… … …(記事全文3,537文字)■■進次郎2千円米で、米価の本格的下落は生じていない
令和7年の参議院選挙やその後の関税交渉、石破おろし等でテレビや新聞メディアの話題が持ちきりとなり、最近ではめっきり取り上げられなくなった「米価高騰問題」。参議院選挙の直前では連日朝から晩まで「小泉進次郎氏による2000円米」の話題がテレビで取り上げられていたのも一昔前の話だ。
その背後には米価問題が一定落ち着きを見せていることもあるやに思える。例えば令和7年8月現在、2000円以下の備蓄米が(ブレンド米等の形も含めて)市中に流通し、「平均」米価が日々下落してきている。
しかし備蓄米を含まないいわゆる「銘柄米」は、ほとんど下がらず4000円代前半を維持し続けているのが実態だ。つまり、専門家各位から予め指摘されてきたように現下の米価は「二極化」してしまったわけだ。
そもそも安価な備蓄米が流通している限り、一般の銘柄米の売れ行きは瞬間的に下落することもあり得るが、だからといって価格が本格的に引き下がることなど無い。銘柄米の価格は数ヶ月や半年程度の中期的期間での需給バランスで変動するもので、かつ、備蓄米の数量が限定的であり、しかも備蓄米があっても銘柄米を買い続ける消費者層が確実に存在している以上、中期的期間な銘柄米の需給バランスは大きな影響を受けず、結果、価格は大きく変動することなどないのだ。
■■「農協悪玉論」は100%純然たるデマである
この米価高騰が問題になったとき、マスメディアは盛んに「流通業者が、この機に便乗して金儲けを企み、値段が下がらないように米を出し渋っているから米価が引き下がらないのだ」という、いわゆる「米流通の目詰まりこそが米価高騰の原因だ」説を繰り返し、流通業者を「悪者」にしたてあげてきた。
そして、その流通業者の親玉こそ「農協」だという(完全に誤った)印象がメディアによって世論的に作られていった。
しかし繰り返すが実態は全くもって異なっているのだ。
第一に、米価高騰の主要因として政府が指摘し続けてきた中間の流通業者らが在庫を抱え込む「流通の目詰まり」という現象は実際には存在しなかったという調査結果が、本年7月末に農林水産省より公表されている。つまり、流通業者の不当な自己チュー行為によって米価が高まっていたという話それ自体が「ウソ話」だったのである。
もうこれだけで「農協悪玉論」には全く正当性がないという事になるのだが、より深刻な「ウソ話」は農協を米卸売業者と同じ「ビジネス企業だ」と見なしたところにある。
そもそも農協は「米を購入し、それをより高い価格で売り払い、両者の差額で利益を得ようとする米卸売業者」とは根本的に異なる組織だ。そもそも農協は複数の農家が出資してつくられた「共同組合」であり、複数農家の米を「一括」し販売するという仕事を行う。無論、その一括販売という仕事をするためには各種経費が必要になる。だから農協は定額の「手数料」を米購入者から徴収している。かくして農協が行っている仕事は、「農家から米を集め、販売し、そこから手数料を差し引き、残ったオカネを農家に渡す」という仕組みとなっているのだ。
したがって「値段をつり上げて儲けよう」という動機は農協には基本的に存在しないのだ。値段があがっても手数料が一定である以上儲けが増えることが無いからだ。
■■農協はむしろ「米価引き下げ」の努力を重ねてきた
しかも、農協が目指しているのは…
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