… … …(記事全文5,699文字)ゼレンスキーとの会談決裂は、やはり巧妙に仕向けられた「トランプ劇場」だった。欧州「有志連合」を経た再交渉という演出も、イーロン・マスクが任じられた前政権「ウクライナ巨額不正支援」調査のためという
◆〔特別情報1〕
トランプ大統領は4日、議会で行った施政方針演説の中、ゼレンスキー大統領から「平和のためにできるだけ早く交渉の場に戻る用意がある」「鉱物資源の協定に署名する用意がある」との内容の手紙を受け取ったことを明かした。
ゼレンスキーとの会談決裂は、やはり巧妙に仕向けられた「トランプ劇場」だったようだ。いったん決裂してから、欧州「有志連合」による和平保障を経た後の再交渉という演出も、計算されたものだったのだろう。この手の込んだ演出でトランプは何をしたかったのか。
決裂した会見を振り返ってみると、一見、友好的に始まったかに思われた会談の雲行きが怪しくなったのは、米国の支援と欧州の支援の対比のくだりである。
NHKが2日に掲載した「【やり取り全文・中編】トランプ氏 ゼレンスキー氏 なぜ口論に」のなか、記者からの「アメリカはきょう設立される基金にいくら投入するつもりか。またこれはウクライナの長期的な安全保障にどうつながるのか?」という質問に続く次の質問「ウクライナの長期的な安全保障については?」という問いに対するトランプ大統領の答えにある。トランプは「「そして、他のことに資金を使いたい」という言葉から続けて、次のように語った。
「これはばく大な金額であり、バイデン政権のやったことはひどいものだった。彼らは資金を与えたが、彼にはその資金に対する保証がなかった。ご存じのように、ヨーロッパははるかに少ない金額しか提供しなかったが、保証はあった、融資という形で。彼らは金を取り戻したが、われわれはそうではなかった」
ここでいう「バイデン政権のやったこと」とは、ウクライナ支援のことを指している。バイデンは無償で支援したが、ヨーロッパは融資という有償の形で支援したことをトランプは強調している。これに対してゼレンスキーは、「本当に、欧州はわれわれを助けてくれたので、われわれも欧州の役に立ちたい。トランプ大統領は、支援が少なかったと述べたが、欧州は友人であり、非常に協力的なパートナーだ。本当に多くの支援をしてくれた。大統領、本当にそうだ」と欧州を擁護する形で称賛し反論した。これに対しトランプ大統領は「じゃあ、私の支援はより少なかったのかな」と返し、ゼレンスキー大統領は「いいえ」と答え、さらにトランプ大統領「はるかに少なかったの」と念を押し、ゼレンスキー大統領は「いいえ、いいえ」と微妙なやりとりが続いた。
実はこれと似たような応酬が、2月24日に訪米した仏国のマクロン大統領との首脳会談の中でも交わされていた。その部分を抜粋してみよう。
トランプ大統領 「ヨーロッパはウクライナに資金を貸しているだけで、いずれ回収する」
マクロン大統領 「いいえ、違います。6割は(無償で)支払っています」
マクロン大統領は慌ててトランプ大統領の腕を掴みながら制止し、訂正を入れたのだった。
同じ問題のところで、微妙な雲行きになっているのだ。国際政治に精通する情報通によると、トランプはバイデン政権の下で行われてきたウクライナ支援について、巨額の不正疑惑を嗅ぎ付け徹底的に追及するつもりでいるとのこと。やはり、ゼレンスキーとの物別れ会談は、その追及のための「トランプ劇場」だったということである。
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