀頃にかけて、世界最大の大乗仏教遺跡であるボロブドゥール寺院が建立されました。8世紀から15世紀にかけては、ヒンドゥー教徒の王朝が盛衰を繰り返していました。イスラームが広まったのは13世紀以降とされ、15世紀から16世紀にはイスラーム王朝が成立します。1602年にはオランダが東インド会社を設立し、その後短期間のイギリス統治を挟みながらも、オランダの植民地支配が続きました。
長らくオランダの植民地であったインドネシアですが、1945年にスカルノらが中心となり独立を宣言すると、4年間の独立戦争の後、1949年にオランダがこれを承認しました。その後、1976年にインドネシアは東ティモールを27番目の州として統合しましたが、紛争の末、2002年に東ティモールは独立しました。インドネシアの基本方針はASEAN諸国との連携であり、また国内に抱えるイスラーム教徒の数としては世界最大を誇ります。
また、インドネシアでは独立運動が頻繁に起きていました。スマトラ島北西部にある「アチェ特別州」では、1976年に「自由運動」という組織が独立を宣言しました。その後30年間にわたり、インドネシア政府と独立派の間で紛争が続き、15,000人以上の死者が出たといわれています。
インドネシアは非常に広大で、多くの島々を持つ国であるため、民族や宗教の対立が各地で存在しています。インドネシアの宗教についてお話しします。インドネシアの人口は2億7,753万人を超え、そのうちおよそ90%がイスラームを信仰しています。そのため、イスラーム徒の数はおよそ2.5億人を超え、インドネシアは世界最大のイスラーム国家といえます。
インドネシアには、イスラーム以外にもヒンドゥー教をはじめとする多様な宗教が信仰されています。特にバリ島ではヒンドゥー教が盛んです。バリ島で信仰されるヒンドゥー教、通称「バリ・ヒンドゥー」の歴史は、4世紀から5世紀頃に始まります。