… … …(記事全文6,689文字)はじめに ── 国会は終わった。行政の戦いが始まる
2026年7月10日、個人情報保護法の改正案が参議院本会議で成立した。氏名や住所と、病歴・信条・犯罪歴といった機微な情報。そのセットが、本人の同意もないまま、企業から企業へ、時には海を越えて外国企業へと流れていく。その道を、国が正式に開いたのである。
採決は賛成146、反対94。自民・維新に、国民民主とチームみらいが賛成で加わった。反対に回ったのは、立憲民主党、公明党、共産党、参政党、れいわ新選組、沖縄の風、社民党である。与野党の顔ぶれが、いつもの構図とは少し違う。この一点だけでも、今回の法案が抱える異様さがうかがえる。
採決に先立ち、立憲民主党の岸真紀子参院議員が会派を代表して反対討論に立った。「今回の改正が行われれば、例えば、病院などが持つ非公開の要配慮個人情報を含む、名前や住所付きの病歴といった生データを、本人の同意なく第三者の事業者に渡すことが可能となります」。そしてこう続けた。「人種、信条、社会的身分、病歴、障害、犯罪歴、犯罪被害などの、他人に知られたくない機微な情報を本人の同意なく提供することは極めて問題であり、立憲民主党は断じて認めることはできません」。岸議員は、立憲・公明・沖縄の風の3会派共同で修正案も提出した。「本人の同意を得ない要配慮個人情報を第三者に提供する規定は削除すべきである」。この面子には珍しくまっとうな要求である。しかし、これも否決された。
同じ日、全国保険医団体連合会(保団連)も抗議声明を出している。「プライバシーやセキュリティに関する体制確保が十分ではない民間事業者も含む個人情報取扱事業者に対して、要配慮個人情報の第三者提供を公表のみで認めることは極めて危険で、医師と患者の信頼関係が大きく損なわれる」。日々、患者の病歴を預かる現場の医療団体である。彼らが、この法案の危うさを誰よりも正確に、そして具体的に言い当てている。
だが、ここで「もう終わった話だ」と片づけてはいけない。条文は決まった。しかし、この法律がどこまで牙を剥くのかは、まだ何一つ決まっていないのだ。国会での戦いは終わった。これから始まるのは、行政の戦いである。本稿では、何が問題なのか、海外はどうなっているのか、そして私たちがこれから何を要求すべきなのかを、順を追って整理していきたい。
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